長持ちするフラワーアレンジメントで知られるラグジュアリーブランド、ヴィーナス・エ・フルール(Venus et Fleur)もまた、ホリデーシーズンのインフルエンサーマーケティングキャンペーンの成功を踏まえ、2025年にソーシャルメディア戦略を刷新する計画だ。「インフルエンサーマーケティングはあまりにも飽和状態となっているので、雑音を断ち切ることが最重要課題だった」と、同ブランドのCMO、シルベット・セイン氏は言う。2024年の第4四半期、ヴィーナス・エ・フルールは、ブランドとパフォーマンスマーケティングのバランスを重視するインフルエンサーエージェンシー、ダイアローグ・ニューヨーク(Dialogue New York)を起用した。その結果、インフルエンサーのスタイルに合わせて花束を贈るという既存のインフルエンサー戦略を見直すことになった。ソーシャルメディア上にひとつの静的な投稿を行うのが一般的だったそれまでの戦略をやめて、たとえばリースやガーランドのホリデーコレクションを宣伝するために、ブランドを愛していて関連するコンテンツを投稿してくれるインフルエンサー20名をキュレーションした。そして、セイン氏いわく、スーツに身を包んだオペレーションチームが「白い手袋をはめて配達」する形で、1日で20人全員に全コレクションをプレゼントした。コレクションは推定5000ドル(約77万円)相当だ。セイン氏によると、この取り組みの結果、予想を上回るフォロワーやエンゲージメント、売上の増加がみられたという。その翌週には、TikTokとリール全体で動画が7万7000ビュー以上を獲得した。さらにブランドのTikTokプロフィールの閲覧数は1500%増加し、インスタグラムのエンゲージメントは570%増となった。また、ヴィーナス・エ・フルールのホリデーリースは完売した。この成功に基づき、ブランドはさらに10人のインフルエンサーと同じプロセスを繰り返し、同等の結果をもたらした。「インフルエンサーからこれほど多くのエンゲージメントを得たことはなかった」とセイン氏は言う。「インフルエンサーたちは無報酬で複数の動画を投稿した」。このような「華々しく壮大なキャンペーン」が、今後のヴィーナス・エ・フルールのインフルエンサーマーケティング戦術を定義することになるだろう、とセイン氏は語る。ホリデーキャンペーンで証明されたように、インフルエンサーは結果を出すために大規模なフォロワーやエンゲージメントを必要としないと、同氏は指摘した。ヴィーナス・エ・フルールでは、新たに採用したそのほかのソーシャル戦略として、今期からYouTubeショッピングのアフィリエイトプログラムとTikTokショップをテストしている。「(TikTokショップでは)何がうまく当たるのか、まだわかっていない」とセイン氏は言う。「ラグジュアリーにとっては厳しい」。もっと一般的なTikTokのコンテンツという点で同ブランドにとって効果的だったのは、バイラルになったAR動画だ。また、ラグジュアリーブランドとして「インフルエンサーと提携することで、多少はオーガニックになれる柔軟性を持つことができた」とセイン氏は述べた。TikTokが禁止された場合、ヴィーナス・エ・フルールは広告が成功しているスナップチャット(Snapchat)に目を向ける可能性が高い。「ラグジュアリーブランドは、新しい戦略となると、当社はそんなことはしないという姿勢になりがちだ。だがその後、自分たちの声やブランドガイドラインに乗る機会を見出すようになると、よし、それほど悪くないかもしれないと気づく。我々は皆、メタ(Meta)やGoogleから多角化しようとしているため、とにかくすぐにノーと言うのではなく、自分たちの意思で物事を行うことに寛容になっている」。
インフルエンサーマーケティングエージェンシー、ダイアローグ・ニューヨーク(Dialogue New York)の創業者兼CEOであるジュリアン・フレイザー氏が、ラグジュアリーブランドをはじめとするインフルエンサーマーケティングの現状と方向性を分析する。現状のTikTokのパワーと影響力をどのように表現するか?「TikTokは力を持っており、特にラグジュアリーブランドがZ世代に浸透し、オーディエンスとの信頼性を築く方法に注力する中で、その重要性が全般的に引き続き高まっている。ここ数年のTikTokの出現によって、より無防備でリアルなナラティブや、洗練されていないコンテンツへとシフトしている。消費者はTikTokが提供するリアルなストーリーテリングや生々しさを求めている」。ラグジュアリーブランドとインフルエンサーの現在の力関係はどうか?「長い間、ラグジュアリーブランドはブランド(の威信)を維持するために、インフルエンサーのコミュニティに関与することに神経質になっていた。ブランドは、『特定のクリエイターと一緒に仕事するのは、ブランドには合わない』と感じていた。ラグジュアリーブランドの多くは、コントロールを解放することに抵抗を感じるが、それはリターンを促進する上で必要なことなのだ。また、シャネルビューティ(Chanel Beauty)を含む多くのブランドが、理にかなった形で効果的にインフルエンサーと仕事をする方法を見出している」。現在、インフルエンサーマーケティング業界が直面している最大の課題とは何か? 「我々はクリエイティビティの危機にある。インフルエンサーマーケティングに注ぎ込まれる資金は年々増えている。その業界が膨れ上がっているため、クリエイターやブランドのマーケターは現状に満足して怠惰になり、クリエイティブで思慮深いナラティブを推進できなくなっている。また、エージェントも自己満足と怠慢に陥り、適切なブランド提携の交渉をしなくなった。こうしたことが重なって、消費者は感覚が麻痺し、同じようなハッシュタグ広告や真偽不明の広告を目にすることにうんざりしている。誰もが同じようなメイクをして、同じようなインテリアの部屋に住み、ヘアスタイルも服装もみんな同じように見える。なぜなら、我々全員が独自のアルゴリズムのエコーチェンバーの中にいて、同じコンテンツを繰り返し提供されているからだ。(ソーシャル)トレンドに飛びついて、それが正しいときに活用するよう、私はブランドにアドバイスするが、このようなコピー&ペーストのアプローチに依存するだけではだめだ」。2025年に予想されるマーケティングのトレンドは何か?「メタ広告のパフォーマンスは芳しくなく、2025年には全体的に悪化するだけだろう。メタ広告で何らかのリターンを得るのは、はるかに難しくなってきている。そのためさらに多くのブランドがソーシャル広告の予算をインフルエンサーマーケティングにシフトしていくと予想している。また、ブランドマーケティングへのシフトもみられ、ブランドはトップオブファネルマーケティングへの投資の重要性を認識している。ユーザー生成コンテンツは、ブランドが必要とする大量のアセットを維持するのが困難なため、今後も人気が継続するだろう。そしてオフラインでの影響力や小規模なニッチコミュニティの価値もさらに明白になっていくだろう」。[原文:Luxury Briefing: Luxury brands are evolving their social media strategies in preparation for a ‘bumpy ride’]JILL MANOFF(翻訳:Maya Kishida、編集:戸田美子)