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 タカタは事実上倒産した。「初動対応のまずさ」など指摘を受けているが、その原因はタカタ自身「想定外」「思いもよらなかった」出来事であったことだろう。それでも死者・怪我人が出て、世界中のユーザーに迷惑をかけて、その損害額は単にエアバッグを取り換えなければならなかったユーザーも含めると、天文学的数字になると思われている。しかし、メーカー・ディーラーを含めて関係者は「反省しよう」とはしていない。

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 むしろ「欠陥隠しは新段階」に入ったと言えるのだろう。

■「品質保証は社会の掟」リコール制度とは?

 “リコール制度とは、設計・製造過程に問題があったために、自動車メーカーが自らの判断により、国土交通大臣に事前に届出を行った上で回収・修理を行い、事故・トラブルを未然に防止する制度。”(引用:国土交通省 自動車局審査・リコール課)

 「自動車メーカーは自ら不良であると認識したら、届け出て対策を取りなさい」との趣旨だ。しかし、これまでに三菱自動車など隠ぺい工作を行い死者まで出している。「自動車メーカーのモラルに頼った制度」とも言える内容になっている。

 この社会は全ては「品質保証」で成り立つ制度で組み立てられていると理解すべきだ。

 例えば「高速道路」は建設からメンテナンス・使い方など、全ては相互の信頼関係で成り立っている。「クルマ社会」と言われるが、車の信頼性もなければ危険で、とても乗っていられまい。

 そこで自動車は「品質保証」することがメーカーに義務付けられていて、故障する可能性があれば事前に届け出て対策するように法律で決められているのだ。それが「リコール制度」だ。

 しかし、タカタの不良は「怠慢」と言うレベルのものでは片づけられない内容を含んでいる。人事や組織の作り方、組織運営技術に限らず、全ての技術を投入して最低限、「商品に責任を持つ」ことが社会では義務付けられている。

■リコール届け出、近年桁違いに増える

 10年前の届け出対象車両は5百〜7百万台、現在は1千6百〜1千9百万台。保有台数の10%程度だったものが20%程度になっている。

 5カ年リコール率、つまり、製造から5年経過後「リコール対象」となる確率が日本では42.7%。生涯の自動車保有の経歴の中では欠陥車を保有してしまうことになる。確かに、今回のタカタのエアバッグなど、幾度かリコール対象車になっている。

■リコール届け出増加はなぜなのか?

 リコール件数の増加について、原因として考えられるのは以下の3点だ。

1・三菱自動車工業、欠陥隠し刑事事件化 2004年の三菱自動車工業の問題で、隠ぺいして社会から叩かれると、自動車メーカーが逆にリコール制度を利用するようになった。

2・部品の共通化 トヨタのTNGAのように、部品共通化が進み、多くの台数が対象となることが増えた。

3・制御プログラムのバグの増加 車の電子制御が増え、バグが増えている。以前から問題があったが、メーカー側が握りつぶしてきた。

■品質保証をしない社会体質「欠陥隠し新段階」

 不良を起こしてクレームをユーザーから受けても、「ユーザーをクレーマーとして扱い」隠蔽する悪質な企業も増えている。これが「欠陥隠し新段階」と言えるものだ。クレーマー問題はあるが、メーカー側は「正当なクレームであると知りながら」隠ぺいを図る。電子制御のバグについては「分りにくく」ユーザー側で「証明できない」ために、故意に隠蔽することが正当化されている。クレーム対応の専門家までもが「クレームから学べ」としてきた従来の教えを「クレーム対応に時間を取られるな」と堂々と教えるまでになった。

 結局のところ企業、ユーザー両者が誠意を持たず、暴力でしか解決がつかない社会にして欲しくはない。企業が「自分の不良品に責任を持つため」に「悪質なクレーマーと真面目なユーザーを見分ける目」を持つ責任があるのは当然だ。勉強すべき点であろう!