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外国人による日本の不動産取得をめぐる議論が、新たな局面を迎えています。「外資による土地の買い占め」への危機感が高まる中、政府・自民党が示した方針は、一律の「購入禁止」ではありませんでした。6月に示された自民党の提言から見えてくるのは、国土全域で所有者の国籍や取引の実態を厳格に暴く「透明化」へのシフトです。この新たな規制方針は、過熱する都心マンションや地方のリゾートマネーにどのような地殻変動をもたらすのでしょうか。提言の真意と、日本の不動産市場に与える影響を深掘りします。

安全保障と投資市場、問われる透明性

外国人による不動産取得をめぐる議論が、再び日本の政策課題として浮上している。

政府・自民党は、外国人によるマンション取得について、直ちに一律規制へ踏み込むのではなく、まずは国籍情報を含む取得実態の把握を優先する構えだ。

自由民主党外国人政策本部が6月9日に示した第2次提言では、「国土の適切な利用を図り、国民の安全保障上の懸念を払拭する」として、不動産登記や森林法など土地関連制度で所有者の国籍把握を順次開始し、国土全域で土地所有者等の国籍を把握する仕組みを整える方向を示した。

提言は、土地取引を単なる経済行為とは位置付けていない。土地の取得や利用は、場合によっては安全保障や主権、地域社会の安全に直結する重いテーマであるとし、実態が見えないまま取得や利用が進むことへの懸念を明確にした。

その上で、国土の適切な利用と管理をコントロールし、状況を国民に透明性をもって示す仕組みの整備が重要だとした。

この方向性は、日本の不動産投資市場にとって影響が小さくない。とりわけ都心マンション、ホテル、観光地不動産、物流施設、開発用地など、海外資金が入りやすい領域では、投資判断の前提が変わる可能性がある。

重要なのは、日本がカナダやニュージーランドのような全面的な購入制限に向かう可能性が、現時点では高くないという点だ。

日本の不動産市場は地域差が大きい。都心部ではマンション価格の高騰が問題化している一方、地方では空き家、人口減少、観光地再生、外資による開発投資への期待もある。

全国一律に外国人購入を制限すれば、過熱する都心市場だけでなく、資金を必要とする地方市場まで冷やしかねない。

むしろ現実味があるのは、英国型の「透明性強化」と、オーストラリア型の「用途・地域別管理」を組み合わせた日本型の制度整備である。

安全保障上重要な土地、国境離島、防衛施設周辺では、取得者や実質的支配者の確認を強める。都心高額マンションでは、外国法人、非居住者、短期転売、空室保有、民泊利用などの実態を継続的に把握する。

つまり、買えるか買えないかではなく、「誰が買うのか」「何の資金で買うのか」「何に使うのか」が問われる時代に入る。

自民提言が示す国土管理の転換点

提言では、外国人による土地取得等のルールの在り方を検討する会議や、地下水の適正な保全と利用に関する検討会、土地の取得・利用等の在り方に関する有識者会議を設置し、議論を始めたことも示された。対象は取得段階にとどまらない。

その後の利用から管理まで含め、実効性ある制度を整える必要性を打ち出している。所有者のいない離島の国有財産化、土地所有情報の一元的なデータベース整備、取引がない不動産の所有者情報把握なども、国土管理の精度を高める取り組みと言える。

不動産投資市場への影響は、価格の急落というより、取引コストと説明責任の上昇という形で表れるだろう。外国人投資家や海外法人に対しては、本人確認、在留資格、資金源、送金経路、実質的支配者、利用目的の確認がより厳しくなる。販売会社、仲介会社、デベロッパー、信託銀行、ファンド運用会社には、従来以上にコンプライアンス対応が求められる。

不動産ファンドへの影響は限定的も無視できず

もっとも、こうした変化は、海外資金を一気に締め出すものではない。短期転売や匿名性の高い法人名義取得、空室保有を前提にした投資には逆風となる一方で、長期保有、開発投資、地域再生、ホテル・観光施設、賃貸住宅供給など、利用目的が明確な投資は相対的に受け入れられやすい。海外資金は「量」よりも「質」で選別される局面に突入する。

都心マンション市場では、外国人規制論が価格抑制策として過大に期待される可能性がある。しかし、価格高騰の主因は外国人需要だけではない。

建築費の上昇、用地取得難、再開発エリアの希少性、国内富裕層の資産防衛需要、共働き高所得世帯の都心志向が重なっている。外国人購入者が一部の高額物件で存在感を持つのは事実だが、市場全体の価格形成を単独で左右しているわけではない。

そのため、規制が導入されても、都心一等地の価格が大きく下がるとは考えにくい。むしろ起きるのは二極化だ。立地、ブランド、希少性、賃貸需要を備えた物件は、国内外の富裕層や機関投資家に選ばれ続ける。

一方で、価格が高いだけで実需の支えが弱い物件、出口戦略を海外投資家に依存していた物件は、販売期間が長期化しやすくなる。

Jリートや私募ファンドへの影響も限定的ながら無視できない。上場リートや国内機関投資家が保有するオフィス、住宅、物流施設、商業施設は、所有構造が比較的透明であり、直ちに規制対象になる可能性は低い。

一方、海外資本が関与する私募ファンド、特定目的会社、外資系デベロッパーによる用地取得では、実質的支配者や資金源の開示が重くなる可能性がある。これは投資意欲を削ぐというより、案件組成の時間を長くし、デューデリジェンスの信頼を厚くする方向に働く。

観光地やリゾート地では、政策のさじ加減が難しい。ニセコや白馬のように海外マネーが地域の不動産価格を押し上げた地域では、地元住民の住宅取得難や生活コスト上昇への不満が出やすい。

その一方で、外資が宿泊施設、商業施設、雇用、インフラ整備を支えている側面もある。ここで一律規制をかければ、地域経済の成長機会を失う。

今後は、空き家放置、短期賃貸、地元居住者向け住宅の不足といった実害に応じた地域別のルールづくりが焦点になる。

価格抑制策ではなく、取引の質を問い直す政策

結局のところ、日本の外国人不動産政策は、排外的な規制ではなく、管理型の制度整備へ進む公算が大きい。単なる規制強化ではなく、日本の不動産投資市場が海外マネーを無条件に歓迎する段階から、受け入れる資金を選ぶ段階へ移ることを意味する。価格を押し下げる政策というより、取引の質を問い直す政策である。

では、外国人は日本の不動産を買えなくなるのか。その答えは「全面的には買えなくならない」だが、前述したように「誰が買うのか」「何のために買うのか」「地域にどのような影響を与えるのか」が、これまで以上に問われる。

日本の不動産投資市場は、開かれた市場であり続けながら、透明性と説明責任を備えた市場へと変わっていきそうだ。

[参考元]

健美家『自民提言が示す国土管理の転換点。外国人規制は「土地購入禁止」では終わらない。不動産投資市場で増す透明性のコスト』