モンテネグロの中央部、首都ポドゴリツァから車で1時間ほどの場所には、この国最大の聖地であるオストログ修道院があります。

標高800mの地点で、山の岩肌にへばりつくようにして立っている修道院。秘境と言える場所にありながら毎年10万人もの人々が訪れ、熱心に祈りを捧げていきます。

セルビア正教会におけるもっとも重要な建物のひとつであるオストログ修道院は、17世紀に聖ヴァシリエという修道士によって建てられました。彼はその後の人生をこの地で過ごし、安置されている遺体は「様々な奇跡を起こす」と信じられています。

そんなオストログ修道院への道のりは、決して安易なものではありません。一番簡単な車で向かうにしても、山の上まで断崖絶壁のカーブ道を延々と走らなければならないのです。

車がなかった時代は、山の麓から急な山道を登るしかこの地にたどり着く方法がありませんでした。厳しい道のりを登りきるのは、熱い信仰心があるからこそ成せるもの。現在でも熱心な巡礼者のなかには、あえて自分の足だけで修道院へ向かう人もいるのだそうです。

長い道のりを経てたどり着いた巡礼者を迎える門。この門をくぐり敷地内にはいると、どこからか祈りの言葉が音楽とともに聞こえてきます。周囲一帯が神聖な空気につつまれ、信者でなくとも何かスピリチュアルなものに触れている気分です。

広場に面している建物には、事務所や巡礼者のための宿泊施設などが入っています。

壁に描かれた美しいモザイク画に注目してみてください。

そして入り口の門から入って最も奥にあるのが、聖ヴァシリエの遺体が安置されている教会です。ここに入場するには服装の注意があり、肩の出た服やショートパンツのままでは中に入れません。

モザイク画の建物の前にスカーフが入ったカゴが置かれているので、スカーフで肩や脚を隠すようにしましょう。使用後のスカーフはまた同じカゴの中に返却します。

遺体が安置されているのは、5人入ればいっぱいになる狭い部屋。開かれた棺の横には修道士がひとりつき、見学者は1人ずつ前に歩み寄って遺体と対面します。

オストログ修道院はセルビア正教会に属していますが、他宗教の者でも遺体との対面は可能。宗教は違えど、聖なる空気にふれて心が浄化されるかのようです。

教会のテラスからは素晴らしい眺めが広がります。俗世から切り離されたこの場所で、かつての修道僧や巡礼者たちもこの景色を眺めながら祈りの日々を送っていたのですね。

モンテネグロの秘境の地にひっそりと佇むオストログ修道院。人々の深い祈りに触れれば、信心深くない人でさえも何か心に感じるものがあるはずです。

オストログ修道院へ行くには、ツアーの参加が便利。コトルからの1日ツアーが出ているので、興味のある方はぜひ検討してみてください。

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