スタジオツアーロンドンでの「ホグワーツ・イン・ザ・スノー」の様子
 - Warner Bros. Studio Tour London - The Making of Harry Potter.

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 東京・練馬区としまえん跡地の「ワーナー ブラザース スタジオツアー東京 - メイキング・オブ・ハリー・ポッター」(以下、スタジオツアー東京)で、クリスマスシーズン限定の特別企画「ホグワーツ・イン・ザ・スノー」が11月9日から1月5日まで初開催される。『ハリー・ポッター』シリーズの造形美術監督で、スタジオツアー用の小道具製作も手掛けるピエール・ボハナが取材に応じ、その徹底したこだわりを語った。

 スタジオツアー東京は、『ハリー・ポッター』シリーズの制作の舞台裏に足を踏み入れ、映画制作の驚くべき世界を体験できるウォークスルー型のエンターテインメント施設。昨年6月に本国イギリスの「スタジオツアーロンドン」に続く世界2か所目としてオープンして以来、『ハリポタ』ファンの聖地となっている。「ホグワーツ・イン・ザ・スノー」は、ホグワーツの大広間のセットで『ハリー・ポッターと賢者の石』のクリスマスシーンを再現する特別企画で、スタジオツアー東京では待望の初開催となる。

 取材は今年6月、ボハナ率いる小道具チームが再結集し、スタジオツアー東京の「ホグワーツ・イン・ザ・スノー」用のアイテムを絶賛制作中のオックスフォードの工房で行われた。作業台にはツリー用のきらめく飾りや、七面鳥のロースト、ポテト、ケーキやプディングといったクリスマスのごちそうの食品サンプルが所狭しと並び、職人たちが一つ一つ手作業で磨きをかけていく。

 ボハナは「スタジオツアーロンドンに展示されているアイテムの多くはオリジナルですが、もちろん年月が経つにつれ(※開業は2012年)、展示物の多くを作り替えたり、修繕したりする必要がありました」と切り出すと、その時と同じ心構えでスタジオツアー東京用の小道具に取り組んでいると明かす。「スタジオツアー東京で一同が念頭に置いているのは、オリジナルと全く同じように復元することです。これはわれわれがこれまで常に行なってきたことであり、何かを取り替えたり作り直したりする際は必ず、正確に行わなければなりません。可能な限り当時の職人を起用し、オリジナルの完全なレプリカとなるようにしています」

 完全なレプリカはどう作られるのか? 「わたしの記憶力はひどいものです」と笑うボハナいわく、まずはワーナー・ブラザースのアーカイブにあるもの全てを参考にし、実物をスキャン。デジタルのパターンを作った上で型に成型し、組み立てていくのだという。何より大切なのは「全く同じに見せる」ことであり、基本的には素材、工程も全て同じに。素材、工程を変えるのは、全く同じに見せながら耐久性を高める場合に限られる。映画用の小道具は一度使えばそれで終了。耐久性については重視されていないからだ。

 例えば、ツリー用の星の飾りは映画ではボール紙で作られていたが、気温の上下や湿気・乾燥などで簡単に塗装が剥がれてしまう。耐久性を高めるために、プラスチック製に変えた。しかし、金の塗装は手作業でオリジナルと同様に行われる。この日も職人が金箔を張り付けてはハケで払い、ニュアンスのあるきらめきを生み出していっていた。ボハナは「オリジナルは金を均等に塗ったのではなく、飛び散らせたかのような感じでした。だからこそたくさん置いてあると、キラキラして見えるのです」と秘密を明かした。

 そうしてクリスマスのホグワーツ大広間を再現するために3か月かけて作られたのは、ツリー装飾用の金のヤマウズラ230個、三日月230個、星250個、ツリーの上を飛んで回る魔女8体、サイズが異なる金色のトランクが合計57個、そしてポテト12皿、グリーンピース12皿、七面鳥12皿、ハム12皿、クリスマスケーキ8個、クリスマスプディング8個だ。その全てがコンテナに詰められて日本へ送られ、飾り付けられるのを待っている。(編集部・市川遥)