泉ピン子さん(写真:『ピン!として逝くのもいいじゃない ピン子78歳、最後に残したい言葉』より)

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18歳で歌謡漫談家としてデビューし、ドラマ、舞台、映画、講演など、多方面で活躍されている泉ピン子さん。ご自身の人生を振り返り「色々と言われてきたけど、私はずっとただがむしゃらに、目の前のことに一生懸命向き合って、正直に生きてきた」と語ります。そこで今回は、泉ピン子さんの著書『ピン!として逝くのもいいじゃない ピン子78歳、最後に残したい言葉』より一部を抜粋して、波乱万丈な人生をお届けします。

【書影】災い転じて福となす…あたし流、生き方の極意。泉ピン子『ピン!として逝くのもいいじゃない ピン子78歳、最後に残したい言葉』

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どんな場所でも「住めば都」

今は熱海に住んでるけど、私にとって熱海は最初から憧れの土地だったわけじゃないのよ。橋田ママ(脚本家・橋田壽賀子さん)に言われて考え始めたものの、むしろ最初は、「熱海かぁ……」って感じ。

だってあんた、海風は湿気がすごいし、髪は広がるし、メイクはよれるし。女優にとって湿気は敵よ。なのに、夫のほうはウキウキだったの。内見に行くときなんて、「あの山の形がいいね」だなんて、はしゃいでね。私は都会が好きだったから、喜ぶ夫を後目に階段に腰かけてため息ついてね(笑)。

そもそも私、本当に昔から港区以外が苦手だった。なんとなく土地の空気が合わないのよ。都会のざわつき具合、スピード感、どこからでも近い場所。ああいうところでしか呼吸ができなかったの。だから熱海といわれたときも、どうしても東京の中心部から頭が離れられなかった。

だけど、2011年の東日本大震災のときに思ったのよね。

「あ、もう高層階は無理」って。

当時は27階に住んでいたんだけど、それでも揺れはすごかった。高層階の揺れ方って横揺れじゃないのよ。“ビルがうなる”のを感じるの。

これから先どんどん歳を取って、足腰も弱くなったときに、エレベーターが止まって非常階段を何十階も下りるなんてことになったら、コントにもならない。もう高層階は卒業しよう、と腹をくくったのね。

静けさの質

で、結局住んでみたら、これが悪くない。というか正確に言えば、悪くないところもある。気づいたら潮風に癒されている自分がいるのよ。

人間って不思議よね。若いころは刺激が欲しかったのに、歳を重ねると“静けさの質”がよくわかるようになる。

でもね、私が住んでるマンションはエレベーターが少ないうえに来るのが遅いし、そもそも駅からタクシーで1500円はかかる。私、車の免許は持ってないのよ。

駅前に出ても、いいお店は数えるほど。

まあ、そういうところも悪くはないかもね。

勢いで買っちゃダメなもの上位

私は東京の港区の高層マンションが好きだったから、昔は今でいうタワーマンションのはしりを借りて住んでたこともある。見晴らしがよくて、空気が澄んでいて――なんていう幻想にまんまとやられたのね。夫も、間取りと眺望をひたすら気に入って、ノリノリで、あのときは押し切られたの。

ところが、住んで2日目ぐらいよ。あの人、突然窓の近くに立てなくなったの。


(写真提供:Photo AC)

「あ、これ、ダメだ」って言って部屋の真ん中から動かない。寝室の大きな窓なんてさ、一度もカーテンを開けなかった。

なぜって? 「怖くて」よ。馬鹿みたい!

あとから思えば、なんで高層階の部屋を買ったのか、夫婦そろってわからないの。まああのときは勢いね。マンションって、勢いで買っちゃダメなもの上位よ。

ちなみにマンションを買った後、樹木希林さんが見せてと言うから家の前を案内したら、うちをジーッと見つめてひと言。

「あんた、あの部屋じゃなくて、隣のほうがよかったのに」

そっちのほうが「条件がいい」物件だったみたい。あの人、不動産に関しては天才だったからね。でも買った後に平気で言わなくてもいいわよね!

裏切りは笑い話

それでも南青山のマンションには長く住んだのよ。買った当時は5000万か6000万ぐらいだったかな。いざ売却するときには見事に“中抜き”されたの。不動産って怖いわよ。信じて任せてるすきに、しれっと裏で何かやられてしまった。

「ああ、また裏切られたぁ」とうなだれたけれど、ここまで生きてて、「裏切り」はもはや“年中行事”みたいなもの。驚かない自分がまた悲しいんだけど、もう慣れちゃったのよ。

私がもうちょっと頭が良ければ、この時期に坪いくらで買っといてこれくらいで売って……とかできたかもしれないけど、そもそもそういうことに向いてないのよね。せこいことが好きじゃないから、転売とかはよくないんじゃないかと思っちゃう。安く買って高く売ってというのも、ずる賢いような気がしちゃうしね。

そう考えると、裏切られ続けるというより「笑っちゃうような驚きの連続」って感じかもしれないね。昔からずっとそう。それくらいに思っとくほうがいいんじゃないの?

そうじゃなけりゃこんなに騙されて生きてないのよ(笑)。

※本稿は、『ピン!として逝くのもいいじゃない ピン子78歳、最後に残したい言葉』(徳間書店)の一部を再編集したものです。