ブータンの小さな工房に島根の伝統技術 ペーパーレス時代「和紙の良さ伝われ」

ヒマラヤの小国ブータンに島根県浜田市の「石州和紙」の技術を使った紙工房がある。ブータン人職人が手作りし、独特の手触りで人気だ。日本とブータンの国交樹立40年の今年、現地の子どもに和紙を使った美術教育が予定されており、伝統工芸が両国関係の新たな一ページを紡いでいる。(共同通信ニューデリー支局=岩橋拓郎)
3月下旬、首都ティンプーの「ジュンシ手すき紙工房」を訪れると、20人ほどの職人が黙々と作業にいそしんでいた。樹木ミツマタの皮を煮て柔らかくし、繊維をほぐして粘液を混ぜる。木枠ですき、板に張り付けて乾燥させたら完成だ。
1日に約350枚作り、日本やインド、米国などに輸出するほか、ノートやランプといった紙製品に加工し工房の隣で販売している。ワンチュク国王が客人らに渡す贈り物を入れる袋にも使われている。
経営するカンドゥ・ツェワンさん(53)は「薄い紙が特に難しい」と話す。自身も約25年前、日本に渡り石州和紙の技術を学んだ。ブータンは仏教経典のための手すき紙を作っていたが、より薄く強い紙を求めて政府が日本側に協力を依頼。1986年から浜田市(旧三隅町)が職人を派遣したり、ブータンの研修員を受け入れたりする交流が始まった。
開始から40年。両国の国交樹立からも同じく40年を迎えた。研修員派遣で協力した国際協力機構(JICA)ブータン事務所の木全洋一郎所長は、この節目に和紙をブータンの児童・生徒への美術教育に活用することを発案した。
教えるのは青年海外協力隊員として現地に駐在する鈴木里奈さん(29)ら2人。工房でいくつもの紙を見比べながら「この素材に触れられるだけでも子どもたちの感受性を刺激できそう」と早くも手応えを感じていた。絵画や工作を検討しているという。
浜田市のロータリークラブから寄付された画材も使う予定で、木全さんは「ペーパーレスの流れで紙の需要が減っているが、和紙の良さを伝えるきっかけになれば」と期待している。




