心身ともにさまざまな変化が訪れる60代。「ひとり暮らしだからこそ、自分のコンディションは乱れる前に自分で整えるようにしています」と語るのは、現在60代で、著述家の中道あんさん。中道さんが日々の習慣でやめてよかったことと、心が整う「家での過ごし方」について教えてもらいました。

1:予定をつめ込む

以前の私は、予定をつめ込むことが「ちゃんとしている証拠」だと思っていました。タスクをこなせばこなすほど、自分に価値がある気がしていたのです。

けれど、それでは自分の機嫌が続きません。乱れの原因は、たいてい「やりすぎ」でした。

だから今は、1日にやることは1〜3つまでと決めています。1つできたら十分。3つできたら万々歳です。

そのため、東京から小1の孫娘が泊まりに来たときも、私は無理をしないことを心がけています。これが、私の母だったら、2世帯分のお弁当をつくってピクニックに連れて行っていたことでしょう。揚げ物に煮物、彩り豊かなおかずと大量のおにぎり。頭が下がります。

でも、私は私。できるのは、夕ごはんをつくることぐらい。だれかひとりががんばる幸せは続きません。そこにいる人たちみんなが、ごきげんになる方法を考えるようにしています。

いつも前日の夜に「明日やること」をざっくり考え、朝に3つまで決めています。やってみると、午前中は文章を書く、午後は人と関わる。合間に散歩をする、など余白を残しておくと、1日は思った以上にうまく回ることがわかりました。

乱れてから立て直すより、やりすぎない仕組みをつくっておく方が、ずっとラクだと感じています。

2:ものがあふれるクローゼット

クローゼットは、私の心の鏡です。人に見せる場所じゃないし、扉を閉めてしまえば見えることもない。けれど、自分しか見ない場所だからこそ、自分の内側を現わしているかのように思えます。

着ていない服、なんとなく取ってあるバッグ。ぎゅうぎゅうにつまっていると、なぜか心も重くなる。だから定期的に見直すようにしています。

クローゼットに使わないものがあると、体に老廃物をためているかのように感じてしまいます。反対に、ものがきちんと循環して空間が広く保たれ、風とおしがよい状態だと気分も軽く感じられるように。ごきげんは、ものの量の管理から始まる、と私は考えています。

また、私の場合、服やバッグはほとんど買わないので増えにくいのですが、本は月に数冊買うので、あっという間に棚からあふれ出してしまいます。なので、定期的にチェックして「もう、読み返すことはない」と思える本はすぐにフリマサイトへ。

部屋もそうですが、散らかってから片付けるのではなく、そもそも散らからない仕組みにしておく。乱れない環境が、乱れない心をつくるように思います。

3:「怒り」や「嫉妬」にエネルギーを使う

60代になって、自然と怒らなくなりました。ひとり暮らしだと、人との接触回数が減るからかもしれませんが、それでも人に対して「なんやねん」って思うことは正直あります。けれど「怒ってもしゃーない」と思えるようになったんです。

怒りは、自分のエネルギーを奪います。しかも、自分だって完璧じゃないし、思い違いもするし、誤解もする。そのため、「まあいいか」と流せることは流す、大ごとにしない、人間関係においては、「来る者選んで去る者追わず」がモットー。

人に対する期待を手放すことができれば、怒りや嫉妬などという心の乱れをコントロールできるようになる、と実感しています。

また、SNSで他人の暮らしを見て、心がざわつくのであれば、見ないのがいちばんかと思います。ためしに1週間ほどアプリをアンインストールしてみると、自分の人生になんら必要ないことに気づくことも。

心が整う「家での過ごし方」

家で過ごす時間は、お気に入りの映画やドラマをBGMのように流しています。

料理をつくっているときや、ごはんを食べているときなどは、1日の疲れが出る時間帯です。そんなときは、『マイ・インターン』や『プラダを着た悪魔』など、前向きな気持ちや自分を肯定する気持ちにさせてくれる映画を好んで、ながら聴きしています。

『初恋』や『恋愛適齢期』のような、心が静かに動く映画作品は、ソファにもたれかかりながらブログを書いているときの、BGM代わりに。「小さなときめきを、文章を書くときにそばに置いておきたいから」と言うと、かっこよすぎてしまいますが、たしかにその方が調子がいいように感じます。

●60代からのごきげんは、おだやかに「整える」

20代は子育てに追われ、40代はキャリアを模索し、50代は「自分らしさ」を探して走ってきました。ここまでがんばってきたからこそ、60代は、盛り上げるのではなく、整えることで機嫌よく過ごせると考えています。

たすより減らす。がんばるより、余白を残しておく。乱れる前に整えておく。ちょっとメンタルが落ちているときは、公園を散歩するか、お気に入りのカフェに行ってぼーっとするか。移動して気分を変えることが、すぐにできる私にとっての対処法です。