私たちの食欲は、摂食中枢や満腹中枢によってコントロールされています。これらの中枢の働きには、体内の栄養状態や胃のふくらみの情報が深く関係していますが、実はそれだけではありません。「食欲をそそる」という言葉があるように、美味しそうなものを見たり、いいにおいを嗅いだり、味わったときに感じる、視覚・嗅覚・味覚の情報も摂食中枢の神経細胞を刺激します。反対に、見た目、におい、味が悪ければ食欲は失われます。

例えば、風邪をひくとにおいがわからなくなってしまうことがあります。このとき、食べ物の味が変わったり、わかりくく感じたことはないでしょうか。これは味覚が鈍くなったのではなく、嗅覚が弱まったせいです。私たちが料理を味わうとき、実は嗅覚の影響も大きく受けているのです。

また、鮮やかな色のきのこを「毒々しい」と感じることがあるように、見た目の印象も美味しさにかかわっています。どんなに好物の料理でも、もし色が水色だったら、食べたくなくなってしまう人も多いと思います。さらに、「以前に食べたことがあるか」、「毒のある食べ物に似ているか」などの視覚的記憶などに頼って、安全で栄養素が多い食べ物なのかを効率よく判断しています。

この他に、気分によって食欲が左右される場合もあります。その代表的なものがストレスです。ストレスが食欲に及ぼす影響は複雑です。ストレスがたまって不快な気分になっているとき、食欲が旺盛になってたくさん食べてしまう場合があるかと思えば、逆に食欲が湧かずに食べられないなど、食欲がコントロールできなくなる場合があります。

ストレスが蓄積すると、CRH(副腎皮質刺激ホルモン放出ホルモン)という物質が脳から放出されます。CRHは、自分にとって害のあるストレス状態に立ち向かえるように体を準備させるホルモンであり、食欲を湧かせる物質と減退させる物質の両方をつくる反応を起こしているといわれています。(監修:健康管理士一般指導員)