予めお断りしておきますが、本記事は完全に個人的な見方や願望を述べたもので、名前の出る多くの球界人を比較や批評の対象とするものではありません。


 WBCのような大会の代表監督には、必ずしもペナントレースで赫々たる実績を上げてきた人が嵌る訳ではない。
 明確な方針や展望に沿ったチーム作りをし、戦術面を吟味し掘り下げて臨むペナントレース並みの采配が求められるものではないと思うからだ。選手選抜において個性や好みは出るだろうが、それなりの選手たちが試合を作っていく中で投手交代やバントを含めて戦術的選択を迫られるのは1試合で2、3回ではなかろうか。それとて、参謀一人が付いていれば済む話。無論データマンは必要だが、野村元監督流の綿密なデータ分析野球はそぐわない。

 必要なのは、日本球界でトップクラスにある選手たちに伸び伸びと気持ちよくプレーさせ、ポテンシャルを最大限引き出せる状況に持っていく度量。太っ腹で、予断や偏見が少なく、鈍感なほど鷹揚で、プレーの質と結果を正しく評価できること。といってと言ううか、だからと言うべきか、ファーストネームで呼び捨てることで親分子分の一家意識を植え付ける感情的星野流は、やはり少し異なる。

 プレーを正しく評価すると同時に、それなりにプライドを持つ選手たちに「この監督が言うのだから」と納得させ、不満を最小限に抑えるには、やはり監督の選手時代の実績が必要となるのはやむを得ない。この点において短期的には、名選手必ずしも名監督ならずという実証済みの真理の例外とさせてもらうしかない。

 太っ腹で鈍いくらいに鷹揚と来て、さらに選手もアッと驚く勘と煙に巻く閃きを持ち合わせたカリスマとくれば長嶋茂雄氏をおいていないが、いまやそれは夢。
 青田昇、別当薫、西本幸雄、仰木彬、近藤貞雄、根本陸夫氏ら名将知将今は亡く、関根潤三、古葉竹織、上田利治、広岡達郎氏らは老いた。下って名球会会員を眺めると山崎、山田、梨田、東尾、伊東、若松、村田、衣笠、門田、古田氏ら一長一短。いずれも元投手の江夏氏、堀内氏、野茂氏らは個人的に面白いと思うが、自他共抵抗は少なくなかろう。
 高田繁氏は人格・識見とも現在の球界では抜けていると思うが、残念ながらお祭りの神輿に乗るタイプではない。厳しさが選手の緊張を呼ぶかもしれない。
 そして下馬評に上る山本浩二氏。選手としての実績も男気も常識もあるが、監督として過去の実績はともかく積極的に推す理由を思いつかない。
 落合博満氏。体調もあるし、本人も絶対にないと言っているが、中日監督時代の対WBCスタンスを考えてもありえないだろう。

 現役の監督(あるいはコーチ)には難しいというが、私の見るところOBには適任が見つからないのである。
 だからやはり現役監督の中に探してみる。用兵とチーム運営に一本筋が通り選手に求心力
を持つ小川ヤクルト、チャラ男集団をまとめる渡辺西武、目立ちたがり集団の手綱をしっかり引き締める秋山ソウトバンクの各監督を私は評価している。しかし冒頭記したように、ペナントレースとWBCは別物というのが私の考え方。となると?

 ではどうするの?消去法で無難な人に?

 奇を衒うんじゃないと言われるのを覚悟で私は、現役監督だがオリックスの岡田彰布監督を推したい。
 
 監督としての彼をネガティブに評すのは容易である。タイガースを優勝に導いたが日本シリーズでストレート負けした。13ゲーム差をジャイアンツに引っくり返された。去年は最終戦で負け1毛差でCS進出を逃した。つまり勝負弱い。そして今シーズンも大差の最下位。コーチや他人の言うことに耳を貸さない。失敗失策や結果を出せなかったことについて報道陣の前で歯に衣着せず嘆く、責める。