無罪が確定した男性と娘を殺害された母(画像は『Inside Edition 2019年7月31日公開YouTube「Mom Helps Get Release of Man Convicted in Teen’s Murder」』のサムネイル)

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23年前に起きた殺人事件で逮捕され20年間服役した男性に今年7月、無罪が確定した。男性の無実を証明するために奔走したのは、殺害された娘の母親だった。『Inside Edition』『Idaho Statesman』などが伝えた。

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1996年6月13日、米アイダホ州ボンネビル郡アイダホ・フォールズで、当時18歳だったアンジー・ドッジさん(Angie Dodge)が性的暴行を受け、何度も刺されたうえ首を切られて死亡した。

事件から約6か月後、現場に残されていたDNAが一致しないにもかかわらず、当時19歳だったクリストファー・タップさん(Christopher Tapp)が逮捕された。クリストファーさんは事実無根だと主張したが、警察は3週間で30時間以上に及ぶ取調べを行ったうえ、7回の嘘発見器(ポリグラフ)検査を実施。クリストファーさんは「殺人幇助をした」と嘘の自白をするまでに追い込まれた。

クリストファーさんは『Inside Edition』に「雪塊が斜面を転げ落ちてくるかのような行き場のない怖さを感じ、脅され、強制され、結局自分はその雪に潰されてしまったんだよ」と当時の精神状態を語っており、その後の裁判で終身刑を言い渡されたものの、無罪を主張し続けた。

クリストファーさんと裁判所で初めて顔を合わせたアンジーさんの母キャロルさんは、クリストファーさんを見るや否や「悪魔め!」と罵り、憎しみを募らせた。しかし警察の捜査には矛盾が多く、キャロルさんは心のどこかで「娘を殺したのは他にいるのではないか?」という疑念を持っていた。

2004年、娘の死により神経衰弱に陥った夫のジャックさんを亡くしたキャロルさんは、今まで自分の心の声を無視してきたことを反省し「真実を突き止めてみせる」と奮い立った。キャロルさんはまず、クリストファーさんの件ですでに動き始めていた冤罪証明を行う非営利活動機関「アイダホ・イノセンス・プロジェクト(Idaho Innocence Project)」に連絡を取った。

こうしてDNAについてのリサーチを重ね、研究機関に足を運ぶうちに、キャロルさんは「DNAが違うのに、クリストファーさんが犯人であるはずがない」と確信した。またクリストファーさんの弁護士ジョン・トーマス氏を訪ね、当時の取り調べや、嘘発見器検査の様子が収められた動画を見たことも転機となった。「吐き気がするほどの悪寒に襲われ、テレビを拳で殴りたくなりましたよ」と当時を振り返るキャロルさんは、クリストファーさんの無実を証明すべく行動を開始した。事件から13年が過ぎていた。

一方、当局ら関連機関も手をこまねいていたわけではなかった。100以上のDNAサンプルを採取し、ありとあらゆる方法で犯人を追ってきたが、DNAが一致する人物は20年を経ても見つからなかった。キャロルさんは“正義”を求めて警察にも立ち寄り、真犯人を早急に見つけだしてくれるよう懇願した。

そんな中、クリストファーさんに朗報が届いた。2017年3月22日、クリストファーさんは「アイダホ・イノセンス・プロジェクト」のサポートを受けて検察側と取引をしたことで、約20年の服役生活から解放されたのだ。しかし、釈放され性的暴行罪の容疑は取り下げられたものの、“殺人者”としての汚名を返上することはできず、クリストファーさんの表情が晴れることはなかった。彼のそばには、涙ぐむ実の母ベラさんとキャロルさんの姿があった。

アンジーさん殺害から23年後の今年5月、事件は急展開を迎えた。アイダホ・フォールズ警察が同州コードウェルに在住のブライアン・レイ・ドリップス(53歳)をアンジーさんの殺害の罪で逮捕したのだ。会見を開いた同警察署長のブライス・ジョンソン氏は、DNAが現場に残されていた型と一致したこと、ブライアンが性的暴行と殺人の容疑を認めたことを明かした。ブライアンは犯行当時、アンジーさんのアパートの斜め前に住んでおり、2人は顔見知りで警察は事件の数日後にブライアンに聞き取り調査をしていたが、犯人候補からは除外されていた。容疑者特定の決め手になったのは「遺伝子系図」と呼ばれるDNAプロフィールのデータベースで、警察はこれによりDNAが一致する親族を探し出し、犯人を絞り込んだ。

ブライアンは裁判で無罪を主張したが、クリストファーさんは7月中旬に全ての無罪が確定し、ベラさんとキャロルさんと抱き合った。

「息子ができましたよ」―そう語るキャロルさんを「私のチャンピオン」と呼ぶクリストファーさんは最後に、このように語った。

「娘の死に疑問を持ち、正義を追いかけて私のために立ち上がり、決して諦めなかったキャロルさんには感謝しきれません。事件から10年以上の間、キャロルさんは私に怒りと憎しみをぶつけてきました。でもその後、彼女は私の一番の理解者となり支えてくれたのです。もしキャロルさんがいなかったら、私は未だに刑務所の中にいたことでしょう。」

事件当時19歳だったクリストファーさんは今年、43歳になった。

画像は『Inside Edition 2019年7月31日公開YouTube「Mom Helps Get Release of Man Convicted in Teen’s Murder」』のサムネイル
(TechinsightJapan編集部 A.C.)