疫病が流行れば私の絵を見せよ――江戸時代末期、そう告げて海に消えたとされる妖怪・アマビエ。新型コロナウイルス感染拡大の影響で2020年2月末ごろからSNSで注目を集めた存在だ。

大分市に本社を置く運送業者・一番運輸は、トラックの車体にアマビエのイラストをデザイン。作者であるイラストレーターの東京モノノケ(@tmnk_illust)さんが自身のツイッターで投稿し、話題となっている。


アマビエトラック誕生(画像は東京モノノケ@tmnk_illustさん提供)

鳥のような顔に魚の体、そして長い髪。その姿はまさにアマビエそのものだ。しかし水色やピンクといったパステルカラーが基調となり、妖怪というより妖精のような印象も受ける。妙な安心感があり、見ているだけで元気になれそうだ。

作者「ちょっとの間でも楽しんでもらえれば」

Jタウンネットは9日、東京モノノケさんと一番運輸の藤田憲靖代表にアマビエトラック誕生の経緯を聞いた。

東京モノノケさんは「#アマビエ」のハッシュタグがSNSで流行していることを知り、3月3日にツイッターでイラストを投稿。その後、自身のサイトにもアップした。


元となったイラスト(画像は東京モノノケ@tmnk_illustさん提供)

「妖怪のイラストで少しでも見た人の心をほぐすことができればと思い描きました」

東京モノノケさんはイラストを描いた理由をこのように話す。4月に入ると一番運輸からトラックにプリントしたいと申し出があり、「トラックのイラストを見た人を少しでも癒したい」との思いに賛同した。

東京モノノケさんは、アマビエトラックに関して、

「今回の状況で悲しい思いをされている方々が、トラックを見てちょっとの間でも楽しんでもらえればと思います。また、大変な中働いておられる運輸業の皆さんに、少しでも力を貸すことができていたなら嬉しいです」

と思いを述べた。

藤田代表「うちで何かできることはないか」

一方、一番運輸の藤田代表はアマビエをトラックに印刷した理由をこう話す。

「朝から晩までコロナの嫌なニュースばかりだから、うちで何かできることはないかなと思いました」

アマビエのイラストはネットで検索し、その中でも「人に威圧感を与えない絵」を選んだとのこと。4月4日に東京モノノケさんに連絡し、新車のトラック1台に印刷した。


運が良ければ見かけられるかも(画像は東京モノノケ@tmnk_illustさん提供)

一番運輸ではトラックの荷台にイラストや文字をプリントする事業を行っており、印刷にはもともと会社にあったボディプリンターを使用。藤田代表は「淡く柔らかい雰囲気をそのまま出せました」と話している。

アマビエトラックは4月17日から走行予定。長距離トラックのため大分〜関東のどこかで見られるという。

「(アマビエトラックは)コロナが終息するまで走行する予定です。塗装は簡単に落とせるので...。おさまればいいなと思います」

もちろん早く終息して役目を終えるに越したことはない。だがそれまでは、このトラックが日本各地に元気を届けてくれることだろう。