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ランジェリーブランドのアドアミー(Adore Me)は、スタートアップアクセラレーターを立ち上げ、独自のサプライチェーンデータや製造工程をサステナブルな活動の実験用として提供することで、気候テックの新興企業に対してアパレル業界への足がかりを与えようとしている。

アドアミーのサステナビリティアクセラレーター(Sustainability Accelerator)は6カ月から12カ月のパートナーシップからなり、新興企業のテクノロジーやサービスをアドアミーの運用に導入、テスト、統合する。新興企業は、同ブランド内部の仕組みにアクセスすることで、より広い市場に向けてケーススタディを構築し、製品を改善する作業の助けとなることができる。また、新興企業はアドアミーの親会社であるヴィクトリアズ・シークレット(Victoria’s Secret)と協業する可能性もある。一方、アドアミーは、商品がもたらす利益を得たり、その新興企業と長期的に協力し続けることもできる。

ほかのアクセラレーターとは異なり、新興企業に投資やファンドは約束されない。「実はこれらの企業が直面する障害は、自己資本や融資ではない。気候テックは非常に盛り上がっている分野であるため、企業が資金を受けるのは難しくない。パートナーシップや、けん引力、スケール、成功を示す能力こそが真の課題だ」と、戦略バイスプレジデントを務めるランジャン・ロイ氏は述べている。

新興企業5社からスタート



第1期に参加するのは、デジタルインフラから「スマート」素材まで、新興企業5社が含まれている。エバーダイ(EverDye)、カーボンファクト(Carbonfact)、コモンシェア(Commonshare)、ペンデュラム(Pendulum)、エポック(Epoch)だ。このアクセラレーターの立ち上げの一環として、アドアミーのパリ支社はサステナビリティのハブとなり、2つの専任の役職が置かれる。アドアミーは来年、新しい企業を受け入れるための申請プロセスを開発する予定だという。

アドアミーは2011年にD2Cサブスクリプション企業として創設され、2022年には約2億5000万ドル(約373億円)の収益をあげたが、その後、2023年1月にヴィクトリアズ・シークレットに買収された。この契約は、今後2年間の収益目標に基づき、契約一時金として4億ドル(約596億円)、契約締結後に8000万ドル(約119億円)から3億ドル(約447億円)を支払うというものだった。それ以来、アドアミーは商品ラインでウォルマート(Walmart)と提携してリーチを拡大し、前年比で売上が増加し、第2四半期にはヴィクトリアズ・シークレットの総売上増の4%を占めるに至った。

しかしその裏で、2019年には、ランジェリーブランドとしては初めてB-Corp(環境に配慮した企業の認定)を受けるなど、よりサステナビリティ指向の企業に変わるための全社的な取り組みが始まっている。ヴィクトリアズ・シークレットは、自社の野望を超えて、第4四半期の決算発表によると、この新たな買収を「テクノロジー主導の成長手段」とみている。

事業のクリーン化を推し進める



アクセラレーターは公式に発表されたばかりだが、ロイ氏はこれを新興企業とのパートナーシップの自然な進化であると表現した。同社は、このコンセプトを打ち出す前にも、カーボンファクト、コモンシェア、エバーダイを含めていくつかの企業と協業してきた。

アクセラレーターの新興企業は、「理想的な」規模、すなわち何千もの商品を抱えている企業でありながら、データの分断や無数のサプライチェーンを持つ巨大なレガシーブランドではない企業で、自社の製品とサービスをテストする機会を得ることになる。これらの新興企業は、ニーズや業務内容に応じて、ヴィクトリアズ・シークレットにおいて自社の仕事を実施できる可能性もあると、ロイ氏は述べている。

「我々はすでに、ヴィクトリアズ・シークレットのテクノロジーインフラの統合におけるペインポイントを熟知しているため、それについての助言を行える。これは、どのようなコンサルタントにもできないことだ」と、同氏は述べている。

将来的には、新しいシステムやレベニューシェアのようなインセンティブが導入される可能性もあると、ロイ氏は語る。しかし、最終的な目標は、ほかのアパレル企業がサプライチェーンを管理・追跡し、より気候変動に配慮した排出量を計算できるようなプロセスを推進することだ。全体として、この活動によってアドアミーがグリーンブランドやサステナブルブランドとして自社をマーケティングする必要なしに、事業のクリーン化を推し進められることになる。

「顧客に対して、当社のダイナミックなライフサイクルアセスメントについて伝えるわけではない。あまりおもしろい話ではない」と、ロイ氏は述べている。「しかし、実際に影響を与えるという点では、これは重要な部分であり、長期的に測定ができるということも同様に重要だ」。

共通のペインポイント



業界全体で見ると、サプライチェーンに重点を置く気候テック企業を後押しすることは、企業が自社の事業を評価しはじめていることと歩調を合わせることになる。新たな報告規制が導入される可能性があり、投資の圧力が増大するなかで、企業は排出量データを十分に把握する方法を探し求めている。

コンサルティング企業EYの調査によると、10社中8社がサプライチェーンの持続可能性を改善する方法を検討している。EYの米国消費者リーダーを務めるロクシュ・オーリ氏は、サプライチェーンはは企業の排出量の約90%、営業コストの少なくとも50%を占めているという。

しかし、包括的なデータが欠けているため、排出量に対する取り組みは多くの場合、困難に直面する。また、この活動は直接的なROI(投資回収)をもたらさないため、社内でもこの取り組みの正当化は困難な可能性があると、オーリ氏は述べている。この問題を解決する方法のひとつは、排出量に対する専門的な知識を持つ業者に委託することだ。

「誰もが、サプライチェーンをよりサステナブルで、機動的なものにしたいと望んでいる。しかし、どうしたらその変化を起こせるのかがまだわかっていないだけなのだ。自社の運営を迅速に転換するのは複雑な難問で、社内ですべてを行うことはできないため、パートナーが必要だ」と、オーリ氏は述べている。

新しいアイデアの実験



カーボンファクトは、企業の運営に組み入れることにより、各項目のカーボンフットプリントを示すのを支援するデータプラットフォームだ。共同創設者兼CEOのマルク・ローラン氏は、同社が提供する情報によって、デザイナーは、リサイクル可能な生地への変更など、排出量を減らすためにどのような変更が可能かを判断することができると語った。

カーボンファクトは、アドアミーが最初に協業した気候テック新興企業で、2022年初頭の時点でアクセラレーターの初期のブループリントとして役立った。カーボンファクトは、アドアミーと仕事をすることで、毎年何千もの商品を生産するブランドと協力できることを、ほかの潜在的クライアントに示すことができたとローラン氏は話した。アドアミーとの協力のなかで初期に開発したツールのひとつは、現在顧客の約80%が使用していると同氏は言う。

ローラン氏は、この共同作業は、100万ドル(約1億4900万円)の追加資金を受けるよりも価値があることだという。

同氏は、「このような起業精神を持っている企業が増えれば、市場に20憶ドル(約2980億円)の追加資本を投入するよりも多くのより優れた新興企業が誕生するだろう。我々にお金は必要ない。必要なのはアイデア、ペインポイント、そしてペインポイントを抱えながら、それを共有してソリューションを見いだすことを望んでいる見込み顧客だ」とも述べた。

アドアミーのロイ氏は、アドアミーにとっての利点は、必ずしも消費者向けの活動や大義名分のためのマーケティングに投資する必要なく持続可能な運営を実現する方法について、ほかのブランドに対する手本としての役割を果たせることだと語る。カーボンファクトとの協業の場合、アドアミーは、主要な3つの製造業者から排出量データをすべて入手し、システムに組み込むことができた。このインターフェイスは、デザイナーが2024年1月のコレクションで変更を加えるために役立った。このコレクションでは、製造に必要な排出量が12%削減された。

「プレスリリースやパートナーシップはいくらでもある。しかし、難しいのは結果を示すことだ。成長を試みている新興企業にとって、これは唯一のもっとも重要な通貨になる」と、ロイ氏は述べている。

[原文:Adore Me is opening up its operations to climate tech startups with a new accelerator]

Melissa Daniels(翻訳:ジェスコーポレーション、編集:戸田美子)
Image via Adore Me