阪神の近未来像が見えてきた。敵地・名古屋で来季の戦略、補強面を話し合う大編成会議が招集されたことは本誌既報通りだが、全てが解決したわけではない。
 「川上憲伸、井川慶は継続調査せよ」−−日本人メジャーリーガーの動向について、今後も迅速に対応していくつもりだが、阪神は前例のない構想も温めていた。
 「ポスト金本をどうするか−−攻撃面の強化を話し合うと、必ずそこに辿り着きます。インディアンスの福留孝介は欲しい。しかし、狙っているのは彼だけではありません。松井です!」(トラ番記者)

 補強の大本命として挙げられているのが、松井秀喜外野手の獲得だという。
 松井はアスレチックスにウエーバー公示され、一時はトレード放出の可能性も高かった。打撃好調なベテランがこの時期、優勝争いを繰り広げるチームに一本釣りされるのは、メジャーリーグではよくあること。開幕当初は振るわなかったが、メルビン監督代行とウマが合ったのか、一気に打棒爆発。ア軍オーナー、ルイス・ウルフ氏は「最後まで居てくれ!」と訴えたほどだ。同オーナーは来季の残留交渉も進めつつあるが、ア軍が安住の地になるかどうかは、確証はない。

 仮に来季はア軍に残留できたとしても、そこから先はどうなるかわからない。また、本人の打撃が好調でも、今季のようにチームが優勝戦線から脱落すれば、放出要員にされてしまう。
 「阪神は松井がフリーになったとき、いの一番に駆けつける予定。その際に提示するつもりの条件が“兼任監督”です。今オフの残留契約もまだ正式に交わされていないので、年内に松井と接触することも考えられます」(チーム関係者)

 大型補強を続けてきた阪神にとって、兼任監督は最高の条件提示になる。どれだけ松井を欲しがっているかが伺える。
 「長期契約を提示するでしょう。『いくら金がかかってもいいから獲得すべし』の指令は出ているし、実際に調査もしています。松井のお父さんにも間接的に、話をしたようです。『松井なら兼任監督の後、永久監督を保障して、契約10年でもいい』という条件を言う人もいます。それほど阪神にとっては価値がある」(球団関係者)

 しかし、松井に近い関係者はこう首を傾げる。
 「監督がどうのというのは、松井が一番嫌いな話です。巨人を出るときも、将来の監督という約束手形が切られましたが、その話が出た時点で松井は巨人退団を決意しました。『監督がやりたくて現役を続けているのではない』というのが、彼のポリシーです」

 かといって、阪神サイドの誠意までは否定しないだろう。外部補強の際に指揮官の話まで出そうとしているのは、将来の監督候補として獲得した金本知憲の“黒い疑惑”が深く関係している。
 「金銭トラブルで金本の兼任監督の道は完全に消滅しました。トレードは捕り手がなく、本人は借金で現役を辞められない。むしろ、金本をどのように世間から冷たいと言われないように出すか、辞めさせるかで、フロント陣は頭を痛めています」(前出・球団関係者)

 真相が明らかにされるのはこれからだが、阪神が今オフに片づけなければならない難題は、この一件だけではない。
 「新井、藤川は残留の方向性こそ見えてきましたが、鳥谷とは慎重に話を進めなければなりません」(トラ番記者)

 鳥谷敬は'04年度ドラフト会議において『自由枠』で獲得した“幹部候補生”でもある。しかし、パ・リーグ在京球団はにわかにラブコールを送り始めた。
 「西武はメジャー志望の中島流出に備えなければなりませんし、千葉ロッテも本気ですよ」(ベテラン記者)

 西岡剛のメジャー流出後、千葉ロッテは外野手の荻野を遊撃手にコンバートさせたが、昨年痛めた右膝を再び悪化させ長期離脱。今は早坂など中堅クラスがその穴を埋めているが、不安が残る。
 「鳥谷の年俸は推定2億6000万円。阪神は残留させるなら、3億円程度を視野に入れなければなりませんが、球団としては総年俸を減らす方向にあり、微増に留まるでしょう。一方のロッテは選手会長だったサブローをまずは放出した。またベテランの渡辺俊介、小野晋吾をオフにトレード放出して“鳥谷資金”を捻出しようとしています」(前出・ベテラン記者)

 鳥谷を口説くには「3年10億円が必要」とされている。巨人に移籍した大村三郎の年俸は1億3000万円、渡辺は1億4000万円、小野は1億円(全て推定)。3人ともにいなくなるとすれば、年間3億円強は浮く。まして、千葉ロッテには鳥谷が尊敬する井口や元阪神の今岡もいる。交渉しやすい状況にあることは間違いない。