「第二のルフィ」東京・埼玉連続強盗 実行犯は元力士、“入門時代”を元千代大龍が明かす「また九重部屋か」同部屋から2人目逮捕者
所沢の被害宅。坂井田容疑者が逮捕された練馬区の強盗も、同一の犯行グループと見られている
喉には「殺」の文字の入れ墨。短髪で金縁のサングラス姿のいかつい様子で、警視庁尾久警察署から9月30日に送検されたのは、坂井田翔太郎容疑者(31)だった。東京・埼玉で発生している連続強盗傷害事件で、9月28日未明に東京・練馬区大泉町の住宅に侵入し、住人で親子の男性2人を「金を出せ」と脅し、頭や腕に軽傷を負わせた事件。坂井田容疑者は「闇バイト」に応募し、自身が働く運送会社のトラックで実行犯を現場まで連れていき、さらに見張り役を担っていたとされている。指示役と実行犯に分かれていたことから「第二のルフィ強盗団」との見方もある。
青森出身の坂井田容疑者は、実は九重部屋所属の元力士だった。相撲協会のHPにもその名前があった。もっとも、最高位は前相撲のみで、番付には載っておらず、正確には力士とは言えない。2011年5月に初土俵を踏むものの、2か月後の7月が最終場所となっていた。
2011年3月の青森の地元紙「東奥日報」には、新弟子検査に臨んだ坂井田容疑者の記事が掲載されている。そこには、「(朝青龍の)豪快な技と闘志あふれる姿勢に憧れて、次第に大相撲の世界に飛び込んでみたい気持ちが強くなった」とのコメントも載っていた。
坂井田容疑者と同期で九重部屋に入門していたのは、元小結の千代大龍こ明月院(めいげついん)秀政氏だ。現在は都内で焼き肉店を営む明月院氏に話を聞いた。
「坂井田のことは覚えていますよ。私が大学を出て22歳、坂井田は高校を出て18歳で、同期入門の仲です。私は日体大相撲部でしたが、坂井田は相撲経験がなかった。会ったときもおどおどして、物静かでしたね。
入門当時、坂井田は未成年でしたが、俺に『タバコないですか』と聞いてきたので、俺のタバコをあげて、よく二人でトイレで吸っていました。それに、相撲教習所から部屋までは歩いて行かなくちゃいけませんが、俺が『タクシーに乗ろう』といって坂井田を乗せて、二人で部屋の近くまでタクシーで行っていました。2人でそんな悪さをちょっとしていたぐらいで、事件を起こすようなやつではなかったですよ。
ただ、初土俵で俺はけがをさせられて、1週間ほど入院しました。それで部屋に戻ったら、もう坂井田がいなくなっていたんです。詳しくは覚えていませんが、当時の部屋では、厳しく指導されていたので、耐えられなくなったのでしょう。なので、俺と一緒だった時期は1カ月足らずでしたね。
その翌年に俺が十両優勝したのです。そうしたら坂井田から、フェイスブックに連絡が来たんです。『十両優勝おめでとう』って。それで、『ありがとう』とだけ返信しました。それ以来連絡は取っていません」
明月院氏は、それから約10年の時を経て、“激変”した坂井田容疑者の様子を報道で知ることになる。
「今回の事件を聞いて、驚きましたよ。坂井田が送検される映像も見た。面影は若干ありましたが、当時はロン毛でへらへらしている感じだったので、こいつがそうかと聞かれたら、わからなかったかもしれません。それにしても喉に『殺』なんて入れ墨を入れていて、センスないと思いますね。坂井田が出てきたときには、一度会ってみたいですよ」
明月院氏は残念そうな様子でこう話すと、「じつは九重部屋の元力士で捕まったのは、坂井田で二人目なんですよ」と、ため息交じりにこぼした。2023年2月、九重部屋に所属していた元力士が大阪市で高齢者からだまし取ったキャッシュカードを使い、現金150万円を引き出した「出し子」役として逮捕されたのだ。
逮捕されていたのは三原仁容疑者(30)。相撲協会のHPによると、2013年に引退するまで「三原」のしこ名で九重部屋に所属していた(最高位は序二段四十九枚目)。九重部屋の関係者はこう話す。
「確かに三原が逮捕された件は知っていました。あの子は2010年から3年ほど部屋にいましたね。病気を患っていて、部屋には居辛かったかもしれませんね。しこ名が三原のままやめました。九重部屋に限らず、相撲部屋をやめていく子は何人もいます。辞めた後連絡を取り合っている子も多いですが、音信が途絶える子もいます。九重部屋から二人も逮捕者が出たことには、もうなんて言っていいやら、残念でなりません。何とか更生させたいですけどね」
連続強盗事件は、まだ逃走している犯人もおり、全員を逮捕することが先決。指示役が誰なのか、全貌が明らかになるにはまだ時間がかかりそうだ。