【小川 裕夫】2027年「横浜花博」跡地に誕生…刀・森岡毅氏も参画する「日本最大級テーマパーク」開業前から見えてきた暗雲

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横浜で進む「巨大テーマパーク構想」

ユニバーサル・スタジオ・ジャパン(USJ)を劇的に復活させたことで、テーマパークの再生人として業界に名を轟かせる森岡毅氏。その勢いはとどまることを知らず、2024年3月には東京・お台場の旧ヴィーナスフォートを活用した「イマーシブ・フォート東京」を、2025年7月には沖縄県名護市郊外に大型テーマパーク「ジャングリア沖縄」をそれぞれオープンさせた。

鳴り物入りで開業した2つのテーマパークは、森岡氏の評価も重なって当初多くの期待を集めた。しかし、イマーシブ・フォート東京は事前の想定ほど客足が伸びることはなく2026年2月末時に閉園。ジャングリア沖縄も開業からわずか1年でガラ空き状態になり、「廃墟系YouTuber」たちの格好のターゲットになっている。

これら2つのテーマパークが失敗した原因は多岐にわたり、ひとつに絞ることは難しい。必ずしも森岡氏の手腕に直結するものではないものの、神格化されていた森岡氏の実力に少なからず翳りが見えることは明らかだ。

とはいえテーマパークの運営は一筋縄ではいかないため、経験豊富な森岡氏への期待は根強い。現在、神奈川県横浜市でディズニーに比肩する規模の新テーマパーク計画が本格的に動き出している。そのプロジェクトにも森岡氏は名を連ねている。

2010年代以降、日本のテーマパーク市場は東の東京ディズニーリゾート、西のUSJという2強体制が確立した。そのため既存のテーマパークは苦戦を強いられ、新規オープンも話題を集めにくい状況が続いている。このテーマパーク受難の時期に、横浜市で巨大テーマパーク構想が生まれた背景には、2027年に横浜市瀬谷区で開催される国際園芸博覧会(GREEN×EXPO 2027)がある。

来年に迫った「横浜花博」

大阪・関西万博に続く国内開催の万博として、政府と横浜市は総力を挙げてGREEN×EXPO 2027の準備を進めてきた。2025年11月2日の起工式には高市早苗首相が、11月4日の500日前発表会には名誉総裁に就任した秋篠宮皇嗣殿下や山中竹春横浜市長が登壇。これまで横浜市は開催の機運を高めるべく定期的に周知するイベントを実施してきたが、“笛吹けども踊らず”の状態が続いている。

会場となる瀬谷区は港町・横浜のイメージとは異なり、駅前を除けば農地が広がる。もともとアメリカ軍の通信施設があった土地で、返還後の有効活用を模索するなかでこの構想が生まれた。

広大なエリアをゼロから整備するには、莫大な資金と歳月が必要になる。横浜市はGREEN×EXPO 2027の開催に合わせてインフラを整備し、閉幕後に跡地をテーマパークへと生まれ変わらせようとした。このスキームならインフラ整備に莫大な予算を投じても回収する見込みが立つ。さらにテーマパークは地域振興に一役買い、それは横浜経済の起爆剤にもなる。市の描くストーリーが想定通りに進むと仮定すれば、いいことずくめのプロジェクトといえる。

テーマパーク整備に名乗りを上げた相鉄

しかし、こうしたビッグプロジェクトが想定通りに進むことはそうそうない。当初、GREEN×EXPO 2027閉幕後のテーマパーク整備は、地元の相模鉄道(相鉄)が主体となって複数の企業が参加することになっていた。

相鉄は地元企業であり、なによりテーマパークの最寄駅となる予定の瀬谷駅には相鉄線が走っている。鉄道会社が沿線開発の一環としてテーマパークを建設・運営することは決して珍しくない。相鉄が主体事業者になることは当然と目されていた。

相鉄はもともと神奈川県内のみに路線を持ち、都内への他社線乗り入れもなかったため、東京圏での知名度は高くなかった。その存在感を一気に高めたのが、2019年3月に開業した相鉄新横浜線だ。この開業により相鉄沿線からJR線を経由して渋谷・新宿・池袋といった副都心エリアにも直通で移動することが可能になった。

これにより沿線は東京の通勤圏に組み込まれ、新築一戸建てのマイホーム願望を抱くニューファミリー層への訴求力も高まった。この層の流入が見込めれば、沿線開発にも弾みがつくことは間違いない。東京直通を目前にして相鉄の意気込みは高かった。

新交通「上瀬谷ライン」計画が浮上

ところがGREEN×EXPO 2027の会場地は瀬谷駅から2.5キロメートル以上も離れている。歩けない距離ではないが、大勢の来場者を迎えるには公共交通の整備が欠かせない。そこで浮上したのが、瀬谷駅から会場地付近まで約2.6キロメートルを結ぶ新交通「上瀬谷ライン」の建設計画だ。新交通とは、新橋〜豊洲間をお台場経由で走るゆりかもめや、大阪湾岸エリアを走る南港ポートタウン線のような交通システムを指す。

横浜市内では1989年から「金沢シーサイドライン」という新交通が運行されている。同線の事業者は横浜市が出資する第3セクターで、新交通のノウハウが蓄積されている。上瀬谷ラインの運行もこの事業者が担う予定だった。こうして上瀬谷ラインは、相鉄の瀬谷駅と接続する形で建設される青写真が描かれた。効率面では相鉄に運行を委ねる選択肢もあったはずだが、その話は浮上しなかった。

ところが、肝心の運行予定事業者がこの計画に難色を示したことで、上瀬谷ライン自体が立ち消えになってしまったのだ。その後、瀬谷駅から自動運転バスを走らせる代替案も検討されているが、同案は地下に専用道を建設するという大掛かりな工事を伴うので現実的ではなく、仮に実現できるにしてもGREEN×EXPO 2027はおろかKAMISEYA PARKの開業までに間に合わう可能性は極めて低い。

三菱地所が整備を引き受けることに

こうした紆余曲折に追い打ちをかけるように相鉄もテーマパークの整備主体から降りてしまい、計画は一時白紙に戻り、暗礁に乗り上げた。

その後、三菱地所が新たな整備主体として名乗りを上げ、テーマパーク名も「KAMISEYA PARK」に決まった。結果的に相鉄は整備主体の座を譲ることになったが、開発パートナーとして引き続きプロジェクトに関わっている。

筆者は2019年前後から頻繁に相鉄沿線を取材で訪れていた。新横浜線の開業と東京への直通運転の実現を控え、試験運転が始まった沿線がどのように変化していくのかを確かめようと考えていた。

相鉄の取材を進めるうちに、GREEN×EXPO 2027の話も耳に入ってきた。しかし当時、関係者や沿線住民からこの博覧会に対する特別な思いを感じることはなく、会場予定地に足を運ぶ気にはなれなかった。

ところが運営が相鉄から三菱地所へと変わり、三菱の「KAMISEYA PARK」に関するリリースを眺めているうちに、筆者の心境に変化が生じた。というのも、KAMISEYA PARKを紹介するニュース記事には必ずと言っていいほど「ディズニー級の」という惹句がつけられていたからだ。

ランドやシーが日本屈指のテーマパークであることは誰もが認めるところで、規模感をわかりやすく伝えるための表現とも受け取れるが、腑に落ちない点がある。ディズニーを手がけるのは、三菱地所と不動産業界で覇を争う三井不動産だ。あえてライバルのテーマパークを引き合いに出す合理的な理由は見当たらない。そこには三菱・三井の静かなる対抗心が透けて見える。

ディズニーはそもそも別格

1983年に開業した東京ディズニーランドは、三井不動産がディズニーから順当に了承を得て決まったわけではない。最後まで三井不動産と三菱地所の2社が競合し、最終的に三井に軍配が上がった経緯がある。

鳴り物入りで日本に上陸したディズニーランドだが、当初は「西洋の遊園地は日本の風土・文化に合わない」という意見も根強かった。当時の遊園地といえば、父親がビール片手に子どもたちが遊ぶのを眺め、昼食は母親の作った弁当を食べるというのが一般的なスタイルだった。ディズニーランドは園内でのアルコール販売も手づくり弁当の持ち込みも禁じており、それが「日本には合わない」とされた理由だった。

ところが、ディズニーは予想を覆して開業直後から記録的な入園者数を叩き出し、すぐに日本を代表する遊園地になった。ディズニーは自社の施設を差別化する意図から、「テーマパーク」という言葉を創案。これが人口に膾炙し、現在では大規模遊園地全般を指す言葉として使われているが、そこに明確な定義はなく、ディズニーが創案した概念である以上、本来はディズニーが認めた施設だけがテーマパークと呼べるとも言える。

(クレジットのある写真を除き、すべて筆者撮影)

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【つづきを読む】『地域住民は「人が集まるとは思えない」と悲観…熱気ゼロの横浜・上瀬谷「巨大テーマパーク」計画地に漂う不穏な空気』

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