韓国・尹大統領の“籠城作戦”を支援した「YouTuber親衛隊」の正体とは 「配信動機はカネ儲け」

昨年末の逮捕状請求から2週間を超えてなお、対峙を続けた韓国・尹錫悦(ユンソンニョル)大統領(64)と警察官部隊。前代未聞の籠城劇を可能にした背景には、「尹親衛隊」を名乗る保守系ユーチューバーたちの存在があった。
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韓国の独立捜査機関「高位公職者犯罪捜査庁」は尹氏に対する拘束令状のタイムリミットだった1月6日、期限延長を裁判所に申請。それを受け、大統領官邸前に集まった尹支持者からは歓声や「勝利」を宣言する声が上がったという。
「昨年末以降、官邸前には数千人の支持者が24時間体制で陣取り、尹氏を守る“人間の盾”となってきました。保守派の集会といえば、これまで高齢者が中心でしたが、今回は20代から40代の若年層の姿も目立つ異例の様相です」(民放キー局外信部デスク)
“戒厳令は正当”と主張する保守系ユーチューバー
尹氏支持の若者がにわかに増殖した理由を「コリア・レポート」編集長の辺真一氏がこう説明する。

「昨年12月に尹氏が宣布した戒厳令について、韓国の大手メディアは保守系も含め、“弾劾・逮捕はやむなし”と批判的な論調です。ところが“戒厳令は正当”“弾劾は無効だ”と真逆の主張を展開してきたのが、韓国の保守系ユーチューバーたち。それを見た一部の若者らが“オールドメディアの報道はおかしい”と声を上げ始めたのです」
番組内で「官邸前に集結して尹氏を守れ」とあおるユーチューバーも現れ、昨年の大みそかには40近い保守系YouTubeチャンネルが官邸前の様子をライブ配信。動員に拍車をかけたという。
元日には、集まった支持者に向け、「皆さんが苦労されている姿はYouTubeを通じてリアルタイムで見ている」と尹氏が手紙を通じて激励し、参加者が意気を上げる一幕もあった。
ユーチューバーを政府の要職に登用
辺氏が続ける。
「尹氏は新聞やテレビよりもYouTubeを毎日のように見ていることで知られます。大統領就任式にお気に入りのユーチューバーら約30人を招き、批判を浴びたことも。尹氏がそれほどまでにYouTubeに傾倒するキッカケとなったのが3年前の大統領選挙でした。『共に民主党』代表の李在明(イジェミョン)氏に競り勝ったものの、両者の得票率の差は1%を切る大接戦だった。勝敗を分けたのは20代男性の動向で、YouTubeの影響で多くが尹氏に投票したと分析されたのです」
その後、尹氏は自身を支援する保守系ユーチューバーを次々と政府の要職などに登用。これまでに次官級の国家公務員人材開発院長や雇用労働部長官、大統領府の国政企画秘書室・上級行政官などへの就任が報じられている。
配信動機は「カネ儲け」
そんな彼らの素性は、意外にも多士済々だ。
「尹大統領がよく視聴しているチャンネルの一つに『イ・ボンギュTV』があります。配信者の李鳳奎(イボンギュ)は時事評論家で、昨年11月に番組で“大統領権限である戒厳令を発動して国を正常に戻すべきだ”と呼びかけた。また『ソン・チャンギョンTV』の成昌慶(ソンチャンギョン)は韓国の国営放送局KBSの元社員ですが、同じく“戒厳令を発動すべし”と尹氏をけしかけた一人です」(辺氏)
他に「サラン第一教会」なるカルト宗教団体の指導者や元知事なども自身のYouTube番組で尹氏支持を打ち出しているという。
そして中には日本での講演経験がある者も。彼らの通訳を務めるなど、複数のユーチューバーと面識のある、ジャーナリストの宋允復氏がこう明かす。
「韓国内で“極右ユーチューバー”と評される彼らですが、実際に話してみると、思想信条からというより、保守層が求める言説を供給することで、スーパーチャット(投げ銭)や登録者増など収益へとつながる経済的恩恵を動機にしている者が少なくありません」
過激なユーチューバーが国政に影響を与える悪夢は、対岸の火事ではない。
「週刊新潮」2025年1月16日号 掲載