記者会見する大津綾香氏(2日 東京都千代田区/弁護士JPニュース編集部)

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政治団体「みんなでつくる党」党首の大津綾香氏に対する名誉毀損事件に関し、警視庁は6月29日までに、政治団体「NHKから国民を守る党」(以下、N国党)設立者の立花孝志氏らを書類送検した。大津氏とその代理人である石森雄一郎弁護士が7月2日に都内で記者会見を開き、明らかにした。

大津氏は2024年9月、立花氏と動画制作者であるYouTuberの「中本店長」氏を名誉毀損罪の被疑事実で刑事告訴していた。

被疑事実は、2024年7月に行われた東京都知事選挙において、N国党の候補者に割り当てられた選挙ポスター掲示板の掲示枠に、大津氏の顔写真と共に「大津綾香 お金を返してください」と記載されたポスターを都内約2500か所以上に掲載したほか、同ポスターに虚偽の事実を性的表現を用いて描いたアニメーション動画へ誘導するQRコードを貼り付け、大津氏の名誉を毀損したというもの。

刑事告発から約1年10か月を経ての書類送検。なお、大津氏が告訴した2名に加え、当時N国党所属の参議院議員だった浜田聡氏も書類送検されている(被疑事実は立花氏と「中本店長」氏が「共同正犯」、浜田氏が「教唆犯」)。

民事では「人格攻撃」と認定

書類送検の対象となった立花氏らの行為は、2024年7月の東京都知事選挙期間中に行われた。ポスターには、大津氏が債権者から借りた資金を使い込んだかのような印象を与える「大津あやか、お金を返してください」との文言が記載されていた。

問題の選挙ポスターの画像を示す石森雄一郎弁護士(2日 東京都千代田区/弁護士JPニュース編集部)

さらに、ポスターに添付されたQRコードを読み込むと、「大津氏が政治資金パーティーでSMプレイを披露し、その模様を動画で公開した」とする、事実無根の内容のアニメーション動画に誘導される仕組みになっていた。

石森弁護士は、「このポスター掲示をめぐっては、すでに複数の民事訴訟において司法判断が下され決着がついている」と指摘する。

たとえば、東京高裁令和8年(2026年)6月24日判決においては、ポスターを掲示する行為自体が不法行為であると認定されており、単なる名誉毀損にとどまらず、人身攻撃、人格攻撃であり、ポスターを掲示すること自体が不法行為であると断じている。

なお、上記高裁判決については、上告理由が憲法違反や手続・内容上の重大な瑕疵に限定されており、かつ、上告受理申立ても判例違反等がある場合に限られるため、石森弁護士は「事実上、最高裁で覆る可能性は考えられず、確定する見込み」であるという。

「死んでしまおうかと思った」 被害者が語る2年間の苦悩

大津氏は告訴から書類送検に至るまでの約2年間を振り返った。

大津氏:「この事件はネットの一書き込みのような、単なる罰金刑で終わってしまうような性質のものではない。

選挙という民主主義の制度を悪用して莫大な公費をかけて設置されたポスター掲示板の枠を販売して、全くのデマであるということを知りながら虚偽の性的情報を拡散した、極めて悪質な事件だと思っている」

大津氏は、事件の背景に、大津氏が代表を務める「みんなでつくる党」の代表権をめぐり、N国党設立者の立花氏との対立があったと説明する。

大津氏:「立花氏は代表を交代する以前に、到底返済不能な総額13億円もの資金を借り入れて党の資金を使い切り、私が代表に就任した時点で党の預金は900万円しか残っていなかった。

立花氏がその残金も使い果たして党の資金をショートさせたにもかかわらず、その原因を私に押し付け、自身が行った業務上横領などの不正の追及を逃れる目的で、私に対し嫌がらせを続けてきた」

また、自身が被害に遭った時の心中を以下のように説明した。

大津氏:「あのポスター見たとき、父は涙を浮かべながら『剥がしてくる』と言った。私は『やめて、罪に問われるから』と止めるしかなかった。本当に胸が苦しかった。

都知事選の17日間がとても長く感じたし、一見普通そうに見える人々が続々とこの誹謗中傷ポスター貼りの活動に参加している様子を見て、もう本当に胸が苦しくて死んでしまおうかと思ったこともあった」

繰り返される誹謗中傷と失われた命

大津氏は、今回の事件は自身一人の問題ではないと強調し、下記の通り、同様の手法による被害が繰り返され、複数の命が失われてきたと訴えた。

【岩井清隆氏(「みんなでつくる党」ボランティアスタッフ)】
都知事選のポスタージャック問題に抗議するため署名活動を行っていたが、立花氏やN国党支持者の標的となり、職場への嫌がらせや個人情報の暴露、連日の誹謗中傷を受けて命を絶った。遺書には「私が死を選ばざるを得なかった最大の理由は立花孝志です」と記されていた。

【竹内英明氏(元兵庫県議会議員)】
兵庫県知事選挙に関連して立花氏やN国党支持者によりデマや誹謗中傷が大規模に拡散され、その中で自死した。

【高橋茉莉さん(2024年4月の衆議院東京15区補欠選挙で国民民主党の公認候補に内定後、公認を取り消された元候補)】
立花氏が性的デマや誹謗中傷の動画を公開したことで理不尽な攻撃を受け、その中で自死に至った。

大津氏:「SNSを盲信して自分で真実を確かめようとしない人たち、立花氏を隠れ蓑にして人を攻撃したい悪意のある人々を犬笛を吹いて扇動し、それを票とお金に変えてきたのが立花孝志氏だ。

このままではまた同じことが起き、誰かが死ぬかもしれない」

警察庁からの「横槍」? 捜査への根強い不信感

会見では、捜査の最終段階で不可解な動きがあったことも明らかにされた。

石森弁護士によると、当初、コンスタントに報告を受けていた麹町警察署の担当官からは、立花氏と「中本店長」氏、告訴対象外だった浜田氏の3名全員について「厳重処分」の意見を付して送検する予定だと説明を受けていた。

しかし、6月29日になって、担当官から「直前に警察庁から横槍が入り、立花氏と浜田氏については『相当処分』へ意見が変更されざるを得なかった」と伝えられたという。

なぜ麹町警察署を管轄する警視庁ではなく「警察庁」からかは不明とのこと。

石森弁護士:「『厳重処分』は警察として起訴を求める強い意思表示であるのに対し、『相当処分』は検察に判断を委ねるやや受け身の姿勢であり、一般的に起訴率は下がる」

さらに石森弁護士は、過去に自身が代理人を務めた別の事件でも、立花氏に対する刑事告訴が1年以上放置された末に、立花氏本人への取り調べすら行われずに不起訴になった経験も明かした。

大津氏も次のように述べ、捜査機関の姿勢に疑問を呈した。

大津氏:「私はこの経緯はかなり政治的なものと考えている。

この事件を2年放置したうえ、送致直前になって、処分意見を軽くするように求める動きがあったことは、本当に許せないことだと思っている」

問われる刑事司法制度の役割

大津氏は、今後の検察の判断が日本の民主主義のあり方を左右すると指摘し、刑事司法制度の役割を問うた。

大津氏:「この事件で検察がどのような判断を下すかは、日本の選挙、民主主義のあり方、そして法の支配そのものが問われる問題だと考えている。

すでに複数の命が失われており、今後の被害を防がなければならない。検察にもその意識を持って、厳正に対処してほしい」

また、石森弁護士は、立花氏が兵庫県知事選をめぐる竹内英明元県議に対する名誉毀損事件で起訴されている件に触れ、次のように訴えた。

石森弁護士:「この事件での立花氏の名誉毀損発言には、(竹内氏が「警察から事情聴取を受けた」「逮捕される予定だった」とする)県警本部に関する虚偽の内容も含まれていた。これは見ようによっては警察にケンカを売るものであり、だから起訴されたとの見方も成り立ちうる。

もし本件が不起訴になれば、兵庫県の事件で立花氏が起訴された理由は『捜査機関にケンカを売ったから』であり、『捜査機関にケンカを売らない限り、どれだけひどいことをやっても起訴されない』という誤ったメッセージになりかねない。

この件がどのように処分されるかは、(日本の刑事司法制度が適正に機能しているか、信頼に値するかの)大きな分水嶺になってもおかしくない事案ではないかと私は思っている」