竹島の領有権をめぐる問題で、「日本維新の会」代表の橋下徹大阪市長が公開政策討論会上で打ち出した「韓国との共同管理」という提案に、韓国からはもとより国内からも批判が噴出している。しかし、それは本当に“暴論”なのだろうか。

元外交官で評論家の孫崎亨氏は、共同管理のメリットをこう主張する。

「領土問題で最も大切なのは、紛争に発展させないということ。特に戦争だけは絶対に避けるべきです。領土問題は軍事的アプローチや一方の国だけが自国の主権を強める形では、解決が難しい。橋下大阪市長が唱える竹島の共同管理は平和的なアプローチであるという点で、もっと評価されてもよいと思います」

日韓関係に詳しい木宮正史東京大学大学院教授もうなずく。

「竹島といっても実態は岩礁のようなもの。その領有権をめぐって日韓が激しく対立することを防ぐという意味で、共同管理はメリットがあります」

実は少数ながら、韓国内でも竹島を日本と共同管理しようという声が上がっている。韓国紙の東京特派員は言う。

「その人物は韓国の国策研究機関・韓国統一院の金泰宇(キムテウ)院長です。李明博大統領の竹島上陸後、悪化する日韓関係を心配し、『それならいっそのこと、独島(竹島の韓国名)周辺の海洋や海底資源を両国で共同管理することを論議してみてはどうか?』と、ブログで発言したんです。勇気ある発言だと思います」

ただ、金泰宇院長もまた、橋下大阪市長同様、激しいバッシングに遭っている。

「国会の予算決算特別委員会の席上で、最大野党の民主統合党のある議員がこの発言を問題視し、『これでは統一院院長でなく、まるで“親日”研究院院長だ!』と、やり玉に挙げたんです。すると、答弁に立った金滉植首相もよせばいいのに、『容認できない発言だ。経緯を把握し、責任を問う』と応じてしまった。その後、金泰宇院長はその発言をブログから削除し、弁明に追われるはめになりました」(特派員)

しかし、日本と韓国はお互い重要な経済パートナーだ。

「韓国にとって日本は輸出総額第4位の主要な貿易国、日本にとって韓国は第3位の貿易国。その貿易総額は2011年度で約8.44兆円に達しています。興味深いのは韓国の対日貿易赤字が毎年2兆〜3兆円にもなるのに、総貿易収支では約2.56兆円(2011年度)の黒字になっているということです。これは日本から高品質の部品や素材を輸入し、それを韓国企業が製品にして世界に輸出する2国間分業が成功しているから。つまり、日韓は経済的にウイン−ウインの関係になっているんです」(特派員)

こうした双方に利益のある共存関係を捨て去ってまで、両国が竹島の領土問題を争う意味は本当にあるのか?

「現状ではなんの富も生まない小さな島をめぐり、日韓が領土ナショナリズムにとらわれてケンカするなんてバカげている。それよりも共同管理で領土問題という火種をなくし、今のウイン−ウイン関係をさらに強化すべきです」(特派員)

反目や対決が平和・共存をもたらすことはない。日本も韓国も少し頭を冷やして、こうした意見にも冷静に耳を傾ける余裕があるといいのだが……。

■週刊プレイボーイ43号「竹島の『共同管理案』をバカにできない、これだけの理由」より