「変動金利でしか家が買えない…」金利急騰で借入額1000万減の悲劇も!家計破綻を防ぐ究極の防衛策

写真拡大 (全4枚)

年収700万円で借入額1000万円減も

市場金利の上昇や日銀の利上げにより、住宅ローン金利が急騰している。特に固定金利の上昇は顕著で、’26年6月には『フラット35』の金利が3%の大台を超えた。

このような状況で多くの人が懸念するのは、毎月の返済額の増加だろう。しかし、問題はそれにとどまらない。金利の上昇は、住宅ローンの「借入可能額」、ひいては「買える家の金額」の低下を招く

これまでは「固定金利」と「変動金利」の選択で迷う人が多かった。今後は金利上昇に伴う「返済額の増加」と「借入可能額の減少」のダブルパンチにより、「変動金利でしか家が買えない人」「現状のままでは家を買えない人」が増えていくと予想される

住宅ローンの借入可能額(借入上限額)は、年収に占める年間返済額の割合(これを返済比率または返済負担率という)が、金融機関の定める範囲内に収まるように設定される。年間返済額には、「審査金利」を用いて計算した住宅ローンの返済額のほか、他のローンやクレジットカードの分割払いなどの借り入れをすべて含む。

全期間固定金利型の住宅ローン『フラット35』の場合、審査金利として実際の適用金利が用いられる。適用金利が上がると審査金利も上がるため、同じ年収でも審査上の借入可能額は減少する。

※民間金融機関の住宅ローンの場合、審査金利はそれぞれの金融機関が独自に基準を定めており、実際の適用金利よりも高い3%〜4%程度としている金融機関が多い(これよりも低い金利や実際の適用金利を審査金利とする金融機関もある)。

フラット35の適用金利(借入期間21年以上35年以下、融資率9割超)は、’25年7月の1.950%から’26年7月には3.250%まで上昇。これにより、年収700万円の人の借入可能額はこの1年間で1000万円以上減少している(他に借り入れがなく、自己資金(頭金)なしでフラット35を利用する場合、約6211万円から約5117万円へ減少)。

「変動金利」しか選べない現実

金利上昇によって固定金利で借りられる金額は減っている。その一方で、金利上昇への不安から、金利変動のない固定金利で家を買いたいというニーズは高まっている。しかし、すでに金利が上昇している状況で、変動金利よりも高い固定金利でローンを組もうとすると、毎月の返済額が払える金額を超えやすくなる。

それ以前に、審査上の借入可能額が減少しているため、これまでなら固定金利で買えた金額の家が買えなくなるケースも出てくる。そうなったときに残る選択肢は、大きく次の3つに絞られてくる。

1_固定金利でも買えるように計画を見直す(購入金額を下げる、借入金額を減らす、返済期間を延ばすなど)

2_固定金利は諦めて変動金利を選ぶ(金利変動のリスクを取る)

3_家の購入を延期し、家計や資産の状況を整えてから再検討する

本来、「変動金利」と「固定金利」は、リスク許容度や家計の余力に応じて選ぶべきものだ。しかし今は、固定金利では「審査に通らないから」「毎月の返済額が払える金額に収まらないから」という理由で、仕方なく「変動金利」を選ぶという状況が生まれやすくなっている

誤解のないようにしてほしいが、「変動金利」自体が悪いわけではない。金利上昇による返済額の増加というリスクがある反面、借入当初の金利は固定金利よりも低く、毎月の返済額を抑えやすいメリットもある。

問題はあくまで、「変動金利を選ぶべきではない人」、「現状では家を買うべきでない人」までもが変動金利で家を買ってしまうことだ。金利や返済額の変動に強い不安を感じる人や、これ以上返済額が増えると家計が厳しくなる人にとって、変動金利でのマイホーム購入は過剰なリスクを取ることになりかねない。

住宅価格が上がり、金利も上がり、「今買わないともう買えなくなるのでは」と焦りを感じている人は多い。住宅価格の高止まりやさらなる金利上昇も想定されることから、その焦りはあながち間違いではない。家計に余力があり、住宅ローンの審査にも問題がないのなら、購入に踏み切ってもよいだろう。しかし、家計に無理がある人までもが焦って購入すべきではない。

住宅ローンが専門のファイナンシャルプランナー永野 修氏(永野FPオフィス)は、「買うべき人と、今は整える人を分けることが大切」だという。

審査や返済に不安が残る人は焦らず、家計の収支や他の借入、信用情報、返済比率などの条件を整えることが先決だ。

必須! インフレ型ライフプラン

永野氏は「これからの住宅購入では、従来型のライフプランだけでは不十分。インフレ型ライフプランを確認すべき」と指摘する。

インフレ型ライフプランにおいて確認すべきポイントは、次のようなものだ。

◇固定金利で借りた場合の返済額

まずはフラット35などの固定金利で試算し、希望する借入額が現実的なものであるかを確認する。固定金利で無理のない計画なら見通しを立てやすい。一方、固定金利では厳しく、変動金利でしか届かない場合は、どの程度金利上昇リスクを取れるかの見極めが必要だ。

◇変動金利で借りて将来金利が上昇した場合の返済額

変動金利を選ぶ場合は、当初の返済額だけでなく、金利が上がった場合に毎月の返済額がどう変わるか、返済額の増加に家計が耐えられるかを確認する。家計が耐えられないようなら、計画の見直しや立ち止まる判断が必要だ。5年ルールや125%ルールによって返済額の増加が抑えられるケースでも、金利上昇によって利息負担は増え、元本の返済ペースが遅くなるリスクを理解しておかなければならない。

※5年ルール……変動金利の住宅ローンにおいて、毎月の返済額を5年ごとに見直すルール。適用金利が変化しても見直し時期まで毎月の返済額は据え置かれ、返済額に占める利息と元金の割合が変化する(金利上昇時は利息の割合が増加)。

※125%ルール……返済額見直し後の毎月の返済額は、見直し前の返済額の1.25倍(125%)を上限とするルール。

◇マイホームの所有にかかる費用や住宅以外に必要となる費用

借りられる金額と無理なく返済できる金額は異なる。マイホームを所有するには住宅ローン以外に、固定資産税や火災保険料、修繕費などの費用がかかる。さらに、教育資金や老後資金、親の介護費用など、住宅以外に必要となる費用もある。これらも含めて、家計に無理が生じないかを確認することが大切だ。

◇住宅ローンの返済と並行して資産形成(貯蓄・投資)を続けられるか

教育資金や老後資金などの準備は、住宅ローンの返済と並行して進める必要がある。資産形成(貯蓄や投資)を余裕があればするものと後回しにしていると、手遅れになりかねない。住宅購入時点で「資産形成の余力」があるかの確認も必要だ。

◇収入が減少したときも返済を継続できるか

住宅ローンの返済は長期にわたるため、返済期間中に病気・ケガ、失業・休職などで収入が減少する可能性もある。このような事態に備え、ローン返済分を含めた毎月の支出額の6ヵ月〜1年分を目安に、すぐに引き出せる生活防衛資金を預貯金などで確保しておきたい。傷病手当金や雇用保険失業給付)などの公的保障や、民間の就業不能保険・医療保険など、収入減少に対する備えも確認しておこう。なお、団体信用生命保険(団信)は基本的に死亡・高度障害時の保障であり、失業や休職による収入減少は通常カバーされないが、がんなどの特定疾病や一定の障害を保障するタイプの団信(がん団信など)もある。

◇退職時の住宅ローン残高

住宅ローンの返済期間(借入期間)は長期化傾向にあり、完済予定年齢が退職後となるケースも多い。退職後にローンが残る場合は、退職時点でのローン残高とその後の返済シミュレーションも必要だ。

借入可能額の減少によって住宅ローンの審査は厳しくなる。そのため、購入する家を決めてから住宅ローンを考えていると、家は決まっても審査に通らず、絵に描いた餅になりかねない。それを防ぐには、「物件の検討」と同時に、「住宅ローン審査の見立て」と「ライフプラン」を並行して確認することだ。

また、他の借り入れがこれまで以上に審査に影響しやすくなる。自動車ローンやカードローン、リボ払い、スマホ端末の分割払いなど、審査に影響する可能性のある借り入れは、審査を申し込む前になるべく整理しておきたい。

これからの住宅購入は、「固定か変動か」「いくら借りられるか」よりも、「この家を買っても将来にわたって家計やライフプランが破綻しないか」で判断することがますます重要になってくる。

固定金利で無理なく買えるケースなら、将来の返済計画は立てやすい。固定金利では届かず変動金利なら届くケースでは、将来金利が上昇しても家計が耐えられるかを確認したうえで進める必要がある。どちらも厳しい場合は、まず収支や他の借り入れなどの条件を整え、不安材料を減らすのが先だ。焦らず、まずは現状を把握し、見通しを立てたうえで条件を整えることから始めよう。

取材・文:竹国 弘城

ファイナンシャルプランナー/ラポール・コンサルティング・オフィス代表。名古屋大学工学部卒業後、証券会社、保険代理店での勤務を経て独立。お金に関する相談や記事の執筆・監修を通じ、お金の問題について自ら考え、行動できるようになるためのサポートを行う。1級ファイナンシャルプランニング技能士、CFP®、宅地建物取引士、サウナ・スパプロフェッショナル