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2022年に南條愛乃の卒業を経て、阿部寿世、上杉真央という2人を迎えてツインボーカリスト体制となった第3期fripSide。そんな彼らがこの秋から行ったライブハウスツアーのエクストラステージとなる東京公演が2023年1月8日、Zepp Haneda(TOKYO)にて開催された。すでに音源でその実力は明らかとなっていた新ボーカリストを迎え、fripSideのライブはどう進化を果たしたのか。多くの観客が、そしてシーンが注目するなかで行われた熱狂のステージの模様をレポートする。

TEXT BY 澄川龍一

PHOTOGRAPHY BY 中村ユタカ

ついにその真価を発揮した新生fripSide



2022年4月24日、Phase 2の終焉とともに幕を開けたfripSideのPhase 3。その後最初のシングル「dawn of infinity」と2枚のアルバム『double Decades』『infinite Resonance』をリリースしたのち、京都から始まる全国ツアー“fripSide phase3 concert tour -the Dawn of Resonance-”と、走り出しから1年経たずして、まさに“駆け抜けた”という言葉がぴったりな、精力的な2022年を過ごした。

その全国ツアーのエクストラステージともいえる本公演<fripSide phase3 concert tour -the Dawn of Resonance-“TOKYO SPECIAL”supported by animelo mix>は、そんな新生fripSide 2022年の集大成という位置づけである一方で、Phase 3の東京初お披露目にもなる。つまりはここでライブも含めたfripSide Phase 3の実態が改めて明らかになる、ともいえるだろう。例えば、阿部寿世&上杉真央という新ボーカリストの実力は?八木沼悟志が目指すfripSideの新たな形とは?など、いくつもの期待感が重層的に積み上がった状態で2022年を過ごし、この日を迎えたのだが、多くの観客も同様の期待感を持っているようで、パンパンに膨れ上がった1Fフロアの光景はその裏づけともいえるだろう。

会場が暗転してオープニングSEが流れるなか、バンドメンバー、そして阿部と上杉、八木沼がステージに登場。お馴染みのサウンドカードが鳴り響いたあと、阿部によって「dawn of infinity」のメロディが歌われる。ここまでは昨年までのツアーと同じ流れだ。しかし目の前に広がる光景、ステージ中央に立つ阿部と上杉の姿は、これまでとは明らかに違い、非常に堂々としたものだった。もちろん、昨年のツアーから会場規模や編成の違いなどはあるが、何より2人のボーカリストから発せられる声の力強さに驚かされる。全国10公演というロードが彼女たちを鍛え上げたことは間違いないが、改めて八木沼が惚れ込む才能というものがステージ上で存分に発揮された、という印象である。また、昨年までは八木沼のキーボードと大島信彦のギターという編成で、デジタルなサウンドが小さい会場で反響する音圧の気持ち良さがあったが、今回はドラムに八木一美、ベースにfripSideバンド新加入の山田潤一が加わったことで、八木のビートと八木沼のシンセのアンサンブルなど、サウンドのフックがより色濃く感じられる、本来のfripSideのライブ感になったことも新鮮だ。いずれにせよフレッシュさを持ちながら安定感というものがひしひしと感じられるオープニングとなった。





そして昨年のツアーでも感じられたことだが、ライブになると2人のボーカリストのコントラストがはっきりするのも面白い。彼女たちのチャームがあえて浮き彫りになるようなライブという場は、整えられたスタジオ音源では得られない体験があるということを記しておきたい。特に「Regeneration」の2コーラス目の冒頭、上杉のパワフルな歌唱にはハッとさせられる。一方でダンサーも加わった(これもこの公演から)「fermata〜Akkord:fortissimo〜-version 2022-」でも2コーラス目からギアが入ったかのように力強い歌唱を聴かせる阿部と、ライブならではのダイナミズムが彼女たちをよりか輝かせているように感じられた。





新ボーカリストを見せる新たな景色



八木沼による最初のMCを挟んでからは、キラキラとしたサウンドが続く。「trust in you -version 2022-」の第3期バージョンでキュートでポップな魅力をのぞかせたあとは、上杉がステージをあとにして、阿部のソロコーナーがスタート。のちのMCでも語っていたように、阿部のfripSide加入以前からの魅力である“笑顔”を振り撒きながら、得意のダンスを交えての歌唱、そして会場一面に輝く黄色いペンライト……という、これぞfripSideの新しい景色を見たという印象だ。何よりニコニコしながら高度なダンスを難なくこなす阿部の底知れぬポテンシャルをまざまざと見せつけられた格好で、それは一転して90年代R&Bテイストの「Flames」でも同様に、妖しげな低域を聴かせながらダンサーと共に息の合ったパフォーマンスを見せる。



その後は上杉が戻って「come to mind -version 2022-」を披露し、今度は上杉のソロコーナーへ。彼女の魅力といえばクールな佇まいから発せられる感情豊かなボーカル表現、いわば“説得力のある声”という印象だが、「Reach for the light」では冒頭から、最初の一音ですべてが決まったと感じさせるボーカルの説得力に満ちたパフォーマンスを見せる。これはのちのMCで八木沼が「尊敬する」と語ったように、Spoonでのデビューから10年もの間研鑽を重ねてきたからこそ出るものだろう。その一方で、“今はみんなを信じて”というフレーズでは客席に手を差し伸べて微笑むなど、このツアーでの成長というものも感じさせる。続く、八木沼が2002年に作ったという「transitory orbit -version 2022-」でも、若々しいメロディの中で彼女の様々なチャームを全部詰め込んだような、表情豊かな歌唱を楽しむことができた。



ライブも折り返しを過ぎたところで、上杉が「trusty snow -version 2022-」の美しいメロディを紡いだ瞬間、客席からため息のようなエモーションが漏れる。そこから「Insoluble Snow」とこの季節に合う、メロディアスなナンバーが続いた。そして同じく八木沼の鍵盤も美しい「Forget-me-not」へと流れていくこのブロックはfripSideの変わらないセンティメンタルな魅力を映し出していく。1コーラス目を阿部、2コーラス目を上杉が中心となったボーカルパートは、それぞれの個性が色濃く出た、こちらもライブならではの心地良さが溢れる仕上がりとなった。

新たな船出、その先に見据えるものとは



バンドインストを挟んで、ライブもいよいよ終盤戦。そこで突如鳴らされたのは、八木沼による「LEVEL5-judgelight- -version 2022-」の雷鳴のようなシンセリフだ。阿部と上杉も黒い衣装に着替えて、より攻撃的にシフトチェンジしていく。そこから間髪入れず「sister’s noise -version 2022-」のシンセが鳴らされると、会場の熱気は急上昇。万雷の拍手の中で、「今日の日のために特別な1曲を用意してきました」と八木沼が告げるとまたしても『とある科学の超電磁砲』から「final phase」が放たれる。東京公演のみのスペシャルな『超電磁砲』のリレーに、この日一番の熱狂を生み出すとともに、fripSideの鉄板を惜しげもなく披露するという、第3期お披露目という場面の中でも彼女たちの高い実力、またそのタフさというものを見せつける瞬間となった。そのまま短いMCを挟んで、よりタフなパフォーマンスを見せる「BLACKFOX -version 2022-」を披露し、クライマックスに向けてアグレッシブな楽曲を続けていく。そして最後には、そうしたこれまでのfripSideを吸収したうえで、最新の「infinite Resonance」で締め括るという、実に唸らされるセットリストとなった。過去のfripSideの楽曲とともにPhase 3が秘める可能性を様々な角度で見せながら最後にはこの20年の現在地を見せるという構成は単なるお披露目を超え、八木沼悟志が自信を持って今のfripSideを披露しているという、実にエキサイティングなステージで、それが実に印象的だった。



そうした本編のあとのアンコールでは、「magicaride -version 2022-」で再び会場を興奮のるつぼへと誘う。そしてこれまでツアーでは限定のアフタートークでのみ披露してきた「when chance strikes」、そして最後にはこれもまた現在のfripSideを象徴するロッキンな「Shape of Delight」で締め括る。アンコール、そしてこの日最後の曲ということもあって、阿部と上杉の2人はステージの端から端まで動き回りながら、拳を突き上げる観客との別れを惜しむように終始エネルギッシュなステージングを見せていた。

終わってみれば実に熱量の高いライブだったこの日、その熱のなか駆け抜けたという興奮が表情からも見られるボーカリスト2人に対して、八木沼はプロデューサーとして冷静な表情を取り戻しているのが印象的だった。締めの挨拶でも「今年もPhase 3頑張っていきたいなと思います」とシンプルに語って、続きを上杉に急遽任せる。そんな無茶振りにも上杉は「“まだ観たことのない景色をみんなで見に行きたい・2023”でございます!」と頼もしく応える。こうした光景もあらためて新鮮に感じるものがある。そして最後の最後には阿部が「“もう終わっちゃったんだ”って悲しいんですけど、これからたくさんお会いできる機会があると思うので、これからもfripSide Phase 3、応援よろしくお願いします!」と堂々と締めてステージを去った。



このツアー前から感じていた、新ボーカリストの進化が試される、あるいはfripSide Phase 3の実態を知るというテーマのもと見つめた今回のツアー。その結論は、改めて2人のボーカリストの底知れぬポテンシャルと、大いなる可能性を感じるものだったし、そんな2人がもたらしたfripSideの新たな景色というものは実に刺激的だった。すでに今夏には同じ編成でのライブハウスツアー“fripSide phase3 concert tour -the Dawn of Resonance-”が発表されているが、その前の6月にはnao、南條愛乃という歴代のボーカリストとの共演である”fripSide 20th Anniversary Festival 2023 -All Phases Assembled-”が待っている。20年という歴史を踏みながらもそこで今のfripSideは何を見せるのか。いずれにせよ、fripSideを信じること、その先には誰もが見たことのない輝ける未来が待っているに違いない。

fripSide phase3 concert tour-the Dawn of Resonance- “TOKYO SPECIAL” supported by animelo mix

2023年1月8日@Zepp Haneda TOKYO

<セットリスト>

M01. dawn of infinity

M02. Regeneration

M03. fermata〜Akkord:fortissimo〜-version 2022-

M04. trust in you -version 2022-

M05. with a smile(阿部寿世solo)

M06. Flames(阿部寿世solo)

M07. come to mind -version 2022-

M08. Reach for the light(上杉真央solo)

M09. transitory orbit -version 2022-(上杉真央solo)

M10. trusty snow -version 2022-

M11. Insoluble Snow

M12. Forget-me-not

〜BAND インスト〜

M13. LEVEL5-judgelight- -version 2022-

M14. sister’s noise -version 2022-

M15. final phase

M16. an Effect of Fate

M17. BLACKFOX -version 2022-

M18. infinite Resonance

―ENCORE―

EN1. magicaride -version 2022-

EN2. when chance strikes

EN3. Shape of Delight

●ライブ情報

fripSide phase3 concert tour -the Dawn of Resonance-

2023年07月15日(土)【香川】高松 Olive Hall

2023年07月16日(日)【大阪】GORILLA HALL OSAKA

2023年07月22日(土)【宮崎】LAZARUS(ラザロ)

2023年07月23日(日)【鹿児島】CAPARVO HALL

2023年07月29日(土)【広島】Reed

2023年07月30日(日)【鳥取】米子 AZTiC laughs

2023年08月05日(土)【石川】金沢 AZ

2023年08月06日(日)【福井】CHOP

2023年08月12日(土)【愛知】名古屋 DIAMOND HALL

2023年08月13日(日)【富山】MAIRO

2023年08月19日(土)【岩手】盛岡 Club Change WAVE

2023年08月20日(日)【青森】Quarter

時間:16:00(開場)/17:00(開演)*全会場

料金:6,600円(税込・ドリンク別)

fripSide FC先行

受付期間:2023年2月13日(月)12:00〜2023年2月19日(日)23:59



fripSide 20th Anniversary Festival 2023 -All Phases Assembled-

2023年6月17日(土)16:00(開場)17:00(開演)

会場:パシフィコ横浜国立大ホール

出演:八木沼悟志、nao、南條愛乃、上杉真央、阿部寿世

ゲスト:angela

前売料金:9,900円(税込、全席指定席)

fripSide FC先行受付

受付期間:2023年1月27日12:00〜2023年2月5日23:59まで

詳しくはオフィシャルサイトをチェック

※今後のチケット販売に関しては、決定次第公式サイトにて発表いたします。

●イベント情報

リスアニ!LIVE 2023

2023年1月27日(金)EXTRA STAGE

開場17:30/開演18:30 (予定)

2023年1月28日(土)SATURDAY STAGE

開場15:00/開演16:00(予定)

2023年1月29日(日)SUNDAY STAGE

開場14:00/開演15:00(予定)

会場

日本武道館

チケット(※すべて全席指定)

1月27日(金)EXTRA STAGE

¥6,200(税抜) / \6,820(税込)

1月28日(土)SATURDAY STAGE、1月29日(日)SUNDAY STAGE

¥9,300(税抜) / \10,230(税込)

fripSideは2023年1月29日(日)SUNDAY STAGEに出演!

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関連リンク



fripSide オフィシャルサイト

https://fripside.net/

fripSide オフィシャルサイト(レーベル公式)

https://nbcuni-music.com/fripside/

fripSide オフィシャルTwitter(八木沼悟志)

https://twitter.com/sat_fripSide

fripSide オフィシャルTwitter(上杉真央)

https://twitter.com/maouesugi

fripSide オフィシャルTwitter(阿部寿世)

https://twitter.com/hisayoabe

fripSide オフィシャルYouTub

https://www.youtube.com/channel/UCp8U4DpexC_DbOrQzjwc7Tw