医学界が大注目…カラダをキレイにするなら「マンジャロよりエクサカイン」?魔法の体内物質は”筋肉と内臓”からドバドバ出る
老化細胞から出る有害な物質を抑えたり、全身の慢性炎症を鎮めることで細胞の老化を抑える「マイオカイン」は、筋肉の絶対量が増えると、より出やすくなっていく。
だが、話はそこで終わらない。近年の研究によれば、身体を動かすことによって、筋肉だけではなく、全身のさまざまな臓器からも生理活性物質が湧き出ていることがわかってきたのだ。
それらはエクササイズ(運動)に応じて分泌されることから、総称して「エクサカイン」と名付けられている。
【前編記事】『《京大の筋肉》Dr.森谷も太鼓判「カラダときめく筋肉からのラブレター」マイオカインのスゴすぎる能力』よりつづく。
「さまざまな効能のあるシャワーのようなもの」
エクサカインとはどのような体内物質なのか。マイオカイン・SPARCを発見し、『筋肉はすごい』の著書もある、京都府立大学准教授の青井渉氏が解説する。
「運動によって分泌されて、血液中に飛び出したり臓器周辺で増えてくる生理活性物質が、エクサカインです。私たちの多くは1日1回、入浴やシャワーで身体の表層をキレイに保っていますが、エクサカインはさまざまな効能のあるシャワーのようなもの。それを浴びることで身体の調子が整えられて、病気が予防できたり、老化が抑えられたりするんです。
たとえば、運動すると脳内で増えるBDNFは、神経の維持・再生を促して、記憶や学習などの認知機能を改善するような働きをします。逆に、BDNFが減少すると、うつ病や認知症のリスクに関わることもわかっています」
骨から出るエクサカインはギリシャ語で骨を表す「オステオ」を冠して、オステオカインと呼ばれる。そのひとつであるオステオカルシンは、骨を強化するとともに、脂質代謝の向上など健康維持に役立つ。
「骨と筋肉との間には密なコミュニケーションがあるという研究論文はたくさん出ています。少し前の考え方では、運動すると骨に重力の負荷がかかるので骨が強くなると言われてきましたが、それだけではなく、筋肉を動かすことで分泌されるエクサカインが骨の働きにも影響することが近年の研究でわかってきたんです」(青井氏)
あらゆる臓器から「エクサカイン」は生まれる
また肝臓から出る物質は、ギリシャ語で肝臓を表す「へパ」を冠してへパトカインと呼ばれる。そのひとつであるFGF21は、運動や食事によって分泌され、全身の代謝を促し、脂肪を分解してくれる。
このように身体によい働きをするエクサカインだが、中にはマイオカインと同様に、悪玉も存在する。
「脂肪肝の状態で出やすくなるのがフェチュインAで、これはFGF21とは対照的な働きをするものです。肝臓に脂肪が蓄積してフォアグラのようになってしまうと、フェチュインAが増え、血液を通じて筋肉へ作用して、慢性炎症や代謝の低下を引き起こしてしまいます」(青井氏)
運動不足はもちろんだが、習慣的な深酒などで肝臓がダメージを受けていると出やすいというから気を付けたい。
脂肪(アディポ)から出るアディポカインは、「ほとんどが悪玉である」と青井氏は警鐘を鳴らす。
「肥満の人がなぜ生活習慣病にかかってしまうのか、という疑問に対する一つの答えがアディポカインの分泌です。とくに皮下脂肪よりも内臓脂肪のほうからよく出ることがわかっていて、少しずつ全身を痛めつける。中年になり筋肉が弱ってくることでも、体脂肪が増えてアディポカインが出てきやすくなります。
逆に、痩せている人では、脂肪細胞から善玉のアディポネクチンが多く分泌されます。これは筋肉の代謝を助け、血糖値の上昇を抑えることが知られています。運動して内臓脂肪の蓄積を減らすことは、食べても太りにくい体質づくりにもなるのです」
運動不足の筋肉は“老化”に直結する
最新の研究では、エクサカインが皮膚によい影響を与えることも報告されている。エクサカインが血液中を通って皮膚に作用し、コラーゲンを合成してくれたり、メラニンの生成を抑えてシミを防いだりするほか、シワになりにくくなる可能性も示唆されているのである。
「エクサカインが老化細胞そのものにどのように作用するのかも、少しずつですがわかり始めていて、最近では老化細胞ができにくくなる働きがあるのではないかとも言われています」(青井氏)
現在は、老化細胞の作用で他の細胞に慢性炎症が起きることが老化の原因の一つとされている。すると、こんな疑問が湧いてこないだろうか。筋肉痛が筋肉の炎症や損傷で起きるとすれば、運動は身体に悪いのではないか? 青井氏が答える。
「筋肉痛をはじめ、頭をぶつけて赤く腫れたりストレスで胃炎になる症状は、短期間で回復する急性炎症です。老化を進める慢性炎症はそれとは全く別物で、痛みなどの自覚症状が全くないにもかかわらず、全身で静かな炎症が四六時中起こっている状態です。ある細胞で慢性炎症が何十年とくすぶり続け、ついに閾値を超えたとき、そこに病巣ができたりする。興味深いことに、運動不足の筋肉には慢性炎症が起きやすいんです」
私たちを老化させ、死に至らしめる慢性炎症……それを防ぐのは筋肉痛もいとわず身体を動かすことなのだ。
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「週刊現代」2026年6月8日号より
