今年も開催される鳥人間コンテスト(読売テレビ放送のHPより)

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 読売テレビ主催の人気イベント「鳥人間コンテスト」が25日、26日に開催されている(放送日は未発表)。同大会を巡っては、7月6日、会場設営中に作業員の男性が高所から転落死する事故が起き、メディアでも大きく報じられた。大会開始まで20日を切っての事故だけに、開催自体を危ぶむ声も出たものの、7月15日、同社の松田陽三社長(67)は記者会見で、安全対策を万全に施した上で、予定通り開催することを明言した。同番組は読売テレビの“看板”であるだけに、開催が近づくと、番組制作スタッフは過酷な労働環境に置かれるという。死亡事故を機に、現場の声を聞いてみた。

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【写真を見る】転落すれば死亡も当然…高さ11メートルもある、死亡事故発生「やぐら」の現場写真

命綱が繋がっておらず…

 1977年に始まった「鳥人間コンテスト」は、参加者が琵琶湖を舞台に、人力飛行機で飛び、その距離や時間を競う大会だ。主催は読売テレビ。その模様が同局だけでなく、日本テレビ系列の全国ネットで特番として放送されると人気を博し、今年で48回目を迎える長寿番組となった。

今年も開催される鳥人間コンテスト読売テレビ放送のHPより)

 しかし、月末に大会開催を控えた今月6日、同大会の滑走路を滋賀県彦根市の琵琶湖沖に設営中だった59歳の建設作業員の男性が、高さ11メートルのやぐらから水面に転落し、死亡する事故が発生した。男性作業員は安全ベルトをつけていたが、命綱がやぐらに繋がっていなかった可能性が高いという。

「ほんまにやるんや…」

 読売テレビ制作局の関係者が言う。

「同大会では2007年大会で出場者が重い後遺症を負う事故に遭い、後に読売テレビが提訴されています。今回の事故でも、滋賀県警から第一報を受けた報道フロアから、すぐに慌てた様子で上の階にある制作フロアに情報が回って来ました。担当プロデューサーやディレクターからは『大変なことが起きた』『番組はどうなるんや』と悲鳴に近い叫び声も飛び交い、制作局管理職も携帯電話を片手に走り回るなど、制作フロア内は大混乱。報道フロアにいたニュース担当デスクも『夕方のニュースで一体どう取り扱ったら良いんだ』と頭を抱えていました」

 同時に今年の開催についても、さまざまな意見が交わされたという。

「事故を受け、制作フロア内には『今年は中止になるのではないだろうか』という雰囲気が広がりました。実際に一部管理職を除き、松田社長の会見ギリギリまで、開催することを知らないスタッフも多かった。会見前日、会議室に10名ほど番組ディレクターが集められていたので『もしかしたら』と思いましたが、会見直前に上層部から開催を告げられた際は『ほんまにやるんや……』と呟くスタッフもいたくらい、現場には動揺が走りました」(同・制作局関係者)

 今回死亡した作業員の所属する建設会社は、局から業務委託を受けた設営会社からさらに業務委託を受けた“三次請け”であり、必ずしも死亡事故の責任が局に帰属するとは言い切れない。とは言え、人が亡くなったという事実は重いし、かつ現場は出場者たちが使用する滑走路の真下である。そうした場で死者が出たわずか20日後にイベント騒ぎができるのか――。現場がそう感じたのは無理もない。

スタッフが消える日

 実は、同大会を巡っては、制作スタッフの間では、今回の事故とは別の意味での“危険”が共有されてきていたという。局肝いりの同番組制作には、局員だけではなく子会社や関係先の番組制作会社も総動員されるなど毎年数百名のスタッフが携わっているとされる。大会当日は制作フロアだけでなく報道フロアからも人員が駆り出され、大会の運営に関わる。局内から殆どのスタッフが“消える日”と呼ばれているそうだ。

 そうした一大イベントだけに、携わるスタッフたちの負担も相当なもののようだ。過去に番組制作に携わっていた、元大手番組制作会社ディレクターに話を聞くことができた。

鳥人間コンテストの開催時期が近付くと、読売テレビに出入りしている番組制作会社のカメラマンやディレクターたちは『今年も地獄がやってきましたね』と沈んだ空気になるんです。無理もありません、大会より前の様子を撮影する先陣部隊は2週間ほど前から琵琶湖に向けて出発し、そのまま終了まで帰って来られない。中には『生きて帰って参ります』と、まるで出征兵士のように寝袋を抱えてロケバスに乗りこむADもいました」

 出場者たちへの密着取材、人力飛行機が飛ぶ際の撮影シミュレーション、総集編用の映像撮り……放送が迫れば、やらなければならない業務はいくらでもある。それも、この40度近い酷暑の中での炎天下の作業だ。

「私は大会数日前から現場入りしていましたが、その間は睡眠も食事もままならず、まさに『寝られない、食べられない、帰れない』の地獄でした。また、大会が終わった後も編集作業に莫大な時間が費やされる。制作現場では何年も『こんな過酷な環境で番組を作っていたら、いつか事故が起こるのでは』とさんざん言われていました」(同)

人員が減らされた結果…

 同番組は、2010年からカセットこんろなどで知られる岩谷産業が冠スポンサーとなった。読売テレビにとってみれば、視聴率も、安定したスポンサー収入も見込める有料コンテンツだ。いきおい、肩に力が入るのは仕方のない面があるだろう。

 映像メディアを巡る環境の変化に伴い、大手を含めたテレビ局も経営は決して楽ではなく、番組制作にかける予算や人員は削減の一途を辿っている。読売テレビ、そして「鳥人間コンテスト」も例外ではない。

 前出の制作局関係者は、

「人員が以前より減らされた分、スタッフ一人一人の仕事量は増えています。『局が予算を削って工期や成果だけを求めれば、いつかは事故が起きる』という意見が噴出しています。大会開催によって、今回の事故をなかったものにするのではなく、設営に関わる作業員も含めて、すべてのスタッフの労働環境を見直すきっかけにすべきです」

 それが亡くなった作業員の犠牲を無にしないことにも繋がるはずだ。

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 読売テレビ放送に本件について尋ねたところ、大要、以下の回答が来た。

「ご指摘のような過酷な作業の実態は、当社内で聞き取り調査をした範囲では確認できませんでした。一方、屋外での制作・運営を伴う番組であることから、暑熱対策を含め、関係者の安全確保と健康管理には引き続き万全を期す必要があると考えております。なお、スタッフや観客の熱中症による搬送件数は、2024年は1件、2025年は0件でした。今回の事故を受け、設備面に加え、労務環境や健康管理、作業負荷についても改めて点検し、必要な見直しを進めてまいります」

デイリー新潮編集部