中国産レアアースに価格で勝てない日本、それでも175億円を投じる理由―台湾メディア
台湾メディアの自由時報は29日、中国産レアアースへの依存からの脱却に向けた日本の動きについて報じた。
記事は、中国が重要鉱物の輸出規制を強化する中、日本はレアアース供給網の脱中国依存を進めていると指摘。その中心企業の一つが信越化学工業だとし、「同社は福井県に3カ所目となるレアアースの精製設備を新設する計画で、豪州やベトナムから輸入した鉱石を国内で分離・精製し、中国への依存低減を目指す。総投資額は少なくとも350億円とされ、日本政府は約175億円を補助する」と伝えた。
その上で、「日本は磁石製造技術では世界トップクラスだが、レアアースの中流工程である分離・精製能力は長年中国に依存してきた。中国は世界のレアアース採掘量の約7割、分離・精製能力の約9割を占めている」とし、中国税関当局のデータとして、2025年11月以降、日本向けのテルビウムとジスプロシウムの輸出はほぼ途絶え、イットリウムもごく少量にとどまっているとした。
記事は、日本が不足しているのは鉱山ではなく分離・精製能力だと強調。「電気自動車(EV)用モーターや省エネエアコン、産業用ロボット、風力発電設備などに使われる高性能永久磁石にはネオジム、プラセオジム、ジスプロシウム、テルビウムなどが必要だが、海外から鉱石を調達できても、分離・精製工程が中国に集中している限り、供給網は依然として中国に左右される」と指摘した。
一方、今回注目を集めている信越化学工業の強みとして、磁石製造工程で発生する廃材や使用済みモーターから高純度のレアアースを回収・再資源化できる点に言及。「同社はダイキン工業や日立製作所と協力し、業務用空調のコンプレッサーからレアアース磁石を回収するシステムを構築中で、2027年の本格稼働を予定している。日本とベトナムには磁石の回収・再資源化拠点も設置している」と紹介した。
記事は、中国の優位性は単なる低コストではなく、数十年かけて形成された産業集積と規模の経済にあると分析。大型分離工場、高い設備稼働率、化学薬品から磁石製造までの一貫した産業網、巨大な国内需要がコスト競争力を支えているとする一方、日本は人件費やエネルギー費、環境対策費が高く、新工場の製造コストは当面中国を上回る可能性が高いとした。それでも日本政府が信越化学工業に巨額の補助を行う理由については、「中国に価格競争で勝つためではなく、供給網が途切れないための保険を買うことにある」と指摘している。
さらに、信越化学工業が世界最大級のシリコンウエハーメーカーでもある点にも言及し、「同社はTSMC、サムスン電子、インテルなどの主要顧客を持ち、高純度材料の製造や不純物管理、品質管理で培った技術を有する」と説明。「レアアースと半導体材料は分野こそ異なるものの、超高純度材料を安定供給し、長期に顧客との関係を維持するという共通の産業構造を持つ」とし、日本はシリコンウエハー、フォトレジスト、フォトマスク材料、レアアース磁石などを同じ経済安全保障の枠組みで捉えているとの見方を示した。(翻訳・編集/北田)

