【米国株】問われるAI投資の「成果」、巨大テック決算の行方は?

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先週(7月20日週)の米国株市場は好業績でも売られる厳しい環境

先週(7月20日週)の米国株市場は、週後半にはいり投資家の警戒感が強まり、主要株価指数はそろって下落しました。週間では、S&P500指数が0.61%安、ナスダック100指数が1.62%安となり、とりわけ大型テクノロジー株の下げが目立ちました。

一方、フィラデルフィア半導体株指数(SOX指数)は1.24%上昇して週を終えました。これまで大きく売られた半導体株への買い戻しが入り、相場はいったん落ち着きを取り戻したかに見える場面もありました。しかし、7月22日(水)の取引終了後に発表されたアルファベット[GOOGL]とテスラ[TSLA]の決算を受け、巨額のAI投資に対する市場の見方が厳しくなりました。

ここで大切なのは、両社の事業が急に悪くなったわけではないという点です。今回の下落は、「決算が悪いから売られた」というより、「良い決算でも、投資家の期待が高すぎると売られる」相場だったと言えます。市場は業績の伸びだけでなく、その成長を実現するために、いくらコストがかかるのかまで厳しく見始めています。

また、イラン情勢の緊迫化を背景とした原油高も重なり、市場の空気は一変したのです。

アルファベット[GOOGL]は巨額のAI先行投資が懸念され下落

アルファベット[GOOGL]の売上高と利益は力強い内容でした。それでも株価が7月23日(木)1日で7%を超えて下落したのは、AIとデータセンターへの設備投資がさらに増えることが分かったためです。同社は年間設備投資の見通しを、従来の1800億~1900億ドルから1950億~2050億ドルへ引き上げました。

第2四半期のフリーキャッシュフローが初めてマイナスになったことも、投資家の不安を強めました。設備投資とは、将来の売上を得るために今お金を使うことです。AIサービスを提供するには、大量の半導体、電力、データセンターが必要になります。

需要が増えてから準備を始めても間に合わないため、アルファベットは先に計算能力を確保しようとしています。その分、今の現金収支は悪く見えますが、AI需要が計画通り拡大すれば、今回の投資は将来の収益を支える土台になります。
 
ですから本来は、投資家が見るべきなのは、設備投資額の大きさだけではなく、AI関連の売上が伸びているか、投資した設備が実際に使われているか、そして、数四半期後に利益とキャッシュフローが改善するかが重要なはずです。

テスラ[TSLA]は次世代の収益源へ向けた産みの苦しみ

一方、テスラ[TSLA]の決算では利益が市場予想に届かず、利益率と設備投資への懸念から、7月23日(木)の株価は14%を超えて下落しました。

ただし、こちらも将来に向けた準備は進んでいます。テスラは2026年上期に、テキサス州のAIコンピューティング能力を2倍以上に拡大しました。現在の約250メガワットから、近い将来400メガワットへ増強する計画です。

この計算能力は、自動運転車に安全な運転を学習させたり、人型ロボットに実際の作業を覚えさせたりするために使われます。テスラは今、自動車を販売して利益を得る会社から、自動運転とロボットを新しい収益源にする会社へ進もうとしています。そのため、短期的にはコストが先に出て、利益率やキャッシュフローが圧迫されやすくなります。

もちろん、投資を増やせば必ず成功するわけではありません。アルファベットはAI投資を利益につなげられるか、テスラは自動運転やロボットを実際のサービスとして広げられるかが問われます。ただ、今回の決算はAI需要が消えたことを示したものではありません。市場が「どれだけ投資するか」よりも、「その投資をいつ利益として回収できるか」を重視し始めたということです。

地政学リスクと原油高・金利上昇のトリプルパンチ

そこへ重なったのが、イラン情勢の緊迫化と原油高でした。紅海でサウジアラビアのタンカーが攻撃されたと伝わり、原油価格は1バレル=100ドルを突破しました。原油高は輸送費や製造コスト、ガソリン価格を押し上げ、企業と家計の負担になります。また、インフレが再び強まれば、FRB(米連邦準備制度理事会)が金利を高い水準に保つ可能性も高まります。

先週(7月20日週)は米10年国債利回りが4.7%を上回りました。金利が上昇すると、将来の成長を期待して買われているテクノロジー株は売られやすくなります。先週はAI投資への不安、地政学リスク、原油高、金利上昇が同時に重なったため、値動きが大きくなったのです。

今週(7月27日週)はアップル[AAPL]など巨大テック企業の決算に注目

今週(7月27日週)は、マイクロソフト[MSFT]、メタ・プラットフォームズ[META]、アマゾン・ドットコム[AMZN]、アップル[AAPL]など、主要大型テクノロジー企業の決算発表が相次ぎ、決算シーズンはいよいよ本格化します。

市場の関心は、売上高やEPSが市場予想を上回るかどうかだけではありません。AI関連事業がどの程度成長しているのか、データセンター需要が引き続き堅調なのか、そして巨額の設備投資が実際の売上高や利益の拡大に結び付いているのかが、重要な確認ポイントとなります。

また、FOMC(米連邦公開市場委員会)、PCE物価指数、4~6月期GDPも発表されます。原油高が続けば、FRB(米連邦準備制度理事会)が市場の予想より厳しい姿勢を示す可能性があり、長期金利の動きには注意が必要です。

引き続き株価の変動が大きくなる可能性はありますが、短期的な下落だけでAI成長の終焉と判断するのは早計です。現在は巨額の先行投資が利益を圧迫する、いわば「種まき」の段階にあります。        

重要なのは、日々の株価変動に振り回されるのではなく、こうした投資が数四半期後の売上高、利益、キャッシュフローの拡大につながるかを見極めることです。原油価格と金利の動向にも注意を払いながら、企業の中長期的な成長力を丁寧に判断したい局面です。

岡元 兵八郎 マネックス証券 チーフ・外国株コンサルタント兼マネックス・ユニバーシティ シニアフェロー