左から:プラントハンターの西畠清順氏、タマディック 代表取締役社長の森實敏彦氏、建築家の坂茂氏、豊田市長の太田稔彦氏

総合エンジニアリング企業のタマディックは、自動車事業部の新拠点となる「タマディック 豊田オフィス Mobius Park(モビアス パーク)」(愛知県豊田市、以下、Mobius Park)の開所式を6月2日に開催した。開所式では、タマディック 代表取締役社長の森實敏彦氏が「Mobius Park」の概要および「ウェルエンジニアライフ宣言」を発表すると共に、「Mobius Park」の設計を手掛けた建築家の坂茂氏、造園を担当したプラントハンターの西畠清順氏をゲストに迎えたトークセッションを実施した。また、開所式の後には、プレス向け内覧会が行われ、「M1−House」(事務棟)、「M2−Lab」(ワークショップ棟)、「Wellness−Wing」(健康棟)の3つの棟で構成される「Mobius Park」の施設が公開された。


「タマディック 豊田オフィス Mobius Park」の外観

「当社は設立以来、自動車、航空・宇宙、FA・ロボットなど様々な領域でエンジニアリングサービスを提供してきた。製造業の現場に深く入り込み、顧客の課題と向き合いながら、設計、開発、生産技術などを通じてモノづくりの発展に貢献してきた」と、タマディック 代表取締役社長の森實敏彦氏が挨拶。「近年は、健康経営の推進に力を注いでおり、2021年には建築家・坂茂氏が設計を手がけたタマディック名古屋ビルを竣工。日本で初めて駐日フィンランド大使に認定されたオフィスサウナ『LUOVA SAUNA』を設置した。このオフィスサウナは、社内交流やイノベーションの促進、健康増進などに大きな成果を生んでおり、5年間で事業規模が約1.5倍に成長すると共に、一人当たりの生産性は約24%向上。健康診断の数値も年々改善しており、2023年度は健康社員率が過去最高数値を達成した」と、これまでの健康経営の取り組みを紹介した。


タマディック 代表取締役社長の森實敏彦氏

「働く人が健康で前向きに挑戦でき、かつ自分の成長を実感できる環境は、単なる福利厚生ではなく、これからの企業成長に向けた基盤であると考えている。そして、こうした健康経営の考え方を反映し、さらに発展させたのが今回の新オフィス『Mobius Park』となる。新オフィスでは、“All for Well Engineer Life(すべては良いエンジニア人生のために)”をコンセプトに、ただ働きやすい環境ではなく、エンジニアが誇りをもって働き、仲間と共に成長できるオフィスを目指している」と、「Mobius Park」のコンセプトを発表。


「ウェルエンジニアライフ宣言」を発表したタマディック 代表取締役社長の森實敏彦氏(中央)と、豊田市長の太田稔彦氏(左)、愛知県副知事の古本伸一郎氏(右)

「このコンセプトを支える柱として、『Well−Engineering』、『Well−being』、『Well−team』の3つを掲げ、エンジニア人生を充実させるための環境・組織・文化を本気でつくっていく。これこそが、当社の成長戦略であり、創業からの大きな想いであると考えている。また、豊田市という日本のモノづくりを象徴する地に開所した『Mobius Park』を通じて、今まで以上に地域の顧客と深い関係を築き、よりスピーディにエンジニアの価値を提供していく」との考えを示した。そして、「Mobius Park」の開所にあたり、豊かなエンジニア人生と共に、モビリティ産業の発展と地域社会の活性化にさらに貢献していくという想いを込めて「ウェルエンジニアライフ宣言」を行った。


愛知県副知事の古本伸一郎氏

次に、来賓代表挨拶として、愛知県副知事の古本伸一郎氏が登壇。「愛知県では、県産材を利用した木質化の取り組みを推進している。木材は、光合成で取り込んだ二酸化炭素を内部に封じ込めているため、建築で使うことで二酸化炭素の放出を長期間防ぎ、脱炭素社会の実現に貢献できる。タマディックでは、木質免震構造のタマディック名古屋ビルで県産材を利用しているが、今回の『Mobius Park』の施設でも県産材が使われている。この新オフィスは、当県が木質化を進めるうえで、代表的な事例の一つになると思っている」と祝辞を述べた。


豊田市長の太田稔彦氏

続いて、豊田市長の太田稔彦氏が挨拶。「製造業に関わる企業の中で、今回のような『ウェルエンジニアライフ宣言』ができるところはあまりないと感じている。タマディックでは、製造業の現場をより良くしていくことに挑戦しており、『ウェルエンジニアシティ』という構想を持っていることも聞かせてもらった。この構想は豊田市のためだけでなく、もっと広域に展開されるものであり、そのモデルシティを豊田市が担っていく必要があると考えている。こうした視点を踏まえて、今回の新オフィス『Mobius Park』を地域の人々と一緒になって、積極的に活用していきたい」と、豊田市から地域全体へ「ウェルエンジニアライフ宣言」が広がっていくことに期待を寄せた。


トークセッションの様子

ここで、タマディック 代表取締役社長の森實氏、「Mobius Park」の設計を手掛けた建築家の坂氏、造園を担当したプラントハンターの西畠氏によるトークセッションが行われた。「Mobius Park」は、事務棟「M1−House」、ワークショップ棟「M2−Lab」、健康棟「Wellness−Wing」で構成され、それぞれが独立した施設でありながら、働く・学ぶ・交流する・整える・自然を感じるといった体験が一体となるように構成されている。


左から:プラントハンターの西畠清順氏、建築家の坂茂氏

設計のポイントについて坂氏は、「『Mobius Park』では、コミュニティに開いたタマディックの意識を建築で表現するために、3つの建物をコの字型に開いた配置にした。建物の構造は、ワークショップ棟の『M2−Lab』が鉄骨造、事務棟の『M1−House』は木造と鉄骨造を組み合わせたハイブリッド構造となっている。そして、健康棟の『Wellness−Wing』では、木造リングトラス構造という新しい設計に挑戦し、柱・梁を一体化したリング状の木造フレームを採用した。私は、サステナビリティという言葉がない時代から、材料を無駄にしたくないという想いで、木材を使った建築に積極的に取り組んできた。また、自然素材は、人間にとって非常に居心地のよい空間になると考えている。さらに今回は、『Wellness−Wing』を通じて、従業員の輪を作っていくという想いも込めて“木材の輪”を象徴的に使った」と、木造建築へのこだわりを語った。


健康棟の「Wellness−Wing」には、日本最大級となるオフィスサウナ「LUOVA SAUNA」が設置されているが、これについて森實氏は、「タマディック名古屋ビルにも設置されている『LUOVA SAUNA』は、駐日フィンランド大使認定のオフィスサウナ。短時間で汗を流すというよりも、長くゆっくり入っていられるようなサウナにしている。サウナの中でいろいろな人と交流して、健康になりながらコミュニケーションが取れる空間を目指した。西畠氏が造園を手がける庭園と一体化したテラスエリアも作る予定なので、ぜひ多くの従業員に活用してほしい」と、従業員の健康促進とコミュニケーション活性化に欠かせない存在なのだと強調した。


プラントハンターの西畠清順氏が造園を進めている中庭

西畠氏は、現在進めている造園のプランニングを紹介。「『Mobius Park』には広大な外構スペースがあるため、造園するにあたってはエリアに応じたゾーニングを考えた。まず、コの字型に配置された3つの建物を統合させる動線として、建物に寄り添うように枝垂れ桜の道をつくる。建物に囲まれた中庭は、太陽の光と建築の景色を楽しめるオープンスペースとし、中央にはシンボルツリーとして10本の吉野枝垂れ桜を配置する。そして、常緑樹の森をイメージした庭園ゾーンは、休みの場や集まりの場、仕事の場など何でもできるニュートラルな自然環境とする。今はまだ造園の途中だが、『Mobius Park』がこの地に根付いていくにつれて、どんどん緑が増え、いろいろな花が咲き、ここで働く人たちの思い出になる場所にしていきたいと考えている」と、緑あふれ桜が咲き誇る庭園の完成を楽しみにしてほしいとアピールした。

トークセッションの最後に坂氏は、「この建物はただの意匠ではなく、エンジニアとの共同開発だと思っている。その意味でエンジニアを活かす場所があってこそ、エンジニアリングの業界は成り立つと考えている。建築が中庸化されていく中で、しっかりとしたビジョンを持ったタマディックのオフィス作りは、今の日本が必要とする方向性だと感じる。ぜひ次のプロジェクトでも一緒に仕事をしたい」と、新たなオフィスの設計にも意欲を示していた。西畠氏は、「私が造園を手掛けている場所は、企業緑地であって企業緑地ではないと思っている。地域に開かれ、従業員の家族や地域住民も含めて様々な人が過ごせるこの庭園は、企業価値の向上や地方創生にもつながると感じている。今回のプロジェクトに参加できたことに感謝している」と、メッセージを送った。森實氏は、「『Mobius Park』の完成で、新しい会社の形が少しずつ見えてきた。今後は、エンジニアたちがこの建物をどう使っていくかが一番大切になる。『Mobius Park』をきっかけに、私たち自身も変わっていく姿を見せていきたい」と、これからのタマディックの取り組みにも期待してほしいと力を込めた。


M1−Houseのエントランス

開所式の後には、「Mobius Park」のプレス向け内覧会が行われ、「M1−House」、「M2−Lab」、「Wellness−Wing」の各施設が公開された。「M1−House」は、約250名が勤務するオフィスエリア。メインエントランスには象徴的な螺旋階段を配置し、ホールや大小会議室、さらに子どもと一緒に勤務できる床暖房付きエリアを設けている。空調は、中央熱源方式とコアンダ空調方式を導入。天井に沿って気流を吹き出し、天井高さの確保、送風動力の削減を実現した。


M1−Houseの「Flat Floor」

靴を脱いで過ごす「Flat Floor」は、木目のタイルと手前のタイルのラインがつながるように設計されている。床暖房を採用した「Mix Floor」は、家族での利用だけでなく、新たな発想を生み、チームワークを育むサードプレイスオフィスとなっている。


M1−Houseの設計エリア

フリーアドレスの設計エリアは、部門の要望に応じてすべてデュアルモニターに対応。また、部署ごとに希望を募り、ライト付きデスクを導入した部署もあるとのこと。コンセントの配線は、景観だけでなく労働安全衛生の観点からも、すべてむき出しにせず整理を行っている。最大100名が収容可能な大ホール「Mobius Hall」は、パーテーションによって3つの部屋に分割することが可能。パーテーションにはマグネットを貼り付けることができ、ホワイトボードとしても使用できる。2階と3階の連絡通路から、「M2−Lab」に移動することができる。この連絡通路は、庭園を一望できるスポットにもなっている。


M2−Lab

「M2−Lab」は、技術と人が交流するものづくりエリア。シャッター高は7mで、ガントリークレーンや電動リフトを配置し、重量物の搬入も可能。研修ルームも兼ね備え、誰もが自由に使える「ラボ」を目指した。1階の作業エリアは、横幅が13m、奥行きが21m、天井高は10m。完全フルフラットな床には、3m間隔でアンカーベースを埋め込んでおり、導入する産業機械をボルト締結して浮き上がりを防止する。

気軽に立ち寄り、仕事やコミュニケーションを取ったりできるスペースとして「Cross Deck」を設置。吹き抜け空間を利用して、解放感を味わえる場所を創出した。社長だけでなく、来客者との交流が広がる場となることを期待している。また、ラボの各部屋は、産業用ロボットのテストや組み立て加工、制御デバッグ、新人研修として使用し、それぞれの用途に合った設備が配置される。自動車事業部のみならず、社内各部署が使用することを想定している。


「Wing Hall」の木造リングトラス構造

「Wellness−Wing」は、国内最大級のオフィスサウナやオープンキッチン、フィットネスエリアなどを備えた健康棟。中核となる木造施設「Wing Hall」は、象徴的な梁と柱が一体となって大空間を作っている。庭側は一面ガラスになっており、庭園からの外光を取り込む。ホール内に設置されたオープンキッチンには、食洗器や製氷機、オーブンなど大規模なパーティーでも対応できる設備を導入。さらに、壁のスライドドアを開放すると大型LEDモニターを使用することができる。「Wing Hall」での懇親会やイベントを通じて、自然な交流やコミュニケーションが生まれる空間を目指した。


VOIMA Gym

フィットネスエリアには、長時間の座り業務が多く運動不足になりがちなエンジニアに向けて、健康づくりのためのパワーを養えるジム「VOIMA Gym」を完備。また、ジムやサウナの利用後などに、横になってリラックスできるエリア「CoQ」も用意している。


「LUOVA SAUNA」TAIVAS

そして、「Wellness−Wing」で最も注目を集めたのが、日本最大級のオフィスサウナ「LUOVA SAUNA」。施設内には、「TAIVAS」と「Pilivi」の2タイプのサウナを設置している。「TAIVAS」は、ガーデンに面した空を感じられる10名程度の利用を想定したサウナ。一方、「Pilivi」は、4名程度の利用を想定した小型サウナとなっている。なお、フィンランド語で「TAIVAS」は“天空”、「Pilivi」は“雲”を意味し、対をイメージしているという。


「LUOVA SAUNA」Piliviのサウナ室

サウナのベンチには奥行きを持たせ、ゆったり座れたり、楽に寝転ぶことができる。また、ストーブの上に水栓を配し、ボタンを押すことでロウリュすることも可能となっている。水風呂は、「TAIVAS」は石貼り仕上げ、「Pilivi」は左官塗りで仕上げており、それぞれ異なる水風呂を楽しむことができる。さらに今後、両方のサウナのテラスから西畠氏がデザインした庭園を眺めることができる「ととのいエリア」を設置する予定。

タマディック=https://www.tamadic.co.jp/