「探しても、探しても、仕事がない…」年金が少なくてパートを始めた70歳独身男性、突然の“雇い止め”直後に感じた「年齢の壁」【手取り11万・年金のみのリアルな生活】
年金からも税金や保険料が引かれるため、少ない支給額でギリギリの生活を送る人は少なくありません。年金を受給しながらパートやアルバイトで働ければよいのですが、年齢による「雇い止め」の壁もあるようで…。70歳でパートを雇い止めされてしまった健二さん(仮名・70歳)の事例をもとに見ていきましょう。
年金だけでは生きていけない…70歳独身男性の切実な忠告
「キミたちもね、今からよく知っておいたほうがいい。バブルを経験した僕ですら、年金だけで生きてくのは本当に大変なんだ」
そう話すのは、九州地方のアパートで独り暮らしをする健二さん(仮名・70歳)です。行きつけの小料理屋で、自身の今の生活を語り始めました。
健二さんは65歳で会社を定年退職し、現在は年金生活をしています。10年前に奥さんが病気で他界し、健二さんの両親もすでに亡くなっています。二人の間に子どもはおらず、遠方に住む弟家族とも疎遠です。家にこもっていると気が滅入ってしまうため、昼間は近所のフードコートで時間をつぶしています。
「フードコートは夏は涼しくて冬はあったかい。僕がいつも行ってるところはお茶のサービスもある。節約になってありがたいよ」。冗談交じりに話していましたが、本当にとても助かっているようでした。
年金は手取りで月11万円。アパート暮らしのリアルな生活費
健二さんの年金は額面で月13万円。税金・国民健康保険料・介護保険料を差し引くと、手取りは月11万円程度です。
生活費は、築38年のワンルームの家賃が4万3,000円。水道光熱費が毎月1万2,000円前後です。食費は月3万5,000円以内に抑えるため、基本的には自炊をしています。残りの2万円は自由に使えるお金ですが、日用品の購入や医療費でほとんど消えてしまうそうです。
健二さんにはもともと1,000万円の貯金がありましたが、奥さんの病気の治療のため、数年間で貯金のほとんどを使い果たしてしまいました。もちろん、医療費の上限を抑える「高額療養費制度」を利用していたのですが、保険適用外の治療費や個室の差額ベッド代といった出費は、じわじわと健二さんの蓄えを削りました。そのため、健二さんは貯金に頼ることができず、年金のみで暮らしていかなければならない状況なのです。
そのなかでも費用を捻出し、月2回ほど小料理屋でお酒をたしなんでいます。イカの塩辛とポテトサラダをつまみに熱燗をちびちびと啜るのが、健二さんの定番セットです。
年金だけの暮らしはギリギリ…65歳でパートを始めるも、70歳で雇い止めに
毎日カツカツの生活でお金がなくなってしまう…
そんな不安に襲われた健二さんは、スーパーでカート回収の仕事を始めます。週3日・1日4時間の勤務で月5万5,000円ほどが収入として入ってきました。カート回収の仕事は体力も使いますが、健二さんにはとてもいい運動になっていました。従業員の人たちも優しく、働くのが生きがいになっていました。
経済的な余裕が生まれたことで、月2〜3回は飲みに行けるようになりました。また、月に一度の給料日には、ファミリーレストランでアンガス牛のステーキを食べることが楽しみになっていました。「体が動くうちはいつまでも働いていたい」。そう思っていた健二さんでしたが、来月で70歳になるタイミングで、店長から雇い止めの通告を受けます。
「契約書にも書いてあるのですが、うちの会社は70歳で契約満了のルールがあるんです。僕個人としては、健二さんにはまだまだいてもらいたいのですが…」
契約書の内容をしっかり読んでいなかった健二さんは、突然の知らせに大きなショックを受けます。慌てて新しい仕事を探しますが、健二さんの住む地域はもともと求人が少なく、面接にすらたどり着けません。
「世の中は人手不足って言うけど、なかなか厳しいね…。まあ、懲りずにボチボチ探してみるよ。このまま年金だけで生きていくのは大変だからね。キミたちはまだ若いんだし、今のうちからたくさん貯金しておいたほうがいいよ」
そう言い残して、健二さんはお店を出ていきました。
厚生年金を受け取っていても、年金は手取り13万円が相場
厚生労働省「令和5年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」によると、会社員が主に受け取る厚生年金保険の月額平均は約14万7,000円です。手取りに直すと、ここから税金や社会保険料が天引きされると、手取りはさらに目減りします。
健二さんのように会社員として何十年も厚生年金を納めていた人でも、「中小企業で現役時代の給与が控えめだった」「途中で離婚を経験した」といった人生の波が重なると、受給額が平均を下回ることも珍しくありません。手取り11万円という金額は、独り身で生活するにはあまりにもギリギリの金額になってしまうのです。
老後の生活資金に困らないためにも、年金の額面ではなくリアルな手取り額を基準にした貯蓄目標を持つことが重要です。そして、少額であっても、なるべく早いうちからコツコツとためることが心の安定にもつながります。

