埼玉西武ライオンズオリックスバファローズの第3回戦は、3対1でライオンズが勝利した。

 ライオンズは2回、炭谷銀仁朗の内野ゴロの間に1点を先制すると、4回には秋山翔吾のタイムリー3ベースで1点を追加。投げては、先発の野上亮磨が再三再四ピンチを招くも、6回途中1失点。バファローズの得点を、アーロム・バルディリスの本塁打による1点に抑えた。


 試合は、ライオンズ渡辺久信、バファローズ岡田彰布両軍監督の握手から始まった。
 事の発端は、前日の乱闘騒ぎ。両軍は昨年も何度か衝突しているが、この試合でもバファローズの李大浩が守備の際、ライオンズのエステバン・ヘルマンが故意に接触したと訴え、一時両軍のベンチが空っぽになった。
 はたして両監督の握手で事なきを得、29日の試合でも改めて握手を交わしたのだが、ファンとしては肩透かしをくらった気分だ。
 乱闘騒ぎがあった28日の試合では、審判団からファンに何の説明も無く、試合が再開された。審判にはファンへの説明責任がある

 米メジャーリーグの不文律をまとめたジャーナリスト、ポール・ディクソンは、「たまの乱闘は、野球には必要な要素である」としている。
 プロ野球では日米問わず、屈強で、ともすれば好戦的な男たちが真っ向からぶつかり合う。ファンも、激しい戦いを期待してる。
 残念ながら、全ての試合で選手がその実力をいかんなく発揮し、ファンの期待に応えるのは難しいので、ガス抜きファンサービスの意味でも、乱闘は必要だ。

 また乱闘にもルールがある。「乱闘が始まったら、チーム全員がベンチを飛び出すこと」「バットの使用や、ごまかし、不意打ちは禁止」「困ったときは、ドックパイルをすること」などだ。
 ドックパイルとは、選手同士がなだれのように重なり合った状態で取っ組み合うこと。一見危険のようだが、実はこれが一番安全と言われている。
 だから、メジャーリーグでは選手も、ファンも、健全な乱闘を楽しんでいる。

 わが国でも、ライオンズが太平洋クラブライオンズを名乗っていた1974年、ロッテオリオンズ(現千葉ロッテマリーンズ)との乱闘騒ぎを1つの売り物にした。
 5月の試合では、球団の思惑以上にファンが興奮し、ライオンズの本拠地、平和台球場に機動隊が出動。警察庁が当時の井原宏コミッショナー事務局長らに厳重注意する事態になったが、この試合に先立ち福岡市と北九州市を走る電車に貼られた広告はなかなかの秀逸。ライオンズのドン・ビュフォードがオリオンズの金田正一当時監督を首投げにしているポスターで、キャッチコピーは「今日も博多に血の雨が降る!」だった。

 そのマリーンズも数年前、相手チームを挑発するユニークなポスターで話題になった。(個人的には、2005年の開幕戦で、誕生したばかりの東北楽天ゴールデンイーグルスをあおる文面、「楽天ファンの皆様へ、ビターな思い出を贈ります」「バッター全員、祝砲の用意は万全です」「あなた達があれこれ話題を作っていた頃、ボク達は黙々とカラダを作っていました」「パリーグの主役、3月までご苦労様でした」「地元ファンのためにも、初勝利はぜひ仙台でどうぞ」「ささやかですが、黒星をプレゼントさせていただきます」が気に行っている)

 あれこれ言っても、プロ野球はエンターテイメントだ。エンターテイメントには、客を満足させる演出が不可欠。本来なら、豪快なバッティング、火の出るような剛球、華麗な守備でファンを沸かして欲しいのだが、それが難しいのなら、乱闘もやむを得ず。選手や関係者が怪我をしない程度に、大いにやってくれ。

 ただ、28日のライオンズ対バファローズの第2回戦での乱闘は、実に消化不良。いつの間にか始まり、ファンに何の説明も無く終わり、気が付いたら渡辺、岡田両監督が握手を交わしていた。
 ファンとしては、茶番を見せつけられた気分だ。こんな乱闘なら、しない方がいい。