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高級車ではエンジンが好まれる

米国の規制緩和と、消費者の高級EVへの消極的な姿勢を背景に、V8エンジンが衝撃的な復活を遂げている。

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ステランティス、ロータス、メルセデス・ベンツなどがラインナップにV8エンジンを再導入しており、新興の中国自動車メーカーも初のV8モデル開発に取り組んでいる。一方、BMW、フォード、ゼネラルモーターズといったメーカーも、顧客ニーズに応えて新規開発に投資し、V8エンジン支持を表明している。


高級車のステータスとしてV8エンジンが再び脚光を浴びている。

V8エンジンはかつて、主に米国車において何世代にもわたり主流のパワートレインであった。現在は主流とは程遠いものの、あらゆる困難を乗り越え、EVの猛攻を生き延びてきた。

多くのEVは内燃機関特有の荒々しさや排出ガスは伴わずに、V8並みのパワーを容易に発揮できる。しかし、決定的なのは、多くの購入者が愛してやまない「個性」が欠けている点だ。

ロータスのCEOであるフェン・チンフェン氏は、「高級車セグメントでは、お客様は単にパワフルな大排気量エンジン搭載車を運転するスリルを楽しんでいるのです。彼らは、どういうわけかEVの滑らかさを好まないのです」と語った。

ロータスも新型スーパーカーに搭載

ロータスは、親会社である中国の巨大企業ジーリー(吉利汽車)の経営資源を活用している。ジーリーは、エンジンメーカーのホース・パワートレイン(Horse)社の株式を一部保有しており、V8およびV6エンジンへの投資を行っている。

フェン氏によると、このエンジンはロータスの新型スーパーカーに搭載されるほか、吉利傘下のオフロード車にも採用される予定だ。また、Lynk&Coの「M5キラー」と呼ばれるモデルへの搭載も示唆されている。


ロータスの新型スーパーカーの予告画像    ロータス

ホース・パワートレイン製のV8エンジンは、これまでBMWやメルセデス・ベンツに依存していた中小メーカー(ランドローバーやアストン マーティンなど)にとって、新しい選択肢となり得る。

一方、ステランティスではアントニオ・フィローザ新CEOの下、ラムのピックアップトラック向けにヘミV8エンジンを復活させたことで、米国での販売が伸びている。

前CEOのカルロス・タバレス氏は、厳しい環境規制を見越して低排出ガスの直列6気筒エンジン「ハリケーン」を採用し、ヘミを廃止したが、一部のピックアップトラック購入者からは不評だった。フィローザ氏によると、第1四半期のラムへの受注のうち、ヘミが占める割合は40%に達したという。

ステランティスのV8再導入は合理的

「ヘミV8エンジンの販売を加速させ続けることは、販売台数にとっても、製品構成にとっても、そして何よりも利益にとって非常に良いことです」と、フィローザ氏は同社の第1四半期決算説明会で語った。ステランティスは、V8エンジンを中核に据え、高性能のSRTシリーズにより米国市場でのマッスルカー販売を強化したい考えだ。この決定は、当然の流れだった。

「ヘミV8エンジンの復活は大きな注目を集め、ハリケーン・ツインターボ直列6気筒エンジンの採用を強いられたことに不満を抱いていたお客様やディーラーの声に、ステランティスが耳を傾けているという明確なメッセージとなりました」と、調査会社バーンスタインのアナリストであるスティーブン・ライトマン氏は述べている。


ヘミ・ランブルビー

V8エンジンの復活は、自動車メーカーに課されていた排出ガス規制を撤廃し、CO2排出目標未達成に対する罰則を廃止するというドナルド・トランプ米大統領の決定に端を発している。

「ステランティスは、ヘミV8のカーボンフットプリント(二酸化炭素排出量)を相殺するために温室効果ガスクレジット(排出権)を購入する必要がなくなりました。ヘミの復活は採算が合うのです」とライトマン氏は言う。

イラン情勢による燃料価格の高騰が続く中、ハリケーンエンジン搭載モデルより40%高く、プラグインハイブリッド車(PHEV)の3倍にも上る燃料費に、購入者が躊躇するのではないかという指摘も挙がったが、フィローザ氏はこれを退け、「米国では、欧州に比べて原油価格の圧力が低い」と述べた。

電動化から方針転換の欧州ブランド

長い間、高級車に限定されていた欧州のV8エンジンは、CO2排出規制への対応として電動化モデルに取って代わられ、衰退の一途をたどっていた。しかし、高級車ブランドは世界中に顧客を抱えており、高級車市場における顧客の電動化への消極的な姿勢と、米国におけるV8エンジンの規制緩和が相まって、V8復活の決断が後押しされた形だ。

例えば、メルセデス・ベンツの高性能車部門であるAMGは、680psという高出力を誇りながらもC 63の4気筒PHEVへの反響が今ひとつだったことを受け、V8エンジンを復活させた。より滑らかで排出ガスの少ない新型V8エンジンが、GLEやGLSを含む一連の新モデルに搭載される予定だ。他の欧州高級車ブランドと同様、メルセデス・ベンツも中国でのシェア低下に伴って米国市場への依存度を高めており、そのためには上位モデルにV8エンジンをラインナップする必要がある。


メルセデス・ベンツSクラス

BMWの元CEOであるオリバー・ツィプセ氏は、今年の北京モーターショーでV8モデル群を強調し、中国の競合他社に見られる「モノカルチャー」に対するBMWの強みとして打ち出していた。

「あらゆるパワートレインをご覧いただけます。V8エンジン、ノイエ・クラッセ、EV、小型車、新型7シリーズ、そして水素への取り組み。プレミアムブランドが持つ全容をご覧いただけると思います」とツィプセ氏は語っていた。

中国メーカーも導入に意欲的

しかし、中国メーカーもV8エンジンに力を入れつつある。ジーリーだけでなく、長城汽車(GWM)も今年のテクノロジー見本市CESで4.0Lターボチャージャー付きV8エンジンを披露した。長城汽車のオフロードブランド『タンク』のハイエンドモデルや、今後発売予定のスポーツカーに搭載される可能性が高い。

調査会社オートフォーキャスト・ソリューションズのグローバル車両予測責任者であるサム・フィオラニ氏は、AUTOCARに対し、「V8エンジンを所有することは、依然としてステータスの象徴です」と語った。


長城汽車が開発中の新型スーパーカーの予告画像    長城汽車

「北米以外では、V8エンジンはプレステージモデルの登場を意味し、そのモデルやブランドがラグジュアリー市場やエキゾチックカー市場に参入するという意向を示しています」

そこには政治的な側面もある。

「中国のメーカーにとって、米国人の好みに合うモデルを開発することは、ディーラーや立法者に対し、そうしたモデルの米国市場での販売を認めるよう圧力をかけることにつながります。それだけでうまくいく可能性は低いものの、中国車への注目を集めるためのより大きな計画の一環です」とフィオラニ氏は述べた。

中国メーカーが関心を寄せるもう1つの理由は、サーキットにある。

中国の自動車業界に特化したコンサルティング会社シノ・オート・インサイツの創業者トゥ・レ氏は、AUTOCARに対し、「中国メーカーはレース界への参入を目指しています。それが、彼らが次に追い求めている評価なのです」と語った。