どうせなら、気分良くリーガ優勝を祝いたい…/原ゆみこのマドリッド

写真拡大

「あれ、何か雰囲気が違う」そんな風に私が戸惑っていたのは月曜日、レアル・マドリーTVで前日スタジアム練習の生中継を見ていた時のことでした。いやあ、4月初旬のCL準々決勝マンチェスター・シティ戦1stレグ前にはアトレティコもエティハッドで足慣らしをしていて、雨混じりの中、追っかけ観戦に行った私もスタンドから見学できたんですけどね。その日に比べ、天気が良く、日も伸びて明るくったのはともかく、注意を引いたのはスタンドの各席にファンがチーム入場の際に振れるよう、旗らしきものが用意されていたこと。

まあ、確かに前回、マドリーがシティのホームを訪ねた2019-20シーズンのCL準々決勝2ndレグはコロナ流行による中断を挟んでの8月開催。しかも無観客試合だったため、2月の1stレグで1-2とサンティアゴ・ベルナベウで勝利した後、長々と待たされた上、2ndレグでも史上最多のCL優勝13回を誇る相手を2-1と勝って、総合スコア2-4で準決勝に進んだグアルディオラ監督のチームの勇姿をファンはTVでしか、見ることができなかったんですけどね。それだけに今回は応援にも気合が入っていると見えますが、はあ。

世が世なら、今週はCLマドリーダービーでワンダ・メトロポリターノもお隣さんを迎えるのに張り切って準備をしていたはずなのにと思うと、火曜のシティvsマドリー戦、水曜のリバプールvsビジャレアル戦、どちらも近所のバル(スペインの喫茶店兼バー)に足を運ぶしかないのが寂しかったりするんですが、まあ、それはそれ。とりあえず、まずは先週末の試合を振り返っていくことにしましょうか。

とはいえ、土曜にあったのはコパ・デル・レイ決勝だけなんですが、やっぱりベティスとバレンシアという、マドリッドとは縁のないチーム同士の対戦だったからですかね。キックオフ時間も午後10時と遅く、オープン放送なのをいいことにまったり自宅観戦していたんですが、前半10分には地元とあって、カルトゥーハに駆けつけたファンの数でも勝ったベティスが先手を取ることに。ええ、ベジェリンが右サイドから上げたクロスをボルハ・イグレシアスがヘッドで決めたんですが、そこはリーガで10位と、ヨーロッパの大会出場圏に届く見込みがほぼなく、今季の全てをこのコパ決勝に懸けていたボルダラス監督のチーム。

30分にはイライソからボールをもらい、1部デビューさせてくれた恩師を追って、今季は弟分のヘタフェから、バレンシアにレンタル移籍しているウーゴ・ドゥロが見事なvaselina(バセリーナ/ループシュート)で同点ゴールを入れてしまったから、ビックリしたの何のって。ただ、その後はGKママルダシュヴィリのparadon(パラドン/スーパーセーブ)などもあって、どちらも得点に至らず、試合は1-1のままで延長戦、そしてPK戦までもつれ込んだんですが、いやあ、本当に運命とは残酷です。

先攻のバレンシアがカルロス・ソレール、ラチッチ、ゲデスとGKクラウディオ・ブラボを破り、ベティスも負けじとウィリアム・ジョゼ、ホアキン、グアルダードと成功したため、これは長丁場になるかもしれないと懸念した私ですが、バレンシア4人目のキッカー、19才のムサが天高く蹴り上げてしまうことに。テジョにしっかり決められた後もキャプテンのガヤは気丈に責任を果たしたんですが、若干22才、延長戦途中でピッチに入った背番号33のカンテラーノ(ベティスBの選手)、ミランダが優勝を決めるPKを沈めているんですから、凄いじゃないですか。

ちなみにベティスのコパ優勝はクラブ史上3回目で、前回は2005年。今は跡形もないビセンテ・カルデロンでオサスナを破った決勝でもプレーした選手は40才の大ベテラン、ホアキンしかもういないんですが、実は当時、5才だったミランダもベティスファンの家族に連れられて、マドリッドまで応援に来ていたのだとか。そこから17年、久しくタイトルとは縁がなかったクラブだけに土曜の深夜から、セビージャはセマナ・サンタ(イースター週間)とフェリア・デ・アブリル(春祭り)の合間の週末、再び街中(というか、街の半分)がフィエスタに突入。

翌日もチームはオープンデッキバスに乗って市内を祝勝パレード、市役所や大聖堂を表敬訪問した後、最後はベニト・ビジャマリンで真夜中過ぎまでスタンドを埋めたファンと騒いでいたんですけどね。彼らにとって、何よりの朗報だったのは、カルデロンで優勝した時同様、今回はカルトゥーハとホームでの二晩、ピンク色のカポーテ(闘牛士のケープ)を広げて、ポーズを決めていたホアキンが、「Voy a seguir un año más en el Betis!/ボイ・ア・セギール・ウン・アーニョ・マス・エン・エル・ベティス(自分はベティスにもう1年いるよ)」と現役続行を宣言してくれたことかと。

え、これで無事、来季のEL出場権が確定したベティスとなれば、もうリーガでは手を抜いてくれるんじゃないかって?いやあ、丁度、彼らの次節は来週月曜のヘタフェ戦とあって、ラージョに続いて、現在15位で勝ち点35のもう1つの弟分も1部残留がほぼ確定できるんじゃないかと期待したんですけどね。そうは問屋が卸さないようで、ペジェクリーニ監督はベニト・ビジャマリンでの祝勝スピーチでも、「Hay que ganar al Getafe para intentar meternos en la Champions/アイ・ケ・ガナール・アル・ヘタフェ・パラ・インテンタール・メテールノス・エン・ラ・チャンピオンズ(CL出場圏に入れるようにヘタフェに勝たないといけない)」と全然、気を緩めている様子はなし

5位の彼らにとって、一番身近な標的が勝ち点差4の4位アトレティコであるため、ここで勢いに乗られても困るんですが、翌日曜、意外なところで援護射撃を受けることができたんです!というのもコパ決勝のため、リーガが止まった先週末、唯一、開催された21節の延期分試合で、ラージョがカンプ・ノウでバルサに勝ってくれたから。いやあ、早くも前半7分に大量の敵選手たちをかき分けて、抜け出したイシがスペースに送ったボールをアルバロ・ガルシアが受け、デストが前を塞ぐ前にシュート。GKテア・シュテーゲンを破って先制点を挙げた時にはまさか、最後まで守り切れるとは私も思っていなかったんですけどね。

それが最近、準々決勝フランフルト戦2ndレグで2-3と負けて、ELを敗退した後、ホームではカディスにも0-1と不覚を取っていた相手は、「no tuvimos la personalidad que teníamos que tener/ノー・トゥビモス・ラ・ペルソナリダッド・ケ・テニアモス・ケ・テネール(ウチは必要な個性を持っていなかった)」(チャビ監督)ようで、ハーフタイムまで一番、シュートを撃っていたのがジョルディ・アルバだったという情けない有り様。後半になると、イラオラ監督もセルジ・グラルディオラやトレホを入れて、追加点を狙う姿勢も見せたものの、まあ、そう簡単にはいきませんよね。

デンベレ、デパイ、ルーク・デ・ヨング、アダマと4人FW制で反撃してきたバルサに押されまくり、結局、ラージョもCL準々決勝マンチェスター・シティvsアトレティコ戦2ndレグでグアルディオラ監督も採用していた最終兵器、時間稼ぎに頼ることに。当然、そのツケは11分という超ロングロスタイムに反映され、うーん、カテナがバルサで孤軍奮闘していた17才、ガビをエリア内で突き倒した時にはドキリとさせられましたけどね。幸い、それもオフサイドでペナルティは取られず、そのまま、0-1で逃げ切って、木曜のエスパニョール戦に続きバルセロナでアウェイ2連勝。とうとう勝ち点40に到達したとなれば、もう残留は決まった?

いやあ、アスレティックでの現役時代は、「Yo aquí no había ganado nunca/ジョ・アキー・ノー・アビア・ガナードー・ヌンカ(私はここで勝ったことがなかった)」というイラオラ監督も「来季もラージョvsバルサ戦がある」と、試合後は相好を崩していたんですけどね。シーズン前半戦にはエスタディオ・バジェカスでファルカオが挙げた1点を守って勝利、そしてこの日はファルカオがベンチ観戦していても勝利と、弟分がバルサに連勝できるなんて、一体、誰が予想できたでしょう。そんなラージョには今週末、レアル・ソシエダをホームに迎える試合で是非ともまた勝って、今年になって、まだ一緒に白星を祝うことができなかったファンたちにも喜びを与えてほしいですよね。

その一方で、奇跡のremontada(レモンターダ/逆転優勝)の夢もいつしか雲散霧消。クラブ史上初のホーム3連敗で、「Hay que seguir y meternos en Champions como sea/アイ・ケ・セギール・イ・メテールノス・エン・チャンピオンズ・コモ・セア(とにかく前に進んで、何が何でもCL出場圏に入らないといけない)」(チャビ監督)と、とうとうどこぞのチームと同じ身分に。それどころか、勝ち点差2のアトレティコに2位の座を奪われる可能性も出てきたバルサだったんですが、これで土曜のエスパニョール戦でマドリーが引分け以上とすれば、もう上がり。ええ、日曜のマジョルカ戦で彼らが何もしても、宿敵が王座に着くのを防ぐことはできません。

いえ、月曜にエティハド・スタジアムで記者会見したアンチェロッティ監督は、「No estamos en lo que pueda pasar el sábado/ノー・エスタモス・エン・ロ・ケ・プエダ・パサール・エル・サバドー(土曜に起きることは考えていない)」と言っていましたけどね。いよいよCLも準決勝となると、それも当然ですが、優勝トロフィー授与式や祝賀行事の段取りも考えないといけないクラブスタッフはまた別の話。うーん、先に試合をしないといけませんから、まさか終了直後、ピッチに舞台を作ってなんて悠長なことはしていられないでしょうしね。来週水曜にはシティ戦2ndレグもあるため、ベティスのように連日連夜お祝い三昧とはいかないとは思いますが、私も心構えだけはしておかないと。

ちなみに火曜午後9時(日本時間翌午前4時)からのシティ戦1stレグについては、いえ、今回、マドリッドでお留守番となったのはマリアーノとヨビッチだけなんですけどね。リーガ前節オサスナ戦で右太もも痛めて交代したアラバ、そしてセビージャ戦で出場停止だった後、先週月曜に肉離れを起こしたカセミロの出場はほぼ絶望的のよう。相手もストーンズ、ウォーカーが負傷中、カンセロは出場停止とプレーできないメンバーはいるんですが、何せ、土曜のワトフォード戦ではガルビエル・ジェズスのpoker(ポケル/1試合4得点のこと)などで、5-1と大勝。リバプールと勝ち点差1を保って、プレミアリーグ首位をキープしているチームですからね。

だからといって、天下のマドリーがお隣りさんのように5-5-0なんて、prehistrico(プレイストリコ/先史時代的な)システムを使う訳はありませんし、今季からアウェイゴールルールはなくなったとはいえ、絶好調のベンゼマ、そしてビニシウス、ロドリゴといったところが得点してくれるんじゃないかと思いますが、さて。ただし、グアルディオラ監督が、「逆境でも手を挙げて、ここに自分がいると言える選手がいる。普通、0-3で負けているともなれば、ボールに触りたがらないものだが、彼らは違う」と褒めていたマドリーの最大の強みが発揮されるのは、PSG戦やチェルシー戦のように、やっぱり2ndレグになってからじゃないでしょうか。

え、それで先週末、アトレティコは何をしていたのかって?はい、何もしていません。というのも、0-0で引き分けたグラナダ戦の後、選手たちの疲労蓄積を原因に挙げていたシメオネ監督が金曜から、月曜夕方までお休みにしてしまったからで、うーん、その試合でトップチームデビューを果たした彼の三男、ジュリアーノはすでにRFEF2部(実質4部)昇格の決まったアトレティコBの試合でまたゴールを決めていたようですけどね。あまりに話題がないせいか、マルカもAS(大手スポーツ紙)もUEFAユースリーグ準決勝に初出場した、フェルナンド・トーレス監督率いるフベニルA(Bチームの1つ下のカテゴリー)を追って、ニヨンに記者を送っていましたが、ハビ・セラーノも応援に駆けつけながら、ザルツブルクに0-5で大敗しているようでは…。

ようやくセッション再開となった月曜のマハダオンダ(マドリッド近郊)の練習場では、負傷のリハビリをしていたヒメネスとエレーラがチームに合流していましたが、週末の試合はお隣さんが優勝を祝っているであろう最中にキックオフとなる土曜午後9時からのアスレティック戦。ラージョのおかげで2位との差が広がらなかったチャンスを利用できるといいのですが、ジョアン・フェリックスが今季絶望となったのも相まって、ここ5試合でたったの1得点。ゴール日照りが著しい彼らがまた躓いて、月曜にヘタフェの手も借りないといけなくなるかもと、ちょっと心配ではありますね。

【マドリッド通信員】 原ゆみこ

南米旅行に行きたくてスペイン語を始めたが、語学留学以来スペインにはまって渡西を繰り返す。遊学4回目ながらサッカーに目覚めたのは2002年のW杯からという新米ファン。ワイン、生ハム、チーズが大好きで近所のタパス・バルの常連。今はスペイン人親父とバルでレアル・マドリーを応援している。

7日間無料トライアル実施中!『ブンデスリーガLIVEアプリ』
>詳しくはこちら