食後、眠くてたまらない……それって「糖尿病予備軍」かも!? 専門医が高血糖の予兆や危険性を解説
・夕食を食べ終わると、体がだるくて何もする気になれずソファに横になってしまう
・夕方になると、イライラして集中力がなくなり、ついお菓子を口にしてしまう
・昼食後、眠くてだるくてたまらない

 このようなことを経験したことはありませんか? もしも一つでも当てはまれば、このまま放置してはいけません。すでに「高血糖症(糖尿病予備軍)」になっている可能性が!

 そう語るのは、AGE牧田クリニック院長で、『まんが 疲れの原因は糖が9割 健康診断ではみつからない不調の正体』の著者である糖尿病専門医・牧田善二先生です。そこで、牧田先生に、「高血糖症(糖尿病予備軍)」について伺いました。

(本記事は、『まんが 疲れの原因は糖が9割 健康診断ではみつからない不調の正体』より一部を抜粋し、再編集しています)

◆高血糖を放置することは、命を削ること! もっとも怖いのは糖尿病性腎症

 牧田先生によると、疲れの原因の9割が糖によるものだといいます。高血糖症は血液中にブドウ糖が増えた状態で、糖尿病を発症するリスクを高めるのです。

「それだけではありません。高血糖は、がんや心筋梗塞、脳卒中、認知症、肺炎、感染症など、死を招く病気の根本原因になっています。高血糖で怖いのは、糖尿病に罹患することで起こる三大合併症です。そのなかでもっとも怖いのが『糖尿病性腎症』です」

「腎臓には、老廃物や余分な水分をろ過して、尿として排出する大切な役割があります。また、体内の水分量や電解質濃度の調節をするほか、血圧を調節するホルモンや造血ホルモンを分泌しています」

◆透析患者の5年生存率は60%

「腎臓の機能が落ちると、老廃物が排出されず、タンパク質(とくにアルブミン)が尿に漏れてしまいます。

 そうなると、だるさや吐き気、むくみなどがあらわれます。さらに進行すると、人工血液透析が必要になります。透析患者は、毎年4万人増え、透析開始後、毎年10%の方が亡くなります(5年生存率60%)。

 透析は2日に1回、1回につき4時間ほどおこないます。それ以上間隔を空けると、毒素や水分が溜まって危険なのです」

◆まだある高血糖で引き起こされる合併症

 三大合併症のなかで、もっとも怖いのは糖尿病性腎症ですが、いちばん多い合併症が「糖尿病性神経障害」。これは、手や足のしびれ、痛み、感覚まひが起こる合併症です。

「感覚が鈍くなるため、靴ずれや足のけがに気づきにくく、細菌感染を招きやすくなります。それが壊疽(えそ)になると、切断せざるを得ません。内臓のはたらきを調整する自律神経が障害されれば、胃もたれ、便秘や下痢、立ちくらみがあらわれます」

 もうひとつの合併症が網膜の血管の障害『糖尿病網膜症』。成人の中途失明の原因の第2位を占めますのが、この合併症。

「糖尿病網膜症の怖いところは、かなり進行するまで自覚症状がないことです。『なんだか見えにくい』と感じた時には、すでにかなり悪化していることが多いのです」

◆高血糖も糖尿病も、食生活を変えれば改善できる

 高血糖状態が続いても、痛くもかゆくもありません。ただ、「だるい」とか「疲れた」といったよくある症状が出るだけです。だからこそ逆に怖い状態なのだと、牧田先生は警鐘を鳴らします。

「高血糖や糖尿病自体が人の命を奪うわけではありません。本当に怖いのは、高血糖や糖尿病を放置しておくことです。実際、約1000万人の糖尿病患者のうち、4人に1人は治療を受けていないというデータもあります。

 高血糖や2型糖尿病は、食生活を改善すれば必ず克服できます。2型糖尿病は、遺伝的体質もある程度は関係しますが、基本は生活習慣病。どれほどの糖尿病家系でも、正しい食生活をおこなえば、病気は回避できます」