パシフィコ横浜で開催中の国際電気自動車展で、富士重工が公開した最新の電気自動車(撮影:吉川忠行)

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電気自動車や燃料電池車など先進技術を搭載する次世代カーを一堂に集めた「第22回国際電気自動車シンポジウム・展示会」(日本自動車研究所主催)が、横浜市のパシフィコ横浜で28日まで開催している。今回は自動車メーカーから電機、電力関連の企業に至るまで国内外から107団体が出展。環境に対する意識の高まりや燃料費の高騰を背景に、各社が低燃費や低排出ガスなどを追求した最先端技術を競っている。

 ガソリンエンジンに代わる次世代の自動車は、◆電池でモーターを動かして走る電気自動車◆ガソリンエンジンと電気モーターを併用するハイブリッド車◆水素と酸素などの化学反応で発電してモーターを動かす燃料電池車──の3種類に大別される。最近では、サトウキビやトウモロコシなど植物由来のバイオエタノール車も新たに研究が進んでいる。

 トヨタ<7203>やホンダ<7267>などが市場に積極投入しているハイブリッド車の国内普及台数は約25万台。一方、電気自動車は、普通車の2倍以上という価格や走行距離の短さなどが原因で1万台弱の普及にとどまっているが、電池性能が飛躍的に向上し始めるなど開発サイドが活発になる機運が見られる。水しか排出しない燃料電池車は“究極のエコカー”として注目されているが、今のところは実験段階で、電池の小型化や水素供給インフラの整備などが課題となっている。

 今回の展示会の目玉は、最新の電気自動車を公開した三菱自動車<7211>と富士重工業<7270>。三菱自は軽自動車「i(アイ)」をベースに、大容量リチウムイオン電池と小型モーターを搭載した試作車「i MiEV」を出品した。後席部分に燃料タンクやエンジン・トランスミッションを装着する「リア・ミッドシップレイアウト」など「i」の特徴を生かし、大きな電池を床下に着けたことで、4人乗りの居住スペースを確保し、低重心化を実現した。660ccターボエンジン並みの出力と走行性能を誇り、1回25分の最速充電で連続走行できる距離は130─160キロを見込む。三菱自はこの試験車で、東京電力<9501>など電力5社と11月から共同開発を開始し、2010年には150─200万円で商品化したい考えだ。

 すでに昨年秋から東電との共同開発を進めている富士重は、軽自動車「R1」をベースに、2010年の実用化を目指した2人乗りの試作車を公開。連続走行距離は80キロで、東電の急速充電器を使えば15分で全体の80%まで満たし、家庭用電源(100V)では8時間でフル充電できるという。

 「実験車は全世界で100台を超える」と掲げるダイムラークライスラーは、独メルセデスベンツのBクラスをベースとした燃料電池車「F-Cell」のカットモデルを国内で初めて公開した。すでに国内5社に納入実績のあるAクラスをベースとした実験車と比べ、2倍にあたる700気圧の水素燃料を搭載し、バッテリーもニッケル水素電池からリチウムイオン電池に切り替えた。連続走行距離は160キロから400キロと大幅に伸びたという。担当者は「国内には700気圧の水素を充てんできるインフラが整っていない」と課題を挙げながら、2012年以降にも実用化を目指すとした。

 二輪車でも燃料電池車が登場。ヤマハ発動機<7272>は、水素燃料電池を搭載した125ccクラスのバイク「FC-AQL」を初出品した。座席後部に2本の水素タンクを装着し、日立<6501>と共同開発した2次電池とのハイブリッドシステムで、十分な航続距離を目指していくという。同社は20年前から燃料電池の研究を進めており、昨年秋には50ccクラスの開発車でナンバーを取得し、静岡県に1台納入した実績を持つ。

 立ったまま乗るユニークな二輪車「セグウェイ」もれっきとした“電動車”として、国内初の正規総販売代理店に決まったばかりの日本SGI(東京都渋谷区、和泉法夫社長)から出品された。日本では公道で走れないことから工場や娯楽施設などでの使用を想定して、法人向けに95万円(保険料込み)で販売されている。年間販売は2500台を見込んでいるという。【了】