あまり大きな夢は見ない方がいい…/原ゆみこのマドリッド

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「同じ勝ち点差12なのにねえ」そんな風に私が不思議がっていたのは月曜日、日曜のクラシコ(伝統の一戦、レアル・マドリーvsバルサ戦のこと)で大勝したバルサ勢から、「ウチはゴールアベレージで上回った。難しいのはわかっているが、リーガ優勝の望みは捨てない)」というチャビ監督を始め、「Si tenemos la mínima opción vamos a ir a por ella/シー・テネモス・ラ・ミニマ・イプシオン・バモス・ア・イル・ア・ポル・エジャ(最低限でもオプションがあれば、ウチは優勝を目指す)。相手が勝ち点を取りこぼした時に備えておかないと」(ブスケツ)といった妙に意気盛んなコメントを聞いた時のことでした。ええ、というのも前日、兄弟分ダービーに勝ち、バルサと並んで4位にいるアトレティコ勢に対してはまったく、逆転優勝に関する質問すら出なかったから。

いえ、確かにバルサにはまだスペイン・スーパーカップのせいで延期されたラージョ戦があるため、4月24日のコパ・デル・レイ決勝週末にその試合をプレーするまで、他より1つ、消化試合数が少ないんですけどね。それでもマドリッドの弟分はシーズン前半戦、エスタディオ・バジェカスでの対戦で1-0と彼らに勝利して、クーマン監督の解任を招いたチームですし、今度はカンプ・ノウだからといって、絶対、勝てる保証もないんですが、それを勘定に入れても勝ち点差は9。つまりマドリーが残り9試合のうち、3試合に負けてくれないことにはどうしようもないんですが、もしそんなことが起きたとすれば、返すがえすも悔やまれるのは、アトレティコが同じ理由で延期されていたレバンテ戦の前に目覚めなかったことなんですよ。

ええ、キャプテンのコケも「Hemos dado con la tecla, hemos subido la intensidad y la concentración/エモス・ダードー・コン・ラ・テクラ、ヘモス・スビード・ラ・インテンシダッド・イ・ラ・コンセントラシオン(ボクらは鍵を見つけて、プレーの強度と集中力を上げた)」と言っていたように、その最下位チームとの試合にワンダ・メトロポリターノで0-1と負けた後、マハダオンダ(マドリッド近郊)を訪れたヒル・マリン筆頭株主の檄により、心を入れ替えた彼らはそれからリーガ5連勝、更にマンチェスター・ユナイテッドとのCL16強対決も突破。そのタイミングがレバンテ戦の前であったなら、アトレティコこそ、今や首位と勝ち点差9になっていたはずなのに、覆水盆に返らずとはまさにこのこと?

まあ、そんなことを悔やんでいても仕方ないので、先週末のマドリッド勢のリーガ戦がどうだったか、お話ししていくことにすると、金曜にトップバッターを務めたヘタフェはサン・マメスで1-1のドロー。いやあ、丁度、GOL(ゴル/スポーツ専門のオープンチャンネル)で中継があったため、シャワーを浴びてから見ようと思った私が甘かったんですが、キックオフから10分程してTVをつけたところ、開始3分にジェネのクロスをエネス・ウナルがヘッドしてゴールに。弟分の先制シーンは見逃してしまったんですが、やはりそう簡単にはいきませんよね。29分にはウィリアムスのスルーパスから、ユリに同点弾を決められてしまい、後半に決まったオリベイラのゴールもオフサイドで認められず。

それどころか、サンセットがクエンカに倒されたプレーが最初はペナルティとされたのに、VAR(ビデオ審判)も入って、エリア前ギリギリのFKとなるわ、クエンカはレッドカードをもらうわと、1人減って、ヘタフェが不利になったことを考えると、「Hicimos 22 remates y lo normal así es ganar/イシモス・ベインテ・ドス・レマテス・イ・ロ・ノルマル・アシー・エス・ガナール(ウチはシュートを22本撃って、普通だったから勝っていたはず)」(マルセリーノ監督)だったのが、引分けで済んだのはむしろ、ラッキーだった?

とはいえ、これでヘタフェの白星なしは6試合連続になってしまいましたし、何せ、各国代表戦を挟んだ次のリーガ戦は4月2日、折りしも日曜にカディスに抜かれて降格圏の18位に落ちてしまったマジョルカをコリセウム・アルフォンソ・ペレスに迎えることになりますからね。一応、15位の彼らとは勝ち点3差があるとはいえ、じっくり練習できるこの2週間、まだW杯出場が決まっていないダミアン、オリベイラ(ウルグアイ)を筆頭に6人も選手が招集されているのは辛いところかと。もちろん、日本代表に参加するマジョルカの久保建英選手も疲れて帰って来るんでしょうが、いよいよ1部残留の戦いも佳境。ヘタフェも早く勝利の味を思い出せるといいのですが。

そして翌土曜は兄弟分ダービーを見にバジェカスに行った私だったんですが、シメオネ監督は先週火曜にオールド・トラフォードでユナイテッドを撃破したスタメンをリピート。対するラージョはこの日もブカネーロス(過激なファンのグループ)が入場時に持ち込み品押収に遭ったため、前半7分までゴール裏の応援席を空にしていたせいもあったんですかね。チャンスを作っていたのはアトレティコばかりだったんですが、得点までには至らず、ハーフタイムをスコアレスドローで迎えることに。これはゴールを見るのに時間がかかりそうだと思ったものですが、とんでもない。再開3分、まさかジョアン・フェリックスとのワンツーでボールをもらったコケがエリア内からシュート。それがカンテラーノ(アトレティコB出身の選手)の先輩、マリオ・スアレスの脚の間を通って、ゴールに入ってしまったから、ビックリしたの何のって。

結局、ファルカオが負傷で欠場しているラージョが最近、ゴール日照りに陥っているのも助けとなり、レイニウドのゴール前クリアやGKオブラクのセーブなどはあったものの、そのままアトレティコは0-1で勝利。いえ、後半40分には途中出場したコレアがファールを取られた後、主審に悪態をつき、レッドカードで退場というアクシデントもあったんですけどね。最後はヒメネス、サビッチ、レイニウドに加え、フェリペ、エルモーソと手持ちのDF全てを投入し、訳のわからない陣形になっていたのはともかく、1点差で逃げ切れただけにだんだん、昨季のリーガ王者が戻って来たような気がしないでもありませんが…いえ、後悔先に立たずです。今は代表戦明け、コレアと累積警告となったコケが出場停止となるアラベス戦でもこの調子を保ってくれるのを祈るしかありません。

一方、これでとうとう、ラージョは年明けのワンダ・メトロポリターノでの対戦から始まったリーガ白星なしが9試合になってしまったんですが、シーズン前半に頑張ったおかげで順位は13位のまま。「Por suerte, tenemos un colchón que nos hemos ganado con el descenso/ポル・スエルテ、テネモス・ウン・コルチョン・ケ・ノス・エモス・ガナードー・コン・エル・デセンンソ(幸い、ウチには降格圏までクッションがある)」とマリオ・スアレスも言っていたように勝ち点差もまだ6あるため、代表戦明け4月3日のグラナダ戦から気分一新、残留確定までのあと勝ち点8余りを貯めていってくれればいいんですが、またバジェカスのファンと試合後に喜び合う光景が早く見られたらいいですよね。

そして日曜はセビージャ(レアル・ソシエダと0-0)、ベティス(セルタと0-0)、ビジャレアル(カディスに1-0で負け)と、ミッドウィークにヨーロッパの大会を戦ったCL出場権争いのライバルたちが次々と躓いたため、何より直近のサンティアゴ・ベルナベウの試合ではCL16強対決PSG戦2ndレグで根性のremontada(レモンターダ/逆転劇)を見せてくれたマドリーでしたからね。この流れならバルサもと期待してスタジアムに向かった私だったんですが、まさかベンゼマのケガが治らず、出場できなかったのがあそこまで響くとは!

え、だからって、アンチェロッティ監督がCFにモドリッチを使うなんて、奇策を弄する必要性はまったくなかったんじゃないのかって?そうなんですよねえ。後でGKクルトワも「Jugamos en Copa en Bilbao con el falso 9 y apenas tiramos a puerta y hoy ha sido igual/フガモス・エン・コパ・エン・ビルバオ・コン・エル・ファルソ・ヌエベ・イ・アペナス・ティラモス・ア・プエルタ・イ・オイ・ア・シードー・イグアル(ビルバオでのコパでもウチはシャドーCFを使ったけど、ほとんどシュートがなくて、今日も同じだった)」と言っていたように、あの時はアセンシオがベンゼマの代わりに入ったんですが、結果は1-0でアスレティックに負けて、準々決勝で敗退する破目に。

それでもアセンシオはまだFWですから、納得できるんですが、いくら「Buscábamos más control de balón/ブスカバモス・マス・コントロール・デ・バロン(ボールをよりコントロールすることを求めた)」(アンチェロッティ監督)とはいえ、モドリッチがCFをやっていたら、前線も中盤も揃って機能不全になるのは当然の帰結だったかと。そんな敵の過ちをしっかり利用したのがバルサで、いえ、序盤はロドリゴやバルベルデがシュートを撃ったりもしたんですけどね。チームメートがクラブ創設120種年記念Yohji Yamamotoコラボの黒い第4ユニをまとう中、何故か、全身ベビーピンクのユニだったクルトワが11分にオバメヤング、デンベレを連続paradon(パラドン/スーパーセーブ)で退けた後、とうとう29分にはバルサに先制点を取られてしまったから、さあ大変!

それも何だか、今季のお隣さんの失点パターンを彷彿されるゴールで、負傷欠場のメンディの代わりに左SBに入ったナッチョがデンンベレを止められず、ゴール前に上がったクロスをオバメヤングが頭でネットへ。いやあ、35分にビニシウスがGKテア・シュテーゲンの前で倒れず、マドリーがすぐに同点にできていたら、少しはマシになったかもしれませんけどね。その3分後、今度はCKをミリトンとアラバの間でアラウホがヘッドして、0-2になったとなれば、Fond norte/フォンド・ノルテ(ゴール裏北側)の4階スタンドに陣取ったビジターファンたちがバルサのパス回しに合わせて出す、「Ole, ole!(オーレ)」の掛け声がシーンとなった場内に響き渡ってしまうのも仕方なかった?

それでも先日はPSGに先制され、総合スコア0-2となってから、怒涛の逆転勝ち抜けを決めたマドリーですから、ファンもハーフタイムにはまだ絶望していなかったんですが、どうやらこの日のアンチェロッティ監督は大殺界だったよう。ええ、後半頭からクロース、カルバハルを下げて、CFとしてマリアーノ、そして中盤にカマビンガを入れたんですが、え、これって、ミリトン、アラバ、ナチョだけの3人DF制になるってこと?その結果、「a los diez segundos Ferran está solo conmigo/ア・ロス・ディエス・セグンドス・フェラン・エスタ・ソロ・コンミーゴ(10秒にはフェランがフリーでボクと1対1になっていた)」(クルトワ)というシュートはかろうじて枠を外れてくれたものの、2分にはフランキー・デ・ヨングのスルーパスをオバメヤングがtaconazo(タコナソ/ヒールキック)でフェラン・トーレスに。今度は彼も失敗せず、3点目を取られているって、一体、どうなっている?

もうこうなると、6分にフェランのパスにオバメヤングが抜け出したところで、線審の旗が上がったため、敵を追うのをマドリーDF陣は中断。そのvaselina(バセリーナ/ループシュート)がクルトワの頭を越えてゴールになった後、VAR注進で実はオフサイドではなく、バルサの4点目として認められたのも不幸の連鎖としか考えられませんが、いやホント、ここで止まってくれて良かったですよ。またいつぞやのmanita(マニータ/5ゴールのこと)みたいなことになれば、すでに残り15分頃からはスタジアムを後にするファンが後を絶たず、空席がチラホラ。試合終了後、その前で盛大にお祝いしていたピケがロッカールームに戻るやいなや、出したツイートだって、「We are back!(ボクらは戻って来た)」だけでは済まなかったでしょうしね。

要はこの0-4の大敗、「Le he dicho a los jugadores que ha sido mi culpa/レ・エ・ディッチョー・ア・ロス・フガドーレス・ケ・ア・シードー・ミ・クルパ(選手たちには私の責任だと言った)」というアンチェロッティ監督の戦略ミスと、「hemos salido relajados por esa ventaja en la clasificación/エモス・サリードー・レラハードー・ポル・エサ・ベンタハ・エン・ラ・クラシフィカシオン(ウチは順位的に有利だったせいで、リラックスしてピッチに出た)」(ナチョ)という選手たちの油断が相まった賜物で、いえ、ホントにベンゼマが出られない時のマドリーはゴールを入れるのに苦労するという再確認にもなったんですけどね。それでも勝ち点差12もあれば、「No tenemos que hacer drama con este partido/ノー・テネモス・ケ・アセール・ドラマ・コン・エステ・パルティードー(この試合を大袈裟に嘆く必要はない)」(アンチェロッティ監督)というのも事実。

こんな大敗をしてもクルトワ、アラバ、ミリタオ、ベルベルデの4人は場内一周してファンに感謝していましたし、実際、バルサがクラシコで勝つのも7試合ぶり。となれば、ロッカールームでの弾けぶりも生温かい目で見守ってあげればいいかと思いますが、もしや次節の2位セビージャとの試合に勝ったりすると、また一段、カタルーニャ系マスコミでは逆転優勝を煽る話題がヒートアップしたりする?

ちなみにマドリーではこの代表戦週間、まだリハビリ中のベンゼマはフランス代表に呼ばれなかったんですが、バルサ戦当日、体調が悪いとベンチ入りから外れたベイルがW杯予選プレーオフを戦うウェールズ代表に行くのを始め、総勢11人の選手が母国代表に出向。その後は4月2日のセルタ戦から、リーガ優勝へ向けてラストスパートに入ることになりますが、最短だと、マドリーダービーとなる35節辺りに2年ぶりの戴冠が決まったりするんでしょうか。

【マドリッド通信員】 原ゆみこ

南米旅行に行きたくてスペイン語を始めたが、語学留学以来スペインにはまって渡西を繰り返す。遊学4回目ながらサッカーに目覚めたのは2002年のW杯からという新米ファン。ワイン、生ハム、チーズが大好きで近所のタパス・バルの常連。今はスペイン人親父とバルでレアル・マドリーを応援している。

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