ノンフィクション「1.3尖閣上陸」の知られざる舞台裏[前編]
今年の正月、仲間は波が2.5mの高さに静まるのを待ち、同志とともに船を出した。いわば“札付き”である仲間は常に海上保安庁にマークされている。港に現れただけで通報に走る者もいる。あるときはどこに行くとも言っていないのに、乗り込もうとした船がロープでグルグル巻きにされたこともある。今回も、海保の職員とはこんな会話があった。
「(尖閣諸島に)上陸するのか?」
「いえ、しません。釣りに行くだけです。ただ、疲れたら休むかもしれません」
「昭和53年(1978年)に日本青年社が与那国島から持ち込んだつがいのヤギがかなり繁殖していて、草や木の皮を食べ尽くしていました。また、避難港を建設すれば、漁協の漁師たちがシケでも安心できる。これらを国に進言するつもりです。再び書類送検されるかもしれませんが、私はこのアクションはやめません。それは尖閣の現場を知っているからです。どれだけの不審船が石垣の漁民を怖がらせてきたか。日本の警察は、我々が上陸をすれば罰金を取って送検する。それでいて不法に上陸した中国人は逮捕もせずに入管法で追い返すだけ。挙句に海保の船に体当たりをしてきた中国船の船長を無罪放免とする。これが法治国家のすることですかと私は思うわけです」
(取材・文/木村元彦)
■木村元彦(きむら・もとひこ)
ジャーナリスト。アジアや東欧のスポーツ人物論、民族問題などを中心に取材・執筆活動を行なう。近著は『争うは本意ならねど ドーピング冤罪を晴らした我那覇和樹と彼を支えた人々の美らゴール』(集英社インターナショナル)
【関連記事】
ノンフィクション「1.3尖閣上陸」の知られざる舞台裏[後編]
【現場ルポ】尖閣諸島上陸をめぐる「なんだかなー」な攻防戦
仙谷官房長官って“ナニ様”なのか
元アメリカ陸軍大尉が警告 「米軍沖縄撤退ならニッポンは消滅する!」
対中防衛の最前線、与那国島に自衛隊が精鋭部隊を配備