主力選手の不在は必ずしも敗因とはいえない<br>(Photo by Kiminori SAWADA)

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「駆け引き」という言葉を、日本代表の選手たちにはもう一度考えて欲しい。

 今回もまた、バーレーンは徹底してロングボールを放り込んできた。その上で、高い位置からプレッシャーをかけてきた。プレッシャーの高さと激しさは、昨年10月のウズベキスタン戦を思い起こさせるものがあった。

 プレッシャーを回避できずにボールを失うなら、無理をしてつながずにロングボールを使ったほうがリスクは少ない。しかし、このチームは全員が連想した動きによって、ボールを運んでいくことをコンセプトとしている。ロングボールが禁止されているわけではないが、ロングボールを多用したらコンセプトからズレてしまう。そもそも、高さで勝負できる選手が少ないから、ロングボールから空中戦を挑むのは現実的でない。

 ならば、バーレーン戦で日本は何をするべきだったのか。中央に偏り過ぎた攻撃を、もっとワイドにするべきだった。高さのある相手ディフェンスを揺さぶるために、両サイドの深いスペースもっと意識するべきだった。ペナルティエリアの延長線より奥まで侵入してクロスを入れれば、DFは視野の確保が難しくなる。ボールを見ながらマークを捕まえるのが困難になる。高さで劣る日本のアタッカー陣でも、競り合いに勝つ可能性が拡がる。イエメン戦で流れのなかから得点を奪えなかったのは、両サイドのスペースを使いきれていなかったからだった。

 戦略的なアプローチがしっかりできていても、得点に至らないことはある。そこで重要なのが「頭を使ったプレー」だ。

 バーレーンは前半開始から猛攻を仕掛けてきた。日本は真っ向から受け止めた。

 日本の戦い方が、間違っていたわけではない。ただ、あまりに正直過ぎると言うことはできる。

 ドイツW杯のオーストラリア戦で、終盤に立て続けに失点を喫したのはなぜか。いくつかある理由のなかには体力の消耗が含まれており、「あの暑さだから消耗するのは避けられない」と我々は考えてきた。しかし、消耗を抑えるための工夫を、日本代表はしていたのだろうか。答えはNOである。

 接触プレーのあとに、ピッチ外での治療を指示されない程度に痛がる。相手のファウルが「カードの対象じゃないのか」と主審にアピールする。どちらも些細なことだが、その瞬間に試合は止まる。確実に。ほんの少しではあるけれど、価値ある休息をとることができるのだ。

 話をバーレーンに戻す。失点を喫するまでの20数分間、日本は何の工夫もしていない。相手のペースを断ち切るために、意図的に試合を止めるようなアピールなり動きをする選手は、誰ひとりとしていなかった。ただでさえアウェイゲームである。防戦一方になるのは必然だった。

 試合運びに対する物足りなさは、すでに何度か指摘している。またか、と思う方はいるかもしれない。

 代表選手が気づくまで、変わるまで、僕は何度でも書くつもりである。割り切った戦い方を潔しとせず、あくまでも自分たちのサッカーを貫くのであれば、それぐらいの工夫が必要だと思うからだ。サッカーはほんの少しのディティールによって勝敗が決するものであり、そのなかには試合を有利に運ぶための駆け引きも含まれている。

戸塚啓コラム - サッカー日本代表を徹底解剖