一軍に復帰して、野球選手としての幸せと厳しさを感じている話!!巨人、高梨雄平投手の連載日記【ナシさんのアリな話 鉄腕奪取】第26回
一軍復帰の前夜、ある「映画」を観て
思考をシンプルに整理できた!
『ラブすぽ』読者のみなさん、読売ジャイアンツの高梨雄平です。
一軍復帰から1カ月以上が経って、チームとしてもまだまだ上を目指してやれるという雰囲気で戦えていますが、今回のコラムでは僕が一軍のマウンドに戻って感じたことをお伝えしたいと思います。
リハビリを経て、一軍に戻ってくることができて、フィジカルも技術も、とにかく必死で食らいついているという話は前回書きましたが、プロ野球選手として、「メンタル」の部分にも変化があったなと感じています。
一軍に上がる前の日の夜、リビングに行ったら奥さんが横田慎太郎選手(元阪神)の映画『栄光のバックホーム』を観ていました。
たぶん、配信で人気もあって、ランキングも上位だから「ちょっと観てみよう」くらいの感じだったんだと思います。
それで、映画を観ている途中に電話が鳴って「明日から一軍だから甲子園に来てくれ」と言われたんですね。
前回のコラムでも書きましたが、想定より早い一軍復帰だったので、電話を切った直後は気持ち的にもちょっとフワフワしていたんです。
一軍に上がって、どういうマウンドにできるか、そこまでどうアプローチしていくか、みたいに自分の腹を決めるために思考の過程をいろいろ踏んでいたんですけど、そこから最後まで映画を観たら、「いや、まぁ、ちょっと野球を……『プロ野球生活』を楽しもうかな」って、良い意味でシンプルな思考に整った感覚があって。
今思えばですけど、良いタイミングで観ることができたなと、奥さんには感謝しています。
プロ野球選手として
一軍で投げられる幸せと感謝を感じている
それと、一軍に復帰して少し経ったころに弟と食事をする機会があったんですけど、「もうちょっと、家族で試合を観に行ったほうがいいね」という話をしていたらしいんです。
それまでプロの世界でずっと投げてきて、実家も近いんですけど、別に頻繁に観に来るようなことはなかったんですね。
「別に、テレビでも観られるし、いいか」って。
でも、去年僕が怪我をして投げられなくなって、「やっぱり、観られるうちにできるだけ観ておこう」って。
僕も弟には「来られるうちに来とけ」って伝えました(笑)。
両親もいつまで健康でいられるかはわからないし、プロ野球選手の僕だってこれから何があるかわからない。
僕が来てからの数年間でジャイアンツには若くて良い選手が増えたなっていう実感もありますしね。
この1年間で三軍、二軍、一軍と経験して、そこはより思うようになりました。
ただ、ちょっと不思議なのは、怪我をしてから、いわゆるベテランが若手に向けるような「もうちょっと、こうしたほうがいい」「こうやったら、もっと良くなるよ」みたいなある意味で達観したような感情……それはけっこう消えました。
むしろ彼らが持っている才能やポテンシャルに対して、「羨望」と言っていい感情が生まれることが増えて、僕自身もこれまでよりちょっとガツガツした感じが出てきている。
その感情はもっとコントロールしなきゃダメだなって思うんですけど……(笑)。
若手だけじゃなくて、僕より年上の選手……たとえば田中(将大)さんだったり、則本(昂大)さんだったりが今のジャイアンツにはいますけど、ああいう人たちを見ても「やっぱり、すげぇな……」って思います。
さすが、ドラフト1位、2位でプロに入ってくる人は違うなって。
特にフィジカル面ではすごく感じますね。
あの年齢で、あれだけ投げて、あれだけの出力を生める。
「自分は全然すごくない」という現実を突きつけられます(笑)。
もちろん僕自身、それをずっと自覚していて、その中で何がやれるかを工夫して、思考を巡らせることでプロの世界でやってきました。
だけど怪我をして投げられない期間があると、そうやって積み上げてきたものが一気に落ちるんです。
そこでまた、「あ、俺ってすごくないじゃん」って気づかされる(笑)。
でも、だからこそ面白い。 キツいですけど、面白いんです。
今は一度落ちたものを取り戻すのではなく、新しい積み上げを繰り返しながら、プロ野球選手として一軍で投げられる幸せと感謝を感じています。
まだまだシーズンは続きますが、読者のみなさんも応援よろしくお願いします!
