真っ昼間の新横浜に住吉会最高幹部らが登場…稲川会の活動拠点に「関東の有名ヤクザ7団体」集結の内幕
沖縄の武闘派ヤクザが訪問
30度を超える「真夏日」が3日連続で続いた7月中旬の神奈川県横浜市。郊外に位置する指定暴力団・稲川会の活動拠点・稲川会館には、早朝からネクタイ・スーツ姿の組員数十人が整列していた。会館の鉄扉は閉ざされており、外から中の様子をうかがうことはできないが、時折「お疲れ様です!」という、これから訪れる他団体の最高幹部を出迎える挨拶の練習の声が表通りにまで響いていた。
「会長、お見えになりました!」
午前10時過ぎ、ひときわ高い声が響く。会館前でセンチュリーの後部座席から降り立ったのは、稲川会・内堀和也会長だ。会館正面で警備に当たる警視庁や神奈川県警、茨城県警などの捜査員約20人に一礼した後、厳しい表情のまま歩いて鉄の扉の中に入っていく。
立っているだけでシャツが汗で肌にまとわりつくほどの炎天下の中、内堀会長到着後も組員の整列はそのまま微動だにしない。このあと次々と到着する、他団体の最高幹部を迎えるためだ。この日、一体何が行われていたのか--。
「沖縄県の武闘派団体として知られる指定暴力団・旭琉會の知念秀視三代目会長が、関東の各団体に襲名披露の挨拶に訪れたのです。旭琉會は今年4月、糸数真二代目会長が火事により不慮の死を遂げ、6月に知念三代目会長体制が発足したばかりでした。
その会場となったのが稲川会館です。襲名を祝うため出迎えた団体は、『関東親睦会』の各団体。ホスト役の稲川会・内堀会長が到着した後、松葉会、東声会、住吉会、極東会、関東関根組、双愛会の順に7団体のトップや最高幹部が出席しました。旭琉會はこの前日、六代目山口組に対しても愛知県の弘道会傘下の団体に赴き挨拶を済ませていると聞いています。『関東親睦会』には國粹会も参加していますが、六代目山口組の二次団体です。前日に六代目山口組が挨拶を受けているためか出席していませんでした」(ヤクザ業界に精通しているジャーナリスト)
7団体の出席者が揃って間もない午前11時半前、羽田空港まで知念三代目会長を出迎えに行っていた稲川会の車列が到着。知念三代目会長を含めた最高幹部6人が降り立った。一段と高い「お疲れ様です!」の声に迎えられる中、襲名祝いの会合は、午前11時40分ごろから始まった。
会館の敷地内で取材していたカメラマンが、中の様子について話す。
「内堀会長が到着する前、組員がカットメロンののったお盆を会館に運んでいました。知念会長が揃った後、整列していた組員にも『赤飯弁当』が配られ、会館には日の丸も掲げられていました。まさにお祝いムードという印象です。会館の建物内には入れませんでしたので詳細は分かりませんが、会合終了後、知念会長とともに出てきた内堀会長は、笑顔で話しながら知念会長ら旭琉會一行を見送っていました」
12時20分ごろに旭琉會の車列が会館を後にしたのち、参加7団体の車列も次々に会場を後にし、12時半には、会合は滞りなく終了した。
稲川会の「思惑」の中身
それにしても、一団体の代目継承の襲名披露の挨拶に、『関東親睦会』全団体のトップクラスが集まるのは異例の事態といえる。そこには、六代目山口組と今回ホスト役となった稲川会の双方の思惑が重なり合っていたことが読み取れる。前出のジャーナリストが語る。
「六代目山口組は、司忍組長(84)の掲げる『ヤクザ社会の平和共存』をナンバー2の竹内照明若頭(66)が実践しています。旭琉會との関係も、現在は、糸数二代目会長を偲ぶ会に竹内若頭ら最高幹部が参列したことからも良好といえます。
竹内若頭と内堀会長は『五分の兄弟盃』を交わしています。稲川会は、旭琉會の襲名披露挨拶で『関東親睦会』の各団体を自らの会館に集めることで、六代目山口組の『平和共存』路線を加速するという思惑があったのではないでしょうか。また、稲川会にとっても、関東における自らの影響力を“新生旭琉會”に誇示できる結果になったといえます」
稲川会は過去にも、渦中の出来事の中心になって動いたことがある。
「昨年4月、六代目山口組は一方的ながら兵庫県警に『抗争終結宣言』の誓約書を提出しています。その誓約書を出すにあたり、抗争終結の要望書を持参して全国の六代目山口組の友好団体を回り、賛同を募ったのも内堀会長でした。
大きな流れが生まれた時、稲川会が中心となって動くのは、今回が初めてではないのです。竹内若頭体制が盤石になりつつある中、内堀会長率いる稲川会の存在感も増していくことは間違いないでしょう」(同前)
警察当局に「誓約書」を出した昨年4月7日当日、事前に神戸山口組との抗争終結に向けて六代目山口組・郄山清司若頭(肩書は当時、現相談役・78)、住吉会・小川修司会長、稲川会・内堀会長の「ビッグ3」で会談が行われているが、その場所となったのも稲川会館だった。その会談で内堀会長の用意した「要望書」に六代目山口組側が同意し、「抗争終結への合意形成が得られた」として舵を切ったといわれているのである。
その一方で、抗争相手である神戸山口組、池田組、絆會と六代目山口組との「特定抗争指定暴力団」のトリプル指定は、未だ解除されていない。不気味な膠着状態が続く中で進む六代目山口組の「平和共存」外交戦略--。その中で稲川会の果たす役割は大きくなる一方のようだ。
