天皇杯決勝、鹿島vs川崎は本当に見応えのある試合でした。川崎にも十分勝つチャンスはあったと思いますが、鹿島が延長戦を制することが出来た理由もあったと思います。

鹿島がなぜチャンピオンシップを制し、クラブワールドカップでは決勝に進み、天皇杯で優勝できたのか。誰がそのキーマンだったのかを考えなければいけないでしょう。

鹿島は、小笠原満男や曽ヶ端準に象徴される黄金世代の選手、中堅の中心選手となった柴崎岳や昌子源、そして台頭してきた植田直通、鈴木優磨が一緒になった、バランスの取れたチームです。

いろいろなチームが世代交代の際にチーム力を落としたり降格したりと苦労する中、鹿島は極端に順位を落としたことがありません。選手が代わっていくサイクルにミスがないのです。

また、「今何が必要か」ということの考え方が統一されています。たとえば天皇杯決勝で、鈴木が突破して行きたくなるところをグッと気持ちを抑えてボールをキープし、疲れが見える守備陣を助けるなど、若い選手にも試合の流れを見る目が養われています。

クラブはただ、「いい選手」を取って、その選手に戦い方を合わせているのではないのです。「鹿島の戦い方はどうか」「鹿島はどうやって勝つか」「鹿島の強さは何か」というコンセプトに選手や監督を当てはめているのです。

そして何より大切なのは、そのコンセプトがずれないことです。いい考え方があっても、年々変わっていくようでは選手たちや、クラブに浸透していきません。ところが鹿島の場合は、Jリーグがスタートしたときから、そのコンセプトが変わっていません。コーチングスタッフに鹿島出身者が多いことが、変わっていない証拠です。

コンセプトが変わらないから選手は安心してプレーできるし、育成部門はどんな選手が次に必要になるのかもわかります。監督も迷うことなく進めるし、困ったときには立ち戻る場所もあります。鹿島にはそうやって、鹿島らしさが浸透しているのです。

つまり鹿島の秘密は、そのコンセプトを守り続けている人物がいるから、ということになるでしょう。20年変わらず強化の責任を果たしてきた人物――鈴木満強化部長こそ、僕には鹿島の強さの秘密があると思います。