扇風機が3つだけ設置された避難所

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 7月28日に震度7の揺れが熊本を襲ってから数日。余震が収まらないなか、一部の住民たちは今も学校の体育館や防災センターでの避難生活を余儀なくされている。10年前の熊本地震の記憶がいまだ生々しい被災地で、避難所はどのような状況にあるのか。複数の避難所を訪ねた。

避難所に用意された大量の菓子パン、所狭しと段ボールが並べられた避難所の様子など

空調はなし、トイレはプールの水で流す

 避難所に指定されている鏡町小学校の体育館。鏡町は八代市の中でも特に被害が大きい地域だ。うだるような暑さのなか、被災者たちが身を寄せ合っていた。空調設備はなく、頼りは扇風機のみという状況。火曜日から体育館に身を寄せているという女性は環境への不満をこぼした。

「暑い、暑いですね、ここは。扇風機しかないから。だからちょこちょこ水分を飲んでいます」

 一人暮らしだという女性は、「揺れるたびにびくっとしていたけど、皆さんがいらっしゃるからやっぱり少し安心感はありますね」と避難所生活のメリットも口にする。だが、その表情はすぐに曇った。問題はトイレだ。

「トイレはプールにあります。でも子供用だから狭くて狭くて。まだ水が通っていないから、プールの水を使って流さないといけないんです。掃除用のバケツが10個くらいあって、利用者が自分たちで汲みます」

 断水が続く中での苦肉の策だが、しかもその作業には危険も伴っているという。

「あれ怖いですよ。プールの水位が下がっていて、かがまないと届かない。そのままドボンと落ちそうな感じで。ご高齢の方もいらっしゃいますしね」

 一部の避難所では過酷な環境が生まれている中、防衛省は約300台のクーラーを熊本県内の避難所に輸送している。小泉進次郎防衛相も自身のXで「熊本の皆さん、今日の14時頃にクーラー300台を載せた輸送機が航空自衛隊入間基地から熊本へ飛び立ちました」「先手先手で動きます」と投稿。しかし一方で、ニーズのミスマッチが生じている現場もある。

 宇城市の小野部田小学校 では、自衛隊によって多くのクーラーが搬入されたものの、肝心の電源がなく、機材は置かれたままとなっている。幸いこの施設は既存の空調が機能していたため、「別の必要な施設に回す」との話も出ているものの、避難所の環境改善は一刻を争う問題だ。

健康被害の恐れも

 避難生活が長引くにつれ、深刻さを増すのが健康への影響だ。避難所を巡回していた歯科医師の男性が語る。

「今日は1日何か所も回ってきましたが、食事はどこもパンばかりでした。8割方パンです」

 配給される食料は甘い菓子パンが中心だ。しかも水が少なく、歯ブラシもなく、うがいをする場所すらない。オーラルケアがままならない状況が続けば、命に関わる事態を招きかねないという。

「口の中が不潔になると、ばい菌が増殖して、それが唾液と一緒に肺に入り込んで肺炎を起こすんです。誤嚥性肺炎ですね。10年前の震災の時もかなりひどかった。関連死が一番多かったんです」

 10年前の教訓を踏まえ、歯科医師会などの団体は関連死をいかに減らすかに知恵を絞っている。今回、不幸中の幸いだったのは、発災が昼間だったことだ。

「夜中の地震だと、起きてすぐ逃げるため、入れ歯を置いたまま逃げてしまう年配の方もいます。今回は昼間に発生したので入れ歯を入れて出てきている方がほとんどで、『かろうじてものを食べられる』と答えていただきました」

人が大量に集まる弊害

 避難所に人が密集することが生む問題もある。宇城市の小川防災拠点センターで子供と避難生活を送る30代女性はこう明かす。

「ストレスはありますね。匂いが結構。みんなお風呂に入れないから」

 睡眠環境も過酷だ。硬い床に段ボールと毛布を敷くだけでは底つき感も強く、寝ている場所の横が通路となっていることもあってか、女性は「あまり眠れていない」と疲労の色を隠さなかった。

 衛生面の不安も根深い。「初日、2日目くらいはトイレに行った後、手も洗えず消毒もなかった。それがすごく怖かった」と女性は語る。子供は「臭いし、汚いし」とトイレを嫌がり、我慢してしまうそうだ。排泄を我慢することは膀胱炎のような健康被害にもつながりかねない。

 果たして10年前の経験は十分に活かされていると言えるのか。避難所には、今も苦しい生活を強いられる被災者たちが多数いる。事態の正確な把握と、早急な対応が求められている──。