もう都市伝説になったと思っていたのに…/原ゆみこのマドリッド

写真拡大

「もしかして真冬のクライシスが戻って来たんだろうか」そんな風に私が心配していたのは金曜日、ようやく忙しい週末から解放されて、クリスマスのparon(パロン/リーガの休止期間)を楽しめるはずだったところ、あろうことか、12月のリーガ戦で1勝もせずにアトレティコがバケーションに入ったのに気づいてしまった時のことでした。いやあ、シーズン前半戦に破竹の快進撃をして、19試合を勝ち点50という高みで折り返した昨季を考えると、18試合で勝ち点29と聞くだけで、今季の彼らが全然、イケてないのはわかるんですけどね。

それも4連敗して、クラブのマストであるCL出場圏の外、5位で今年を終えるとなれば、いえ、丁度、2011-12シーズンの12月23日には、シメオネ監督がマンサノ監督の後を継いでアトレティコの指揮官に就任。記念すべき10周年とあって、CLどころか、UEFAカップ(ELの前身大会)にもろくろく出られなかったチームをヨーロッパの強豪と肩を並べるまでに導き、8タイトルも獲得した彼の功績を称える方向の報道が多かったんですけどね。それ以前の記憶を呼び起こしてみると、冬場になると、選手たちが飽きてしまうのか、アトレティコのパフォーマンスが落ちるのは過去に何度も見てきた光景。2期目のマンサノ監督もそうですが、ビアンチ監督、アギーレ監督、アベル・レシーノ監督など、チームの低空飛行ぶりにファンにも愛想を尽かされて、解任の憂き目に。

実際、現在のアトレティコを見ると、とにかくゴールは入らず、ザル守備による失点過多、そしてツキにも完全に見放されてとマイナス要因しかないんですが、幸いなことにヒル・マリン筆頭株主、セレソ会長を始めとするクラブ上層部のシメオネ監督への信頼は岩よりも固し。よっぽどのことがない限り、解任はありえないんですが、はあ。昨季のリーガ優勝メンバーから、2014年のように主力選手が抜けるということもなかったんですけどね。貪欲に次のタイトルを追い求めるお隣りさんとは違って、やっぱりアトレティコの選手たちは何か大きなことを達成すると、それだけで満足してしまう、いわゆる普通の人たちなんでしょうか。

まあ、嘆いていても仕方ないので、今週のミッドウィークに行われた延期、先取り試合がどうだったか、お伝えしていくことにすると。火曜には9月各国代表戦後の4節で延期されていたビジャレアルvsアラベス戦が5-2、セビージャvsバルサ戦が1-1で終わり、マドリッド勢の順位に影響があるということはなかったんですが、水曜の夜は長かったですね。というのもアウェイでマドリッドの両雄の試合が順番にあったため、結局、午後7時から11時半頃まで近所のバル(スペインの喫茶店兼バー)に居座ることになったから。

それでも10月の各国代表戦後に延期となっていた9節のグラナダ戦では、ロス・カルメネスで開始1分43秒、ようやく先発に抜擢してもらえたジョアン・フェリックスがレマルの自陣からのロングパスを受け、敵DFをかわしてシュート。アトレティコに先制点が入った時には今日こそ、勝てるんじゃないかと心躍ったんですけどね。そんなのはただのぬか喜びで、ええ、17分にはまるで前節セビージャ戦のラキティッチのようにマチスがエリア外から、豪快なgolazo(ゴラソ/スーパーゴール)を決めてくれるんですから、ホント、幸せな時間は短かったですよ。

ただ、その日のジョアンは入団以来、初めてと言ってもいい程の存在感を示してくれて、44分にはカラスコのFKをレマルが頭で繋いだボールを更にヘッドで撃ち込んで、2点目も決めてくれたんですけどね。これがまさに運の悪いアトレティコのいい例で、ええ、サンチェス・ピスファンではオカンポスに決勝ゴールを決められる前、ジャンプするデラネイの下敷きになっていたコケなども「el otro día en Sevilla fue parecido, no pitaron falta y hoy sí lo han pitado/エル・オトロ・ディア・エン・セビージャフエ・パレシードー、ノー・ピタロン・ファルタ・イ・オイ・シー・ロ・アン・ピタードー(セビージャでの日も似たようなプレーがあって、ファールをスルーされたけど、今日は取られた)」と文句を言っていたんですけどね。高々と飛び上がったジョアンがコロンビア人FW、ルイス・スアレスに乗っかったとして、得点を認めてくれないんですから、ひどいじゃないですか

え、それでも後半15分にグラナダのカウンターを招いたのは自業自得だったんじゃないかって?そうですね、またしてもジョアンがエリア前からシュートを放ち、それが惜しくもポストに弾かれてしまったのを残念がっているうちに、コンドグビアからボールを奪った敵は効率良く、アトレティコのエリアに到達。更にエルモーソがルイス・スアレルを逃し、ゴール前にキラーパスを入れられてしまったんですが、そこに現れたのは前節のマジョルカ戦で史上最年長となるハットトリックを挙げた、衰えを知らない39才ホル・モリーナ。GKオブラクの体に当たったシュートがラインを割り、2-1とリードされてしまったから、大変です!

そこでシメオネ監督も23分には早々にウルグアイ人FWのルイス・スアレス、デ・パウル、コンドグビアをクーニャ、コレア、エレーラに代えて反撃を試みたんですが、いやまあ、ジョアン、コレア、クーニャには同点弾を決めるチャンスがあったんですけどね。結局、アトレティコのゴールは生まれず、そのまま負けてしまうことに。うーん、もうこうなると、シメオネ監督も「Hay desatención, mucha, y nos hace pagar con derrotas un partido que nos merecemos/アイ・デスタテンシオン、ムーチャ、イ・ノス・アセ・パガール・コン・デロータス・ウン・パルティードー・ケ・ノス・メレセモス(注意していないことが多々あって、そのツケで勝つに値する試合に負けている)」と嘆くしかありませんって。

正直、試合毎に繰り返される、コンドグビアは本職ボランチですから仕方ないにしても、エルモーソやフェリペら、CBのミスにはもうどうしていいものやらといった感じですが、サビッチもヒメネスもまだ負傷のリハビリ中ですからね。年明けリーガ再開の兄弟分ダービー、現在、勝ち点1多い4位のラージョとの試合で戻って来られるのかもわかりませんし、冬の市場でのCB補強の話もチラホラ上がってきてはいるものの、具体的な選手名はまだ出ておらず。スアレスが無得点試合を続けている今はグリーズマンやマルコス・ジョレンテにもできるだけ早く復帰してもらわないといけませんが、キャプテンのコケも「No tenemos ni una pizca de suerte/ノー・テネモス・ニ・ウナ・ピスカ・デ・スエルテ(ウチには運の欠片もありゃしない)」なんて愚痴っていないで、どうせなら来週火曜までのお休みを利用して、開運祈願にでも行ってきたらいいんじゃないでしょうか。

ちなみにラージョの方は年内最終戦でアラベスに2-0と快勝した後、選手、スタッフ合わせて大量12人のコロナ陽性者が発生。といっても皆、無症状ですし、練習再開となる来週月曜までには大方、陰性になっているんじゃないかと思いますが、昨今のコロナ感染者増加を懸念して、来年からラ・リーガはチーム関係者の抗原検査、毎日実施を義務化することに。加えて、また自宅から練習着出勤して、ロッカールームの使用を控えることにもなったんですが、皆、バケーションで旅行して帰ってくるため、陽性になる人はポロポロ出てくるんでしょうね。

そして2021年最後のカードとして、1月12日からのスペイン・スーパーカップ直後の21節アスレティック戦を先取り開催したレアル・マドリーがサン・マメスでアスレティックに挑んだんですが、丁度、この試合はどちらのチームもコロナ禍の真っ最中。ええ、アンチェロッティ監督はモドリッチ、マルセロ、ベイル、アセンシオ、ロドリゴ、ルニン、イスコ、アラバに加え、ヘルプとして招集されたカンテラーノ(RMカスティージャの選手)のアリバスまでが陽性となり、マドリッドでお留守番に。マルセリーノ監督もスペイン代表正GKのウナイ・シモン、イニゴ・マルティネス、ベレンゲル、エスキエタが自宅隔離中だったんですが、こちらもスコアが動いたのは早かったですよ。

まずは開始4分、ビニシウスの折り返しをクロースがベンゼマにパスすると、いやあ、もう今季のベンゼマは止まりませんね。見事なvaselina(バセリーナ/ループシュート)で先制ゴールを入れただけでなく、7分にも敵がクリアミスしたボールをエリア内から決めて、あっという間にマドリーが2点リードしているとなれば、リーガ優勝はもう決まったも同然?とはいえ、10分にはアスレティックも意地を見せて、サンセットがエリア前からシュート。「con la única forma que parece que se le puede meter gol a Courtois, que era dando al palo y entrando/コン・ラ・ウニカ・フォルマ・ケ・パレセ・ケ・セ・レ・プエデ・メテール・ゴル・ア・クルトワ、ケ・エラ・ダンドー・アル・パロ・イ・エントランドー(ポストに当たって入るという、クルトワ相手にゴールを入れられる唯一の方法)」(マルセリーノ監督)で1点を返したんですが…。

うーん、前節のカディス戦から連続先発しているアザールやカセミロの出場停止で出番が回って来たカマビンガなども頑張っていたんですけどね。それ以降は追加点もなく、マドリーは最近、アンチェロッティ監督が気に入っている、引いて敵を待ち受ける態勢に入ってしまったため、残り時間が結構、長く感じられたんですが、アスレティックももう少し、ウィリアムス兄弟に決定力があればねえ。最後は19才のカンテラーノ、ペテルがデビューして終わったんですが、1-2で勝利したマドリーはセビージャが引分けたのもあって、2位と勝ち点差8に。アトレティコとは17差、バルサとは18差ともなると、もう誰も追いつけない気がするのは私だけではない?

おまけに年明けの1月2日、降格圏から脱出して16位となったヘタフェとの兄弟分ダービーではコロナ陽性だった選手たちも治っているはずですしね。こちらもベンゼマとカマビンガはドバイに、ビニシウスはアメリカでNBA観戦といったように選手たちが世界各地に散っているため、休み明け、来週火曜のPCR検査が見物ですが、逆に陽性から陰性になったばかりの選手はしばらくはもう感染しない?何はともあれ、2部のルゴでは大量26人のクラスターが発生して、年内最終だったアルメリア戦ができなくなったり、女子リーガ1部でもアスレティックvsアトレティコ戦、レバンテvsラージョ戦が延期になるなど、最近はまたコロナ流行の影響がサッカーにもありありと。それでももう2度と無観客試合になったりしないように、私も今は祈るばかりです。

【マドリッド通信員】 原ゆみこ

南米旅行に行きたくてスペイン語を始めたが、語学留学以来スペインにはまって渡西を繰り返す。遊学4回目ながらサッカーに目覚めたのは2002年のW杯からという新米ファン。ワイン、生ハム、チーズが大好きで近所のタパス・バルの常連。今はスペイン人親父とバルでレアル・マドリーを応援している。

ドイツ・ブンデスリーガ全試合LIVE配信!
スマホやFire TV、PCやタブレットで楽しみ方いろいろ!
>詳しくはこちら