取り締まりを強化する全国交通安全運動

 毎年春と秋には全国交通安全運動が実施される。いまさら言われるまでもないが、この期間になると通常より多くの警察官を動員。あちこちで取り締まりを実施する場所も増える。パトカーや白バイなどを総動員して信号無視や、歩行者妨害違反、一時不停止などなど、ありとあらゆる交通違反の取り締まりを強化し、問答無用で検挙。とくにこの期間は免許の累積点数が危うい人は免許を失いかねない。

 無論、つねに安全運転に務めていればなにも恐れる必要はないのだが、故意ではない、うっかりミスだってあるだろう。交通安全運動の期間は、いつも以上に慎重な運転に徹するに越したことはない。

クラウンを見たら覆面パトカーだと思え!

 今回は、誰でも少なからず繰り返しているはずで、かつ数ある交通違反のなかでも罰則が重く、交通安全運動の期間中は一段と取り締まりが強化されるスピード違反(最高速度違反)に絞って、最近の取り締まりの傾向と対策について話を進めたいと思う。

 まずは、ベテランドライバーでも、よほど用心していないと見落として御用になりかねない”覆面パトカー”から。

 白と黒に塗り分けられた一般的なパトカーなら一目瞭然。警戒のしようもある。しかし、一般車両を装って取り締まりにあたる覆面パトカーはかなり厄介な存在だ。「交通機動隊」と「高速隊」に配備され、交通機動隊は一般道、高速隊は高速道路や有料道路で取り締まりを行うのが違いだ。

 覆面パトカーの定番といえば、トヨタのクラウンをおいてほかにない。大昔は”コンフォート”と呼ばれた地味なセダンモデルをベースにした覆面パトカーが主流だったが、最近は、古いところでは12代目(2003年〜)から220系の15代目までをラインアップ。しかも、見た目が比較的地味な”ロイヤルサルーン”や”G”といったグレードに加え、エンジンなどの詳細は不明ながら、スポーティグレードの”アスリート”や”RS”も導入。一見しただけでは一般車との見分けがつかない。ボディカラーも、元来フォーマルなクラウンで定番のシルバーや黒、紺色、ホワイトなど。違和感は皆無だ。

 高速道路上でクラウンを見たら、とりあえず覆面パトカーを疑うことだ。数少ない見た目での特徴があるとしたら、キズや汚れがひとつもなく、非常にキレイな状態に保たれていることくらいか……。

“覆面”ならではの見た目の特徴と模範運転

 全国各地でクラウン以外の覆面パトカーの配備が進んでいる。たとえば、現在のラインアップからは外れたが、3.5リッターV6を搭載したトヨタ・マークX。数はクラウンほどではないが、「覆面=クラウン」の固定観念が根強いベテランほど気づきにくい。

 きわめつけは、埼玉県警に配備されている先代のスバルWRX S4だろう。見た目はエアロパーツを装着したスポーツモデルそのもの。3台のうち1台はスバルのスポーツモデルのイメージカラー、”WRブルー”だったりする。

 覆面パトカーの判別点にナンバープレートがある。所轄の地名(埼玉県なら大宮、所沢、熊谷など)が記されていること。そして、希望ナンバーではないこと(地名のあとの3桁番号で判別可能)が挙げられる。

 取り締まりの方法は大きな手がかりとなり、覆面パトカーの場合、基本的に走行車線を巡航。そして、追い越し車線を速度超過で走ってきたクルマをロックオンするや、追い越し車線に移って追尾を開始、超過速度を計測、検挙する。

 そのため2車線の高速道路などでは、覆面パトカーに気づいたクルマがその後ろに続き、さらにほかのクルマが何台もその後に続くといった現象が発生。追い越し車線がガラガラに空いていて、走行車線に何台もクルマが連なっていたら、その先頭に覆面パトカーがいる可能性が高い。

 さらに覆面パトカーの動き(運転)も判断材料になる。車速と前走車との車間距離はつねに一定。進路は少しもブレることはなく、スムースで的確な車線変更など、すべてが完璧。一般のドライバーが運転しているクルマとは違う”オーラ”が出ているはずだ。

15km/h超過でもアウトで神出鬼没な移動オービス

 全国各地に設置されているオービス(速度違反自動取締装置)はドライバーにとって脅威の存在だ。

 大きく固定式と、移動式(可搬式)の2タイプに分けられる。「固定式」は主に高速道路などに設置されるもので、一度設置されると30年以上そのままというケースも多く、その存在が広く知られ、取り締まりの効果が期待できなくなるという弱みがある。

 一方、2016年頃から導入が進んでいるのが「移動式」(可搬式)で、場所や時間帯を問わない取り締まりが可能。現在47都道府県すべてで運用されていて、首都高速などの都市高速道路でも移動オービスによる取り締まりがたびたび目撃されている。

 オービスによる取り締まりは、一般的にその場所の制限速度から(一発免停となる)30〜40km/h以上の超過が対象だ。しかし、これは固定式オービスの場合。移動式オービスはもっと低い速度で光ることがあるという。なぜなら、移動オービスは本来、住宅街や繁華街、生活道路など、上限速度が30km/hのゾーン30での、歩行者・自転車とクルマの事故防止を目的に開発された経緯があるからだ。

 それを裏付けるデータとして、移動オービスが全国に普及しはじめた2018〜2019年には15km/h未満の取り締まりが急増。警察庁が2020年2月に公開した2019年中の「道路交通法違反の取締り状況」を見ると、15km/h未満で最高速度違反となった件数は、2018年の43件から2019年には、約8倍の340件に激増しているのだった。

 もっとも、最近は移動オービスを生活道路などでの取り締まりから自動車専用道路や、都市高速道路などでの運用にシフト。超過速度が15km/h未満の取り締まり件数は減少傾向にあるようだ。

フィルム切れとは無縁のデジタル式カメラで撮影

 オービスで撮影されると固定式はほぼ赤色(一部機種で白色)、移動式の場合はLSM-300と呼ばれる機種は赤色、LSM-310や、可変周波数式器のMSSSは白く発光する。これらのストロボは非常に明るく、昼夜を問わずドライバーは撮影されたことを認識すると言う。

 そして、撮影した画像の車両ナンバーから割り出した車両の所有者に、警察署などから早ければ1週間以内、遅くとも1カ月以内に「出頭通知書」が届くという流れ。車両の所有者ではなく、(撮影された)運転していたドライバーが出頭することになる。

 出頭命令を無視しているとどうなるか? 「3年の時効がすぎたら無効になる」といった話もあるようだが、これは根も葉もないウワサ。実際、2016年には再三の出頭命令を無視していた数百名の違反者が一斉逮捕されている。超過速度が記された画像が動かぬ証拠。出頭通知書が届いたらジタバタしても始まらない。素直に警察署などに出向いたほうが賢明だ。

 旧式のオービスはフィルムの交換が必要なタイプだったが、現在ではフィルム式はほぼ皆無。オービス機器最大手の東京航空計器では、1976年からフィルム式のオービスを製造してきたが、90年代にすでに製造を終了。それに代わったのが、デジタル式カメラによる撮影方式でフィルム切れとは無縁。違反速度などのデータは即座にセンターに送られるという。

 いまの時代、「ちょうどフィルムが切れていて違反を免れた」などといったことはあり得ないのだった。

最新のレー探でも手強いアナログのネズミ捕り

 いわゆる”ネズミ捕り”と呼ばれる取り締まり。光電管方式は、80〜90年代に運用されてきた方式のひとつだ。発光式の2組の装置(発光側と受光側で1組)を、3m間隔で、かつ対向で地面に設置。そこをクルマが通過した時間から走行速度を割り出す仕組みとなっている。

 光電管は電波を発しない、レーザーでもレーダーでもないアナログ方式のため、登場から数十年がたったいまなお、レーダー探知機をもってしても発見は困難とされている。また、神出鬼没の移動式であればSNSによる情報拡散も難しい。光電管式移動オービスは、現在考え得る最強の速度取り締まりと言え、高性能なレーダー探知機でも逃れられる可能性は低い。

 さらに、ここ最近で注意を要するのが、固定式オービスの老朽化に伴って”半固定式移動オービス”が高速道路で急増していることだ。

 オービスの土台となる外枠を複数個設置。適時そこに移動式オービス(の本体)を設置することで取り締まりを行う方法だ。かなり接近しないと、なかにオービスの本体=カメラがあるのかどうかの判別がつきにくい。つまり、土台を設置しているだけでスピード違反の抑止効果効果が期待できるというわけ。現在、茨城県、長野県、熊本県など全国の高速道路で増殖中だ。

 高速道路上のオービスの手前には必ず「警告看板」が設けられているのだが、移動式オービスについては、場所や取り締まり状況に応じて地域の警察が独自に判断している様子。2017年には愛知県警が「警告看板を設置せずに取り締まりを行う」と宣言している。

 たとえ移動式オービスの警告看板が設置されていても非常に小さかったり、設置位置も左側の歩道上や、右側の中央分離帯だったりと確認しにくいことが多い。うっかりしていると見落とす可能性が高い。くれぐれも注意が必要だ。
※本記事は雑誌「CARトップ2025年10月号」の記事を再構成して掲載しています