円安を背景とした外国人投資家や資産家たちの不動産「爆買い」。その影響により物件価格は高騰し、マンションの外国人オーナーと住民の間では信じがたい生活上のトラブルが発生している。

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 今、全国のマンションで何が起こっているのか。はたして、悪いのは外国から来た彼らだけなのか? 

 不動産事業プロデューサーとして業界に精通する牧野知弘氏の新刊『「外国人不動産」問題』(祥伝社新書)より、一部を抜粋して紹介する。(全3回の1回目)

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「来月から家賃は3倍になります」

 外国人のせいでマンション価格が高騰している、と言われますが、外国人投資家が投資するのは区分所有マンションばかりではありません。賃貸マンション1棟を丸ごと購入して運用する投資家もいます。

 2025年秋、東京・板橋の賃貸マンションで騒動が勃発しました。このマンションは地元金融機関の子会社が所有し、長年にわたって賃貸マンションとして運用されてきましたが、デベロッパーに売却され、さらにこれを中国人がオーナーを務める会社に転売されていたのです。

 すると、このマンションの住民に次々と家賃値上げの通知が舞い込みました。請求額は既存の家賃の3倍近くという高額なもの。あまりの高額な請求に怖気づいた住民の一部は退去していきますが、残された住民は請求を拒み続けます。日本の借地借家法では賃借人が保護される傾向が強く、家賃を引き上げる場合、賃貸人側は値上げを行なう理由、たとえば諸物価の高騰、公租公課(公的な負担金)の引き上げなど合理的な理由を挙げて説明する必要があります。

 ところが、賃貸人側は説明をするどころか強硬手段に打って出ます。建物は地上7階建てですが、ある日突然、エレベーターの運行を休止します。住民の利便性を失わせ、退去を促すという強引な手段に打って出たのです。また、退去したあとの住戸を民泊(次項で詳述します)と思われる施設に改装した結果、マンションに見知らぬ外国人が出入りするようになります。


画像はイメージ ©beauty_box/イメージマート

 こうした様子がネット上に取り上げられ、外国人による不法なふるまいであると糾弾されるに至りました。また、この問題については国会の場においても質され、当時の石破茂首相は、外国人が日本の法律をよく理解しないがゆえの所作であるとし、日本の法律や慣習を外国人によく理解させるための検討組織を立ち上げる、と言明しました。

日本の法律をよく知らずに行動…オーナー側に同情する点も

 件のマンションですが、騒動が大きくなると、オーナー側は家賃の引き上げを撤回し、住民に対する理不尽な要求を行なわなくなりました。オーナーは香港の人でしたが、日本の法律をよく知らずに行動していたようです。

 この事件ではあたかも中国人(香港人)の行動は横暴であり、日本人を排除しようとしているのではないかといった風説が乱れ飛びましたが、実は同情する点もあるように思えます。

 私には、香港に住んで不動産投資顧問業を営む友人がいますが、この事件が起こる数カ月前に私のオフィスに見えた際、

「まきのさん、大変ですよ。私の住んでいる香港のマンション。このまえ夜中に大家がいきなりどんどん! と扉を叩き、私が出ると翌月から賃料を倍にすると通告してきたんですよ。倍ですよ。嫌なら出て行け、ってね。香港じゃどうにもなりませんよ」

 と愚痴を言っていたことが思い出されます。香港ではごく当たり前の光景なのだそうです。おそらく件の香港人は当たり前の行動に出て、日本国内SNSからの思わぬ反発・批判の嵐にびっくりしたというのが実態のようです。

 中国人オーナーの増加は全国至るところにおよんでいて、大阪の難波界隈でも同様の事態が発生し、空き部屋を次々と民泊に切り替え、実質的に居住環境を貶めて、住民を追い出すことなどが行なわれている実態が明らかになっています。

 外国人にとっての常識が日本国内では非常識となる事例と言えましょう。

違法民泊が横行する湾岸エリア

 東京五輪選手村跡地に整備されたマンション群・晴海フラッグは分譲4145戸、賃貸1487戸の規模を誇ります。分譲にあたっては、周辺時価よりも2、3割安い価格で販売されたために申し込みが殺到、最高倍率は266倍にもなりました。

 この土地は東京都が所有していたものでしたが、選手村の建物と一緒に大手デベロッパー12社に払い下げられ、選手宿舎は改装、これに追加してタワー棟などを建設、分譲されました。本来、公有地の払下げにあたっては、住宅用地などの場合には一定期間の転売の禁止や法人による取得の禁止、サブリース(転貸)の禁止などが盛り込まれることが多いのですが、都はこれらの制限をいっさいつけなかったために、人気が沸騰したと言われています。

 購入の実態を見ると、NHKの調べなどによれば、法人による取得が4割相当におよぶものもあり、個人で複数戸の住戸を所有するなど投機的な購入が多数を占めました。外国人の取得についても制限されなかったために、外国人投資家による取得も目立ちました。また、法人のなかには外国資本をバックにしたペーパーカンパニーも多く含まれていたようです。

ガードレールに大量の鍵ケースが…違法民泊問題

 この晴海フラッグで問題となったのが違法民泊です。民泊とは一般の住宅(戸建て住宅やマンション住戸)を旅行者などに宿泊用に提供するサービスです。フランスなど海外では、ごく一般的に旅行者に供されている宿泊システムですが、日本では2018年に住宅宿泊事業法という法律が定められ、自治体のルールのもと住宅提供者、民泊運営者、宿泊客仲介者などによる届け出や登録などを必要とするものです。

 晴海フラッグでは、マンション管理組合において民泊を禁止しているのですが、これを無視した違法民泊が跋扈していると問題になっているのです。違法民泊を行なっている住戸は、中国人や彼らが経営する法人が所有している住戸で行なわれているとされ、宿泊客を招き入れるための白タクや白バス(運行許可のないタクシーやバス)なども運行されているとのことです。

 実際にメディア記者が、現地のガードレールなどに大量の鍵ケースが括りつけられている様を写真に収め、報道しています。鍵ケースとは、マンションにやってきた宿泊予定者が、暗証番号でケースを開錠して建物内住戸内に入れるようにするために鍵を格納しているケースのことです。

 晴海フラッグのある東京都中央区では、民泊は許可を受けたものでも土曜日午後から月曜日午前中までの運用だけが認められているように、制限がかかっているにもかかわらず、野放図に利用されているのが実態です。

 こうした事態は晴海フラッグに限った話ではなく、湾岸エリアのタワーマンションなどで問題となっています。なかには、区分所有者の半数が中国人オーナーのマンションがあるとも言われており、違法民泊に多数の住戸が利用されているのです。このような所有者の多くが中国人であるマンションを、われわれ業界人は「中華まん(中華マンション)」と呼んでいます。

 もちろん、中国人の所有者のなかには、住居として何の落ち度もなく住んでいる方が大勢いますので、ことさら中国人全体を批判するものではありません。ただ、板橋の賃貸マンションの件にもあるように、日本の法律をよく理解していない人たちが、自分たちの利益のために民泊を経営し、住民とのトラブルに発展していることに注意する必要があります。

マンション住戸内に中華食堂!?

 中国人を中心とした違法民泊は、そもそも日本の法律をよく理解しないがゆえに横行し、トラブルにつながっていると言いましたが、われわれ日本人がとうてい想像できない行動に出る事例も出てきています。湾岸エリアの大規模マンションの違法民泊を利用する旅行客に対して、新たなサービスが提供されている、というものです。

 湾岸エリアのタワマンが多い地区では、周辺に飲食店や商業施設が不足しています。日本にやってきた旅行客たちにとって、現地の到着後どこで食事ができるかは大きな関心事です。中国人旅行客は食事代を節約するために、高い店には出かけず自炊する人たちが多くいます。また日本にある中華料理店は、日本人向きに味つけされた料理が多く、彼らの口に合わないと言われます。

 そこで、マンション内での中国人所有住戸で中華食堂を開き、旅行客相手に食事を提供するところが出てきているのです。同じマンション内に食堂があれば、日本にやってきたばかりで土地勘のない旅行客でも気軽に食事にありつけるわけです。旅行業者からも食堂の存在をあらかじめ、

「食事は303号室でどうぞ」

 といったように案内しているようです。それどころか、同じ棟や近隣マンションの民泊部屋にケータリングしているようだとの話もあります。この他、ツアー案内や部屋内のリネンサービス、清掃など周辺サービスは花盛りで、旅行客の便宜を図っています。

 日本ではマンションのような住宅内で不特定多数を対象とした商売を行なうことは用途上できません。また当然ですが、食堂などの開設には保健所の許可が必要になります。こうしたルールを知らないというところもありますが、中国人はある意味逞しく、また如才ない人たちと言えます。日本人のわれわれが思いつくような領域を超越しているのです。

 マンション内に食堂があることで、棟内に調理による臭いが漂います。特に中華料理は油を多用するので、粘り気の強い油臭さが鼻を突くだけでなく排水管トラブルにもつながります。食材を仕入れるためにマンション共用部を通る際に、食材から汁を垂らす、エレベーター内を台車などで傷つけるなどの行為が相次ぎ、マンション住民とのトラブルを引き起こしています。仕入れ業者など不特定多数の人が出入りするため、防犯上の不安も擡げてきます。

 当然、管理組合はこうした行為を容認できないとして追及します。しかし、民泊とて違法民泊ですので、訴えるにあたってはその実態を立証しなければなりません。言葉も通じない相手に説得する、ましてや行為を止めさせるには多大な労力が必要です。旅行客は友人だ、料理はたまたま友達と食卓を囲んだだけだ、料理を友達の部屋にお裾分けで運んだだけだと、何とでも言い訳ができてしまいます。

 まるで雑居ビルのような様相になったマンションでは、これを手放す日本人が増えます。そして、この住戸を中国人が購入する。さらにいろいろな用途に運用する。嫌気した日本人が出ていく。まったくの悪循環です。

 彼らには悪気があるわけではありませんし、自分たちでマンションを占拠しようと思っているとも見えませんが、日本のルールについてあまりに無関心であり、自分たちの思いつきと欲望で生きていく結果が無用な対立を生むことになっているのです。

(牧野 知弘/Webオリジナル(外部転載))