「昭和を語り続ける老人でありたい…」武田鉄矢が明かした「若さの秘訣」と「老害上等の人生哲学」
65歳で新たなチャレンジ
「男はね、エロいものを見ないとダメですよ。この点に関しては、遠慮や恥じらいなんていらないと思うんです」
若さの秘訣は何か――喜寿を迎えた俳優の武田鉄矢(77)は、記者の問いかけにズバリそう答えた。今年5月20日には、『花咲けじいさん 人生後半の教科書』(双葉社刊)を発売。同書では、夫婦関係のもつれ、孤独の気配、物忘れや将来への心配など、武田と同世代の読者が抱える悩みに対し、独自の切り口の打開策を綴っている。
「自分の中にあるいやらしさや下品な欲望も、案外ものすごく深いところからきている。命の奥のほうから伝わってくる、一種の電波のようなものなんじゃないかと思うんです。それは、便も同じなんですよ。たまに自分の便を見ると、明らかに腸の形をしていることがある。便というだけあって、まさに“内臓からの便り”であり、“頼り”なんです。エロに対する欲望も、体の内側から出ているメッセージなんじゃないか。
その便りに耳を傾けないということは、自分の命を粗末にしていることにもつながるんじゃないかと思うんです。だから皆さんも、アダルトビデオを見るなり、写真集を存分に見るなりして、体からのメッセージをちゃんと受け取ってください!」
『海援隊』で一世を風靡し、俳優としてもドラマ『3年B組金八先生』(TBS系)や『101回目のプロポーズ』(フジテレビ系)などテレビ史に残る名作に出演。昭和から令和の芸能界を駆け抜けてきた武田が、喜寿という節目を迎えた今、自身の半生を振り返りながら、彼流の“老い”との向き合い方を語り尽くした。
「60代は、『若者になんて負けるもんか。おれを老人扱いするんじゃない』と思っていたんです。だけど、70代半ばを迎えてから、『60代は意地を張っていただけなんだ。おれはもうじいさんなんだ……』と強烈に思うようになったんです。仕事の現場で会うスタッフや故郷で再会した旧友など、同じ時代を同じ若さで共に生きた仲間と会うと、自分が人生のどのあたりを生きているか教えられます」
とはいえ、黙って老いるのは武田流ではない。65歳のときに、新たなチャレンジを始めていた。
「合気道です。ずっと習い事をやりたいと思っていたんですよ。というのも、私は“先生役“を演じることが多くて、いつも誰かに教えてばかりだった。でも、本当は誰かに新しいことを教わるほうが楽しいんです。
当時、夢中で著作を読んでいた文学者の内田樹さん(75)が合気道をやられていたので、内田さんが師事されている先生の道場に行くことにしました。この道場はスパルタで、年寄りのための特別コースなんてない。老若男女が入り乱れていて、中学生が相手になる日もある。若者を相手に、投げて投げられてを繰り返しています」
道場では意外なご縁にも恵まれた。
「生前、高倉健さん(享年83)が通われていたんです。僕が通い始めたとき、道場の方から『健さんに勧められたんですか?』と訊かれました。ただ、私が通い始めてしばらくしてから、健さんがお亡くなりになられて……不思議な縁を感じましたね」
1972年にフォークバンド『海援隊』でデビュー。芸歴50年を超える大ベテランだが、若い頃から今まで変わらない信念があるという。
「昭和の良さを教えてやろうか」
「ユニークでありたい、ということです。私がデビューした’70年代、地元の福岡には井上陽水(77)や『チューリップ』、『シーナ&ザ・ロケッツ』など、とてつもない才能をもった人たちがいた。唯一無二のことをやらないと、自分なんて彼らの才能に吹き飛ばされてしまう。だから、『ビートルズ』の『イエロー・サブマリン』という楽曲をコミックソング風にアレンジして歌ったりしていた。周囲からは“ダサいからやめろ”と言われていましたが、まともに『ビートルズ』を歌っても井上陽水に太刀打ちできないんです。
考えてみれば、映画『刑事物語』で演じたハンガーを武器に戦う刑事も、『101回目のプロポーズ』で演じた、意中の女の子に振り向いてもらうためにトラックの前に飛び出す主人公も、非常にユニークですよね。70代になってもユニークな老人でありたいと思っています」
武田はいまも現役。ラジオでの下ネタ発言でしばしば顰蹙(ひんしゅく)を買うなど、炎上上等のイメージがあるが、本人はどう捉えているのか。
「炎上というのは多勢に無勢。とてもこちらに勝ち目はありません。ただ、ネット上の意見に“言い返しはさせてもらう”という気持ちは常にあります。この前、ある番組のインタビューで若い人が『お前、昭和じゃん』という表現を使っていたんです。そのとき、すごく腹が立ちましてね。『お前、昭和を知っているのか』と思ったんです。
おじさんは戦後からずっと、昭和を生きてきたんだよ、と。君が軽々しく『昭和じゃん』と言うような時代じゃなかった。高倉健さんや美空ひばりさん(享年52)など錚々(そうそう)たるスターがいた。『昭和の良さを俺が教えてやろうか』と思っているくらいですよ。そうそう、昭和には素敵な女の子もたくさんいました(笑)」
老いてますます盛んな武田。インタビュー取材の終盤、「胸を張って人生100年時代を生きていく」と記者に言い切った。
「私は、昭和を語り続ける老人でありたいと思っています。“老害”と言われてもいい。自分が生きてきた時代の魅力は、誰にも否定されたくありませんから」
取材・文:富士山博鶴
