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クルマを特徴付けるプラットフォーム

クルマを特徴付けるもので、プラットフォームを超えるものはないだろう。スペースフレームにラダーフレーム、モノコック、スケートボードなど、基礎骨格次第でサスペンションやステアリング、パワートレインの発揮できる性能は左右する。

【画像】WEVC:イノベーション賞 ロータスのEV、エヴァイヤと、ミドシップのエミーラも 全86枚

多くの自動車メーカーが、EV専用プラットフォームの開発に巨費を投じる理由でもある。一方、生産ラインに至るまでのコスト回収には、数万台単位で量産する必要もある。複数のブランドやモデルで、共有されることが多いのはそのためだ。


WEVCが開発したEV用プラットフォーム、PACES(ペーシズ)

スポーツカーの分野では、英国を中心に少量生産を持ち味にするブランドは多い。だが高価格帯のモデルでなければ、それに向いたカーボンファイバー構造の採用は難しい。

そこで、EV時代に出番となるのが、英国を拠点にするワット・エレクトリック・ビークル・カンパニー(WEVC)。代表のニール・イェーツ氏率いる技術者チームは、長年に渡って少量生産モデルの技術開発を得意としてきた。

柔軟性が高く汎用性に優れたモジュール式システム

彼らは、小規模メーカーが今後生き残る上で必要になるであろう、柔軟性が高く汎用性に優れたモジュール式少量生産システムを、6年かけて完成させた。それが、PACES(ペーシズ)と呼ばれるスケートボード状のEV用プラットフォームだ。

アルミ押出材を利用し、巧妙に設計された部品を構造体の隅に用いることで、軽く仕上げつつ高い精度と剛性を確保。プレス加工や治具の利用を、不要としている。ちなみにイェーツは軽量化を重視しており、コーリン・チャップマン氏を例に挙げる機会が多い。


EV用プラットフォーム、PACES(ペーシズ)を説明するニール・イェーツ氏(左)

その結果、1けた単位から数1000台という規模で、独自のEV生産を可能にしている。従来より遥かに短期間で、量産仕様を市場へ投入することもできるという。

2026年1月にアメリカ・ラスベガスで開かれた技術見本市、CESでペーシズは発表。フィンランドのドーナツラボ社による、インホイール・モーターと固体電池製造技術を披露するプラットフォームとしても利用され、その優位性が認知されるに至った。

AUTOCARも関わったロータスへのEV提案

ペーシズは、既に世界中で利用が始まっている。ロードスイーパーやピックアップトラックなど、特別な目的に合わせた自治体向けの車両から、オープン・スポーツカーなどへ姿を変え、公道を走っている。公表できない、欧米のプロジェクトも多いそうだ。

ソフトウエアやブレーキ、運転支援システムの開発企業が、デモ用にペーシズ・プラットフォームを導入する例もあるとか。走行試験の手間を省けるだめだろう。


AUTOCARとWEVC、アバン・デザイン社の共同によるスポーツカーのアイデア

実は、AUTOCARもこのペーシズには関与している。2025年後半、弊誌を主体にWEVCとアバン・デザイン社の共同によるスポーツカーのアイデアを、ロータスへ提案している。既存のエミーラと並行して、へセル工場で生産できるEVを。

それはエリート 4Sと名付けられたプロジェクトだったが、非常に高い評価を得ることができた。ロータスの役員会を除いて。

需要が高まる販売市場へ近い場所での生産

イェーツは、同社による取り組みの可能性を確信している。従来の量産車メーカーは、大規模な工場から世界中へ完成車を送り届けていたが、近年は経済保護を目的に、販売市場へ近い場所での生産が求められるようになっているからだ。

ペーシズ・プラットフォームは、従来のような大規模生産を必要としない。このような変化において、大きな意味を持つことになるだろう。


WEVC社の代表、ニール・イェーツ氏

彼は、英国が世界をリードする可能性にも言及する。素晴らしいイノベーターが多く存在するうえに、半官半民プロジェクトによる成果も計り知れないという。

そして、人材育成にも貢献したいと続ける。「最近は、EVに感覚的な要素を取り入れる方法を研究し始めた技術者もいます。クルマとしての個性や、運転への没入感を愛してきた自分のような人間にとって、喜ばしいことです。未来へ強い期待を抱いています」