厚生労働省発表の速報値によると、今年の3月〜6月における生活保護の受給者が、4ヶ月連続で200万人を突破した。200万人といえば、過去最多を記録した戦後の混乱期(1951年の月平均)とほぼ同じ。昨今の不況と人口の増加を考慮したとしても、にわかには信じがたい数字だ。実は、その背景には若者世代の受給者の増加がある。

 大阪府在住のAさん(無職・29歳)は、派遣労働の作業中に膝を痛めて失業した後、貯金が底をついて生活保護を受けるようになった。働けないほどの病気も障害もないAさんの唯一の楽しみは、ケータイのゲーム。「有利に進めるためには、どうしてもお金を使わざるを得ないシステム」だそうで、このゲームに生活保護費から月に2万円程度使っているという。

 Aさんのように、生活保護費の多くをエンターテインメント費にかける人は少なくない。同じく受給者で、秋葉原に足しげく通うBさん(無職・35歳・東京都)は、月に2、3回メイド喫茶に立ち寄る。ほかにも、ミクシィ内のコミュで開かれるオフ会に参加することが生きがいのCさん(無職・30代・中国地方)は、生活必需品ではなく、「仲間との交流」のために生活保護費を使っている。

 彼らにその理由を聞くと、「サークルを組む仲間との交流が唯一の人とのコミュニケーションだから」(Aさん)、「メイド喫茶の“嫁”が唯一の話し相手だから」(Bさん)などという声が挙がった。

 確かに彼らの使う金額は、1ヵ月の家賃に相当するほど多い額ではない。だが、少額とはいえエンターテインメント費までも生活保護の給付金で賄(まかな)うことに違和感を覚える人もいるだろう。なぜ、そんなことが可能なのか。実は、長引くデフレにより、様々なモノを低価格で手に入れることが可能になっているからだ。関東在住のEさん(無職・30歳)は生活保護を受ける前から、「行く店はダイソー、シルク、ローソンストア100の3店くらいだった」と語る。京都府在住のFさん(36歳)も、「服はすべてサンキューマートの古着。夜はビデオ1で1週間150円のAVを借りて処理しています」とのこと。

 お金をかけずに暮らし、余った生活保護費を仲間との交流にあてる今どきの若年受給者たち。だが、その一見気楽なライフスタイルには「働かざるもの食うべからず」という批判が声が聞こえてきそうだ。

■取材/中野一気(中野エディット)

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