記事のポイント
ロードスキンはセフォラでの初登場から大ヒットし、既存顧客だけでなく他チャネルからの新規消費者も獲得した。
戦略的買収の従来のプレイブックにとらわれず、ブランドは投資タイミングと戦略的パートナーの活用で急成長できる可能性がある。
消費者は製品カテゴリよりブランドを軸に購買し、アクセシブル・ラグジュアリーやスキンケア×メイクの融合が今後の美容市場の主流になる。


9月、へイリー・ビーバーのスキンケアブランド「ロードスキン(Rhode Skin)」がセフォラ(Sephora)に華々しく登場し、業界の注目を集めている。

同ブランドは9月4日、米国およびカナダのセフォラ店舗とオンラインでデビューし、代替データ提供企業イピット(Yipit)によると、初めての2日間で推定1000万ドル(約13億円)の売上を記録したという。

同社はWebと店頭のレシートデータを分析しており、初日のセフォラ売上の35%に達するには、秒間約3アイテムが販売された計算になるとしている。

購入者の約60%は既存のセフォラのロイヤル顧客であったが、注目すべき40%はアルタ(Ulta)、ターゲット(Target)、およびロードスキンの自社D2Cサイトから消費を振り向けたという。セフォラの広報担当者は、取材時点でコメントに応じていなかった。

これらのデータや小売での急速な成功により、多くの業界専門家は、長期的に業界全体にどのような影響を与えるかに関心を寄せている。

ペパーダイン・グラジアディオ・ビジネススクール(Pepperdine Graziadio Business School)の教授であり、かつてプロアクティブ(Proactiv)やロレアル(L’Oréal)で役員を務めたキンバー・マデラッツォ氏は、「信じられないことに、業界はこれほど成功するセフォラでのローンチになるとは予想していなかった」と語る。「有名人やコミュニティ主導のブランドが、複数の流通レベルで成功できることを業界に示したメッセージだ」と述べた。

ロードスキンの小売での成功は、デジタルネイティブで設立から3年目のブランドにとって初めての経験であり、2025年5月にE.l.f.ビューティ(E.l.f. Beauty)による10億ドル(約1300億円)の買収を経て達成されたものだ

ビューティ買収の常識が変わる



この成功から読み取れる最大の示唆のひとつは、ブランドや戦略的投資家が将来の買収を考える際の思考に大きな変化が生まれていることだ。

マデラッツォ氏は、「かつては買収のプレイブックが存在していたが、今回の件でプレイブックはもう通用しないことがわかった」と語る。「むしろブランドは、自分たちの投資・買収の『タイミング』を見極めるべきだ」と述べた。

従来、多くのブランドは戦略的投資の前に、少なくともひとつの国際市場で成功を収め、収益性の高い小売チャネルを確立し、強力なD2Cプレゼンスとヒーロー商品群を揃えることをめざしていた。

しかし、ヘイリーのブランドはこのような成長を経なくても買収後に高いパフォーマンスを示した。むしろサポートなしで拡大しようとするとブランドの成長を阻害する可能性があったが、現在はE.l.f.ビューティの国際的な契約製造チェーンを活用できる環境にある。

マデラッツォ氏は、「戦略的パートナーは、コミュニティ主導のブランドを、ブランド単独では到達できなかった規模まで引き上げることができる」と語る。

プライベート・エクイティ会社メイン・ポスト・パートナーズ(Main Post Partners)のプリンシパルで、ミルクメイクアップ(Milk Makeup)やドクター・デニス・グロス(Dr. Dennis Gross)、トゥー・フェイスド(Too Faced)などへの投資家であるタラ・ハイランド氏は、ブランドと戦略的パートナーの関係も変化していると述べる。

ハイランド氏は「通常、企業価値がこれほど高い大規模買収では、流通やサプライチェーンでの即時シナジーがあると考えるのが一般的だ」と語る。「しかし今回、E.l.f.ビューティはプレステージ分野やD2C専用ブランドへの初参入だった」。

さらに、「これほどひとりのインフルエンサーに依存したブランドが買収されるのは稀で、インフルエンサーが公の場で失敗すればリスクが非常に大きくなる」とも述べている。

専門小売におけるカテゴリ編成の変化



マデラッツォ氏は「従来はスキンケア、カラーメイク、フレグランスはそれぞれ別セクションにするべきだと言われてきたが、最近はそれらのカテゴリが融合しはじめている」と語る。「消費者は縦割りで商品を買うのではなく、横断的に購入するようになっている」と述べた。

たとえば、ロードスキンのヒーロー商品はカラーメイク、リップ、スキンケアを含むが、セフォラは実店舗で最大のインパクトを出すため、同ブランドのラインをまとめて陳列した。他ブランドではスキンケア、カラーメイク、フレグランスが分かれている場合もある。

マデラッツォ氏は、これは製品よりもブランドを重視するZ世代の消費者の購買傾向であり、ロードスキンのローンチでその傾向が明確に表れていると考えている。この動きにより、専門美容小売店は商品カテゴリごとではなくブランドごとに陳列する可能性が高い。

アクセシブル・ラグジュアリーが新たなプレステージ



インフレや関税圧力が高い資金の厳しい未来において、ロードスキンは価格面で理想的な位置にいる。大手量販ブランドより高価だが、従来のプレステージブランドよりは安価で、ラネージュ(Laneige)やコダリー(Caudalie)といった競合ブランドも同様のポジションにいる。

マデラッツォ氏は「マスティッジ(mass-tige)は大衆向けにパッケージやフォーミュラを高めるが、ロードスキンはプレステージ品質をより手頃な価格で提供しており、価値が高い」と指摘する。

たとえば、同じ価格比較では、チーク、保湿ミスト、リップバームの順で、ロードスキンはレア・ビューティ(Rare Beauty)、サマー・フライデー(Summer Friday)、コサス(Kosas)よりそれぞれ2ドル(約260円)、14ドル(約1820円)、5ドル(約650円)安い。

「アクセシブル・ラグジュアリーは、消費者に『マスもプレステージもない、中間が存在する』と学習させる。これによりセフォラとアルタ間の小売ゲームが変わり、消費者にとっても大きな変化がある」と述べた。

若年層は軽やかで自然な色味のメイクを好む



ミントル(Mintel)の米国美容・パーソナルケア担当シニアアナリスト、ジョアン・リー氏は「最近のレポートでは、若年層は依然として頻繁にメイクを購入しており、常に新しい商品を試している」と語る。「彼らのメイク購入の最終目標は、もっとも自然で透明感のある仕上がりを得ることにある」。

これは、潤いのある輝く肌に頬や唇へ色をほんのり乗せる、ロードスキンの「グレーズド・ドーナツ美学」と合致する。

「カラーメイクはもはや、朝の欠点隠しだけのものではない。メイクは消費者のライフスタイルにシームレスに馴染み、紫外線防止やスキンケア成分による保湿などのボーナス効果も提供する必要がある」とリー氏は述べる。

さらにリー氏は「ロードスキンの真価は、スキンケアとメイクの融合をブランドストーリーとして明確に打ち出し、消費者が共感できるかたちで表現している点にある」と語る。「スキンケアとメイクの境界が曖昧になった世界を、消費者がどのように取り入れられるかを見せる非常にわかりやすい物語を伝えている」。

同様に、ハイランド氏は今後のカラーメイク市場は「日常使いの商品」、すなわちファンデーション、コンシーラー、チーク、ブロンザー、マスカラ、アイライナーが主流になると予測する。これはロードスキンのスキンファースト美学に沿うものであり、10年前の落ちにくいマットリップやキラキラアイシャドウパレット、リキッドライナーとは大きく異なる。

セフォラ内の市場シェアはロードスキン拡大で縮小



ロードスキンは、E.l.f.ビューティの国際的バリューサプライチェーンに支えられ、ほかのカテゴリへの迅速な拡大が見込まれる。

これは2010年代半ばのカイリー・コスメティクス(Kylie Cosmetics)の躍進に類似しており、同ブランドはパートナーのシード・ビューティ(Seed Beauty)のColourpopバリューサプライチェーンで拡大した。しかし、ロードスキンのファン層が受け入れる価格上限はまだ不明である。

リー氏は「非常に手頃な価格の商品を求める世代として知られるZ世代やミレニアル世代であっても、依然として大いに憧れを抱く美容消費者である」と述べる。「ロードスキンの成功により、彼らは自分たちの憧れに響くプレミアムブランドに支払う意欲がある」。

さらにハイランド氏は「これから、どれほどシェアを奪うかが見えてくる段階だ」と述べ、今後6カ月以内にセフォラ内のロードスキンの競合上位ブランドの売上にもシェイクアウトが起きると予測している。

[原文:5 ways Rhode’s instant success at Sephora is changing the wider beauty industry]

Lexy Lebsack(翻訳・編集:杉本結美)