在日米軍施設の横浜・根岸住宅地区が全面返還、市は医療・健康テーマに街づくり本格化へ
在日米軍施設の根岸住宅地区(横浜市中、南、磯子区)が30日、全面返還された。
東京ドーム約9個分に上る緑に囲まれた高台の43ヘクタールで、根岸森林公園(中区)にも隣接している特徴を生かし、市は医療・健康をテーマとした街づくりを本格化させる。地権者や経済界からは期待と注文の声が上がっている。(石塚柚奈、光尾豊)
「住宅街に文教機能も備われば多くの人が集まり、街の活性化が期待できる」。地権者らでつくる「米軍根岸住宅地区返還・まちづくり協議会」の会長はそう力を込める。
市が跡地開発のテーマに掲げているのは、「多世代が息づき、緑と文化の風かおるまち」。医療や健康を軸に市立大学の医学部などの誘致を核とする「センターゾーン」、高台の眺望を生かして質の高い住環境をつくる「住宅地等ゾーン」、公園を観光地としての魅力ある憩いの場とする「森林公園ゾーン」の三つの方向性を示している。
市民からは「生活利便施設の導入」「公園の駐車場増設」を希望する意見もある。市はこうした点も踏まえて土地利用の計画案を策定する。今年度末までに原状回復作業を終了させ、2028年度以降に区画整理事業を開始する方針だ。
同地区は国有地約6割、民有地約4割と混在しており、開発には地権者の理解が不可欠だ。周辺の駅からは約1キロ離れ、高低差も約50メートルある。会長は「交通の便が悪いと人は集まらない。そうした部分もしっかり考えてほしい」と注文。横浜商工会議所の幹部は「(開発には)費用が相当かかるため、事業者をいかに集めるかも大きな課題だ」と指摘した。
30日、防衛省南関東防衛局の鋤先幸浩局長から返還通知文書を受け取った山中竹春市長は「土地所有者や市民の期待をしっかりと受け止め、跡地利用の取り組みを加速したい」と語った。
米海軍13施設、日本が整備費総額636億円超
根岸住宅地区は1947年に米軍に接収され、軍人らが暮らす住宅などがあった。日米合同委員会は2004年、池子住宅地区(横浜市金沢区、神奈川県逗子市)のうち、横浜市域に新たな住宅を建設するという条件付きで返還に合意した。ただ、関係者は横須賀基地周辺に移り住み、15年には居住者が退去。18年には従来の合意を見直して住宅建設を取りやめ、独身下士官宿舎や消防署など米海軍が必要とする13施設の整備を決めた。日本側の負担で進められている。

防衛省によると、今年度までに計上した総予算額は歳出ベースで636億7900万円。主な内訳は横須賀基地の7階と8階建て独身下士官宿舎計3棟に275億円、浦郷倉庫地区(横須賀市)の桟橋に142億円、池子住宅地区の集会所や食堂などの複合施設や運動施設に196億円、鶴見貯油施設(横浜市)の消防署に22億円。同消防署は23年12月に完成した。
この合意に基づく返還は、池子住宅地区(横浜市域)の飛び地(約1ヘクタール)が残るのみとなった。市内全域では、飛び地を含め、神奈川区の横浜ノース・ドック、鶴見区の鶴見貯油施設、池子住宅地区(横浜市域)の3か所(計107ヘクタール)の在日米軍施設が残っている。

