ミッドウィークがコパからCLになった…/原ゆみこのマドリッド

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「そろそろ、スペインのチームがまた決勝に出てほしいわよね」そんな風に私が溜息をついていたのは月曜日、TVE(スペイン国営放送)が今季のCL決勝の放映権を獲得したと聞いた時のことでした。いやあ、昔はどこかの民放がマッチデーごとに1試合オープン放送をしてくれたものですが、近年はずっと全試合有料チャンネルによる独占中継。よって、火曜水曜の夜はマドリッド勢のアウェイ戦を見るため、近所のバル(スペインの喫茶店兼バー)のお世話になるのが習慣となっていたんですが、ここ3シーズン、レアル・マドリーもアトレティコも決勝トーナメントからは早々に敗退していますからね。

3年前など、せっかくワンダ・メトロポリターノが決勝の会場となりながら、リバプールとトッテナムのイングランド勢対決だったため、当日はやっぱりバル観戦で終わったなんてこともありましたが、どこが出ようが、今季のようにサンクトペテルブルク(ロシア)ではとても見に行けるとは思えず。となれば、お家のTVで気楽に楽しめるようになっただけでも嬉しいんですが、まだそれは随分先の話ですしね。まずは月曜にパリ入りしたマドリーが4年ぶりのCL制覇に向けて、16強対決PSG戦1stレグでいい結果を出してくれることを望むばかりかと。

え、エムバペ、メッシ、ネイマールという、かつてのBBC(ベイル、ベンゼマ、クリスチアーノ・ロナウドの頭文字)ばりの前線を擁する相手に対して、今回のマドリーは少々、ネームバリュー負けしていないかって?いやあ、確かにCL3連覇、5年間で4回優勝した時代の3トップで今尚、活躍しているのはベンゼマだけですし、その彼も1月23日のエルチェ戦でケガをして以来、ずっと出場しておらず。パルク・デ・プランスでのスタジアム練習前の記者会見でも「En mi cabeza estoy preparado pero ahora tengo que ver en el campo/エン・ミ・カベッサ・エストイ・プレパラードー・ペロ・アオラ・テンゴ・ケ・ベル・エン・エル・カンポ(自分の頭の中では用意ができているけど、今はピッチでの状態を見てみないと)」と当人が言っていたように、先発できるかどうかも微妙なんですけどね。

とはいえ、PSGの方も昨年11月に足首を痛めたネイマールがようやく、この試合でベンチ入りできるかもといった状況。セルヒオ・ラモスもまたしても負傷中となれば、あとはビニシウスやアセンシオ、もしくは大穴でベイルなどが当たってくれればいい?不動の中盤、モドリッチ、クロース、カセミロのトリオもCLの経験値を見せつけてくれるはずですし、ちょっと心配なのはバルサ時代にマドリーと45回対戦し、26得点も挙げているメッシをラモスとバラン(現マンチェスター・ユナイテッド)の後継、ミリトンとアラバのCBコンビがコントロールできるかですが、あ、チェルシー時代、2度もPSGに16強対決で敗退しているGKクルトワもちょっと苦手意識があるかも。

ちなみにアンチェロッティ監督は「PSGはポゼッションと攻守の切り替えでチャンスを作る。ウチも同じだ。Creo que los dos equipos jugamos un fútbol similar/クレオ・ケ・ロス・ドス・エキポス・フガモス・ウン・フトボル・シミラル(この2チームは似たようなサッカーをプレーしていると思う)」と記者会見で話していたんですが、直前のリーグ戦でPSGは後半ロスタイムのエムバペのゴールでレンヌに0-1と辛勝。翻って、土曜にビジャレアルと対戦したマドリーはどうだったかというと…。

うーん、ベンゼマがいないと、やっぱりゴールが入らないんですかねえ。ラ・セラミカでの試合では昨年8月以来、ウェールズ代表での試合はあったものの、計168日間もマドリーでプレーしていなかったベイルをアンチェロッティ監督はCFとして抜擢したんですよ。それはまあ、いいんですが、前半にはエリア内でアルビオルの肘がビニシウスの顔を直撃。「No le veo venir y si le hubiera golpeado le hago sangre/ノー・レ・ベオ・ベニール・イ・シー・レ・ウビエラ・ゴルペアドー・レ・アゴ・サングレ(彼が来るのは見えなかったし、ボクが殴ったのなら、きっと出血していたはず)」と、当人は故意ではなかったと主張していましたが、このプレーにしてもFKの壁を作っている間にパレホがビニシウスを乱暴に払った時も、アセンシオがイボラの足首を踏んだ時もレッドカードが出なかったのは後から、かなりの物議を醸すことに。

0-0のままで始まった後半にはベイルが2度程、絶好機に恵まれたんですが、どちらもゴールにはならず。交代で入ったヨビッチがロスタイムに放ったvaselina(バセリーナ/ループシュート)もゴールバーに弾かれてしまい、結局、ビジャレアルのホームで5年連続引分けとしたマドリーでしたが、まあリーガでは2位のセビージャと勝ち点差4ありますからね。3位以下とは2桁の差があるため、あまり気にせず、今季からアウェイゴールで有利になるということはないものの、火曜午後9時(日本時間翌午前5時)からのPSG戦には全力で勝ちに行ってくれたらと思います。

そしてマドリッドの1部4チーム全てがプレーした土曜の2番手はラージョで、エスタディオ・バジェカスでオサスナと対戦。いえ、私は行けなかったんですが、2週間前のコパ・デル・レイ準々決勝マジョルカ戦の過ちが繰り返されていたから、ビックリしたの何のって。そう、スタジアム入場時のボディチェックと持ち込み品規制に反抗したブカネーロス(過激なファンのグループ)が定位置のゴール裏スタンドに入らなかったため、場内にはまたしても「La gente está pendiente de otras cosas/ラ・ヘンテ・エスタ・ペンディエンテ・デ・オトラス・コーサス(人々は他のことに気を取られていた)」(イラオラ監督)という、異様な雰囲気が漂っていたらしいんですよ。

そのせいか、前半8分には早々にモンカジョラのゴールで先制点を挙げられ、40分にもルーベン・ガルシアに2点目、後半ロスタイムにもキケ・ガルシアに決められて、ラージョは0-3の完敗。いやあ、コパでは調子良く、準決勝まで進んだせいで、私もうっかり失念していたんですが、実は年が変わって以来、彼らはリーガで1分け4敗と白星が1つもないのはちょっとマズいかと。ただ、順位も11位に落ちてしまったとはいえ、それでもシーズン前半の快進撃のおかげで、目標の1部残留達成まではあと3勝もすればいいんですが、とにかくプレサ会長とブカネーロスの関係にはまったく、改善の兆しが見えませんからね。

理由は多々あれ、そんなことでチームに迷惑をかけているようでは本末転倒もいいところですが、幸いラージョの次の試合は金曜にマルティネス・バレロでのエルチェ戦。最近はずっと週2試合が続き、トレホなど、大黒柱のベテランがローテーションしないともたないという悩みからもしばらくは解放されますし、残り試合は兄貴分のマドリーやアトレティコらも迎えないといけないホームゲームより、アウェイ戦に活路を見出していく方がいいかもしれません。

え、その土曜の夜にはワンダ・メトロポリターノでとんでもない兄弟分ダービーがあったんだろうって?いやあ、その通りで、とにかく前半の展開が「Es un partido que ni el Cholo ni yo imaginábamos/エス・ウン・パルティードー・ケ・ニー・エル・チョロ・ニー・ジョ・イマヒナバモス(チョロも自分も想像もしなかった試合)」(キケ・サンチェス・フローレス監督)だったんですよ。先手を取ったのはアトレティコで、いえ、前半6分にレマルのスルーパスを追ったルイス・スアレスがGKダビド・ソリアに倒され、PKをゲットしながら、自身が弾かれてしまった時は、こんな早い時間に点を取ってもどうせ追いつかれるんだからと、私も達観していたんですけどね。

19分にはスアレスがゴール前に上げたクロスをコレアが蹴り込み、更には27分、負傷が治って右SBとして復帰したマルコス・ジョレテンテのラストパスをクーニャが反対サイドのゴール前から押し込んで、2点リードした時にはさすがに、相手は兄貴分に頭が上がらず、ワンダでも勝ったことになかったヘタフェだけにこれは楽勝ムードかと信じかけたものの、とんでもない。30分にはエリア内からクリアしたボールがヤンクトに渡り、そのクロスから、レイニウドがマークしていたはずのボルハ・マジョラルが撃ち込んで、反撃の狼煙を上げた思いきや、その7分後にはアランバリの蹴ったCKをクリアしたクーニャがボールを腕に当てたとして、ペナルティの判定が。

今季、とうとうストライカーとして開花したエネス・ウナルがしっかりPKを決め、これでヘタフェは同点にしたんですが、まさか42分にもオスカルのクロスがレマルの手に当たり、しかもエリア内だったとVAR(ビデオ審判)からご注進が。再びPKでウナルにゴールを奪われてしまうって、え、もしかして逆転されてる?この時点でもう、頭が相当、クラクラしていた私でしたが、幸運にもアトレティコにはAngel(アンヘル/天使)がいたんですよ。もちろんそれはコレアで、ロスタイムにレマルのパスをゴール前右からヘッド。何とか、3-3のイーブンでハーフタイムに入ったかと思いきや…。

もう、どうしたらいいんでしょうね。後半10分にはウナルがケガしたため、MFオカイを入れて、FWをマジョラル1人にしてくれたヘタフェだったんですが、その3分後にフェリペが自爆。ええ、カウンターで走り出したアランバリの背中をジャンピングキックして、レッドカードで一発退場を喰らっているんですから、開いた口が塞がらないとはまさにこのことかと。すぐさまシメオネ監督はスアレスを下げ、ヒメネスがコロナ感染でいなかったため、ベンチにいた唯一のCB、エルモーソを入れて、守備体制を立て直すことに。

当然、この状況では「el Atlético estaba más metido atrás que con once/エル・アトレティコ・エスタバ・マス・メティードー・アトラス・ケ・コン・オンセ(11人の時より、アトレティコは後ろに引いていた)」(キケ・サンチェス・フローレス監督)のもやむなしで、おまけに29分、シメオネ監督はゴールを挙げていたコレア、クーニャ、そしてやはり負傷明けのコンドグビアをジョアン・フェリックス、デ・パウル、ベルサイコに交代。いえ、試合直前にカラスコもコロナ陽性が発覚したため、ジョアン以外、監督の三男のカンテラーノ(アトレティコBの選手)、19才のジュリアーノしか、ベンチにアタッカーがいなかったせいもありますけどね。

このまま引分けの勝ち点1で満足してしまうのかと、どんどん自分もネガティブになっていたんですが、前節には今季の集大成のようなダメダメ守備ぶりを披露。4-2とバルサに負けて、CL出場圏外に追いやられてしまったアトレティコを決して見放すことなく、忠実に応援を続けていたワンダのファンの健気な想いが届いたのは44分のことでした。ええ、デ・パウルの蹴ったFKをジョアンが頭で落としたところ、ボールはゴール前にいたエルモーソに。カンプ・ノウではアダマ・トラオレに手も足も出なかったCBが1度は打ち損なったものの、chilena(チレナ/オーバーヘッドシュート)で勝ち越しゴールを挙げてしまったとなれば、これで当人の度重なる守備のポカも帳消しになる?

うーん、実は彼、1つ前のホームゲーム、0-2と先行されたバレンシア戦でも後半ロスタイムに3-2となる奇跡のremontada(レモンターダ/逆転劇)弾を放っていて、バルサ戦の惨状もその後のことでしたからね。そんな彼は同僚のミスにも寛容で、フェリペの退場にも「誰にでも起こることだし、大丈夫だよ。Saldrá otro compañero y lo hará bien/サルドラ・オトロ・コンパニェロ・イ・ロ・アラ・ビエン(他のチームメートが出て、上手くやるから)」と言っていましたが、いやいや。自分にも反省する点が多々あるのを忘れてはいけません。

実際、ハーフタイム直前の同点ゴールでかろうじて、チームを絶望の淵から救ってくれたコレアなども「Tenemos que corregir urgente las situaciones defensivas/テネモス・ケ・コレヒル・ウルヘンテ・ラス・シトゥアシオネス・デフェンシーバス(アージェントに守備状況を改善しないと)。もうCLが来るし、そこでのミスは許されないからね」と言っていましたしね。とにかく弟分に勝つのにここまで苦労させられるのでは、もちろん、せっかくワンダのスタンド最上階に陣取った500人のサポーターが応援してくれながら、負けてしまったヘタフェも悔しかったでしょうが、彼らが「No estamos acostumbrados a este tipo de partidos/ノー・エスタモス・アコストクンブラードス・ア・エステ・ティポ・デ・パルティードス(ボクらはこういうタイプの試合に慣れていない)」(マジョラル)のと同様、アトレティコファンだって、毎回、こんなジェットコースターのような展開では消耗してしまいますって。

何はともあれ、この日は4-3で勝利して、「Necesitamos entrar en Champions, es nuestra realidad/ネセシタモス・エントラール・エン・チャンピオンズ、エス・ヌエストラ・レアリダッド(CL出場圏に入らないといけない。それがウチの現実だ)」というシメオネ監督の望みは叶い、一旦は4位に戻ったアトレティコでしたけどね。翌日にはバルサが後半ロスタイム終了直前のプレーでルーク・デ・ヨングがヘッドを決め、エスパニョールとのカタルーニャダービーで2-2と引分けたため、また5位に戻ってしまいましたが、今週はスペイン・スーパーカップのせいで延期となっていたレバンテ戦が水曜午後7時(日本時間翌午前3時)から、こちらもワンダで開催。

4位にカムバックするには絶好のチャンスですが、相手は最下位を独走中、1部残留には残り15試合で10勝が必要という危機状況にあるのが逆に怖い感も。しかもシーズン前半戦でもバーディのPK2本で2-2と引分けと、あまりアトレティコはレバンテを得意にしていないんですが、こればっかりはねえ。一方、ヘタフェは土曜にカディス戦となりますが、こちらはあと5勝で残留確定ゾーンに到達。ダービーでの土壇場負けをなるたけ早く忘れて、今季まだ達成していないアウェイ初勝利を挙げてくれるのを心から、願っています。

【マドリッド通信員】 原ゆみこ

南米旅行に行きたくてスペイン語を始めたが、語学留学以来スペインにはまって渡西を繰り返す。遊学4回目ながらサッカーに目覚めたのは2002年のW杯からという新米ファン。ワイン、生ハム、チーズが大好きで近所のタパス・バルの常連。今はスペイン人親父とバルでレアル・マドリーを応援している。

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