この記事をまとめると

■日本の自動車メーカーはかつて多ブランド化による車種展開を進めてきた

■中国の自動車メーカーも多ブランド化を進めており多種多様な車種を展開中だ

■新進気鋭ブランドが増えていることもありオールドブランドの人気が下火傾向にある

中国の自動車メーカーが多ブランドを展開

 中国国内で開催される自動車ショー会場へ取材に行くたびに見慣れない新興メーカーや、新しいブランドが存在していてとまどうことが多い。日本メーカーではトヨタがトヨタブランドのほかレクサスブランドを展開しているが、中国の主要メーカーではマルチブランドとして数多くのブランドを用意している。

 日本でもお馴染みのBYDオート(比亜迪汽車)では、日本ではBYDブランドとして単一ブランド展開しているが、中国では海洋、王朝、騰勢(デンザ)、方程豹(ファンチェンバオ)、仰望(ヤンワン)という5つのブランドを展開している。日本でラインアップされている車種を見ても、ATTO 3は王朝ブランド、そのほかは海洋ブランドとして中国では展開されている。

 日本ではバブル経済と呼ばれたころマツダがマツダ、ユーノス、オートザム、アンフィニというブランドを展開し、さらにフォード車およびフォードブランドのマツダからのOEM(相手先ブランド供給)車を扱うオートラマを含め、国内5チャンネル体制を敷いていたのによく似た動きといえるだろう。

 店を開けているだけで新車がガンガン売れた、そんな今では信じられないほど新車がよく売れたのがバブル経済のころの新車販売業界。そのようないい時代というか、まだまだ新車販売の伸びしろ(当時は初めてマイカーを手にする人も目立っていた)があるころには、目新しさも手伝って販売促進効果が高くなるため、これから市場を攻めようとするメーカーが多数のブランドを抱えることで、それだけ販売台数を簡単に増やすことができたのである。

 マツダ以外の多くのメーカーでも当時は、正規ディーラーについて複数の販売チャンネル(トヨタ、トヨペット、カローラ、ネッツのような)を用意し、それぞれに専売車種を設けて販売促進を行っていたが、中国のBYDでもブランドごとに販売店を設けているところをみると、日本がたどってきた道をある程度研究しての動きなのかもしれない。

昔ながらのセダンが中国の自動車産業を支えている

 2005年に英国MGローバーが経営破綻した。MGローバー全体の所有権はBMWに移るのだが、MGブランドの知的財産権は南京汽車、ローバーのエンジンや車体設計などの知的財産権は上海汽車が取得した。しかしローバーという商標は取得していなかったので、ROEWE(ロエベ/栄威)というブランドを立ち上げ、取得したローバー75の生産設備を活かしてロエベ750を2006年より生産及び販売をスタートさせた。なおMGを取得した南京汽車はその後上海汽車に吸収合併されたことで、MGの商標や知的財産などは上海汽車が取得することとなった。

 気がつけばロエベブランドは誕生から20年が過ぎたことになる(MGはsince 1924を譲らない)。

 2026年4月24日から5月3日の会期で開催された第19回北京国際自動車展覧会(北京モーターショー)会場内を歩いていると、ちょうど筆者が中国の自動車ショーへ出かけはじめたころにデビューしたロエベも含む懐かしいブランドに巡り合うことができた。

 長安汽車のイードゥ(逸動)、奇瑞(チェリー)汽車のアリゾ(艾瑞澤)などである。いずれも中国でセダンが圧倒的に人気が高かったころにブランドが立ち上がっていることもあり、いまだにセダン、しかもICE(内燃機関)車メインでラインアップしているのである。

 しかも中国車のなかでは、ネオクラシカルとでも表現できる、オーソドックスなセダンスタイルのモデルも目立ち、来場者で混みあう会場内でもこれらのブランド展示車のまわりは訪れる人も少なかった。何がいいたいかというと、中国車のなかでもオールドブランドと新進気鋭ブランドにわかれるようになってきたのである。

 外資でもいち早く中国国内でサンタナの現地合弁生産をスタートさせたVW(フォルクスワーゲン)は、本国ドイツ以上に中国での売れ行きが長年にわたりよかったこともあり、オールドブランド化しているように見える。BEV(バッテリー電気自動車)のIDシリーズやクロスオーバーSUVのティグアンあたりはまだしも、セダン系では一汽VWのサジター(速騰)Lや、上海VWのラヴィーダ(朗逸)といったおなじみのセダンの展示車まわりは、ほかのVW展示車のまわりには人が多いのに、こちらには人がほとんどいないといった様子となっていた。

 VWブランド自体がオールドブランドとなるなか、中国の消費者の間では伝統的セダンともいえるこの2台はとくに古風なモデルとなっているようである。いままで挙げてきた車種の実車についてアラカン(もうすぐ還暦)を迎えるセダン大好きな筆者が見て、「なかなかいいねえ」と感じるのだから、古臭いオーラを発しているのは間違いないだろう。ただ日本より加速度的に少子高齢化が進む中国では当然ながら、運転免許所持者の高齢化も加速しているものと想像できるので、これらのモデルが縁の下の力もちとして各ブランド全体の販売台数を支えているのかもしれない。