なぜ円安は止まらない?日銀政策金利1%がもたらす住宅ローン・預金・物価のリアル
OBSラジオ番組「加藤秀樹が語る、日本の未来構想」にて、構想日本の加藤秀樹代表が、日本銀行による「政策金利の1%引き上げ」とは一体何なのか、それは私たちの生活にどんな影響を与えるのかなどについて分かりやすく解説しました。
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30年ぶりの歴史的水準と利上げの背景
日銀の「金融政策決定会合」は、金融の基本を議論する重要な会議ですが、6月16日の会合で、これまで約0.75%だった政策金利を1%へと引き上げる(0.25ポイントの引き上げ)ことが決定されました。これは約30年ぶりとなる歴史的な水準です。
日本では1995年以降、景気刺激を目的として長らく「ゼロ金利政策」が続いてきました。とりわけ安倍政権下の「アベノミクス」では、デフレ脱却(2%のインフレ目標)を目指して2016年からマイナス金利が導入されました。今回はそれが大きく転換したという意味で「歴史的」なのです。
アベノミクスのデフレ脱却目標は達成されませんでしたが、その後のロシアのウクライナ侵攻による輸入物価の上昇や、アメリカのイランに対する攻撃に伴う石油価格の高騰などにより、インフレ率が急激に2~3%へと加速しました。今回の利上げは、こうした物価の過度な上昇を抑え込むための措置だと加藤氏は指摘しています。
日本人は30年間で「270兆円」の利子をもらい損ねた?
約30年間続いたゼロ金利政策の間に、日本人が失った利益はずいぶん大きいのです。
1995年(当時日本の預貯金約700~750兆円)から現在(2025年の預貯金約1100兆円)までの平均的な預金額を仮に900兆円、年利1%が付いていたと想定すると、日本人全体で約270兆円もの金利を受け取り損ねた計算になります。
これを全人口で割ると、1人あたり約220万円余り「損した」ことになります。この間、国や企業はゼロ金利でお金が借りられた反面、国民はずいぶん損をさせられたと言える数字です。
政策金利とは? 中央銀行の最大の役割は「物価の安定」
そもそも金利とは、お金を貸し借りする際の「お金の値段(貸し賃、借り賃)」とも言えます。政策金利は国内の基準となる金利であり、日銀は銀行間で日々行われる膨大なお金のやり取り(無担保コールなど)に介入し、この金利を調整しています。そして金利調整の最大の目的は、物価の安定なのです。
日銀法第1条には、日本銀行の最大の役割は「物価の安定を図ることを通じて国民経済の健全な発展に資すること」と定められています。
歴史を振り返ると、第一次世界大戦と第二次世界大戦の間のドイツでは、1か月で3万%以上のインフレが発生(パン1個が2千億マルクになるなど)し、暖炉の薪を買うよりお札を燃やしたほうが安いと言われるような異常事態に陥りました。
最近では、2018年のベネズエラでも13万%から100万%というハイパーインフレが起き、人々の生活が崩壊しています。
日本でも昨年、5キロで2000円台だったコメが4000円台に値上がりしました。これが仮に4万円になれば、生活そのものが成り立たなくなります。このため、過度なインフレを防ぎ、国民の生活を守ることが重要なのです。
住宅ローン上昇と預金金利の動向
利上げが私たちの生活に与える最も直接的な影響は「ローン」です。現在、日本人が組んでいる約400兆円のローンのうち、6割を住宅ローンが占めています。
住宅ローンには固定金利と変動金利がありますが、変動金利の場合は金利上昇の影響を直接受けます。例えば、3500万円を35年ローンで組んでいるケースを考えると、金利が0.4%から1%に上がったと仮定すると、毎月の返済額は9万円弱から10万円弱へと約1万円増加します。
一方で、預金金利や融資金利にも変化が現れ始めています。8月の初めから各銀行が預金金利を0.3%から0.4%に引き上げる動きを見せており、預金者にとってはわずかに利子が増えるメリットもあります。
なぜ円安は止まらないのか?
日銀が今回の利上げで狙っていた効果の一つが「円高への転換」でした。日本の金利が上がることで円を買う動きが強まることが期待されていましたが、現実には為替は160円台で推移し、むしろ円安傾向が続くなど、期待された効果は今のところ表れていません。その理由として、加藤氏は以下の2点を挙げています。
1.欧米との圧倒的な金利差
欧米の金利は依然として2~3%台と高く、日本の金利が1%に上がった程度では、円買いへの大きなお金の移動には繋がっていないこと。
2.日本の財政に対する市場の懸念
金融市場は日本の財政状況を厳しく注視しています。食料費にかかる消費税の停止など「責任ある積極財政」が議論されていますが、市場はこれを「さらに財政赤字が増える動き」と捉えており、日本の財政に対する信頼度が低いこと。
政治家には景気アピールのために金利を低く保ちたいという思惑があり、アメリカでもトランプ大統領が、日銀にあたるFRB(連邦準備制度理事会)のパウエル前議長にしつこく利下げを迫ったように、日本でも政治と中央銀行の間には常にせめぎ合いが存在します。
加藤氏は、「歴史的な水準への変更ではあったものの、経済全体とくに円安是正については期待された効果は出ておらず、その点では物価安定には結びつかない。日銀は今後数か月、さらなる利上げを行うかどうか様子を見ていくことになるだろう」と分析しています。

